伊澤屋

歴史・政治経済系同人誌サークル「伊澤屋」の広報ブログ。

『視覚探偵 日暮旅人』 第7話  所感

2017年03月10日 21時31分39秒 | Weblog
(※以下、ネタ暴露注意!!)


所感である。


ダークさと、更に怒りのぶつけ所の無い「やるせなさ」の描写で脚本の力が際立つ。
旅人を重度の身障者にしたのが灯衣の実母、鳥羽組での通称「ドクター」なのがゾクゾクする構成力だ。
灯衣が旅人の養子になった背景を再度見ていくと、実は雪路も旅人に隠していた部分があった?と
考えたくなる台詞回しもあるが、一先ず義親子、義兄弟、家族の絆は揺るがなかったと捉えるべきだと。
終盤に向け、勿論悲しいのだが「良い勢い」が付いてきたと感じる。

ドクターが血縁関係の無い「おばちゃん」として灯衣に進呈する小学校のランドセルを自然に現代風の
水色?パステルブルーにして昭和風の赤いランドセルにしなかったのは灯衣が「ダイオウグソクムシ」
の折り紙を折れるのと同様に現代の話として描く上で、「時代劇」にしない為に有効だった。

ただ疑問なのは、福原充則は新作を描く際に「リレー」的に前作で用いられた小道具、設定を必ず
数ヶ所引き継ぐ「きまり」を課しているのだろうか。 一昨年清水富美加が同人作家まゆ吉を怪演した
『Sicks』と極めて近似した設定が以下ある。


・「物心付く前」でなく自らの出自を知っている養子 (灯衣とつばめ)
・物語の重要な鍵となる激しい副作用を伴う新薬、重要キャラクターの喀血 (『ロスト』と『Sicks』)
・一見コミカルだが実は冷酷な敵の存在、話の端に見え隠れする反社会勢力 (鳥羽組とつばめの父)


稀代のドラッグデザイナーのドクターが開発した「ロスト」の名は服用した者が聴覚、触覚など様々な
感覚を失っていく、ロストしていく他に「ロスト」の語には「迷子」「落とし物」「忘れ物」の意味もある。
オープニングテーマの『探し物は何ですか』と掛詞にしたのなら「いかにも」であっても胸の痛む設定だ。