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ふと見上げた枝葉の陰から、塗りつぶしたような真っ黒な空の高く、遠くで輝く白い光が覗いていた。
……建国記第三章七節に曰く、【空に我らの国はなし。土に根を下ろし、見渡すところに国はある】らしい。
遥かなる神代の昔、天使と悪魔の互いに相容れぬ種族が永く争う時代があった。全てを飲み込めと悪魔たちの轟く叫びが唸る海となり、全てを焼き滅ぼせと天使の落とす雷鳴が世界の礎を割り土を寄せ集めた大地ができた。戦いは決着のつかぬまま、個体数の減少により双方とも撤退を余儀なくされたという。天使と悪魔はこの世界から去り、残された大地と海から何百という新たな種族が産まれた。彼らは天使と悪魔の流した大いなる血を継いで産まれたためか、聖も悪も抱く不完全な存在であった。そして数多の種族は互いに争いながら、繁栄と滅亡を繰り返して今日に至る。
人間族の法と律が定まったのはおよそ800年前、英雄王イルミナリスによってだ。以来、世界各地に散った人間族を治めているのは、彼に始まる青き王の系譜だ。
ああ、そうだ。この旅のどこかで王都に寄ろう。僕たちを守ってくれている陛下に、ささやかでもお礼をしなくては。
さて、僕もそろそろ寝るとしよう。
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