「9 くちづけ(Ⅱ)」
あの方には、いつも不思議な雰囲気があって、お側にいると家に帰ったような気がする。それは寛げるとか、緊張がなごむとかそういった感じとも違っている。そんなにたくさん逢ったわけではないのだが、たとえれば毎年の大祭の後にお許しを頂いて久しぶりに家に帰ると、最初は違和感があるのだが、少しずつそれが薄らぎ休暇の終わりには離れがたく思える。そんな郷愁のような気持ち。お逢いした最初はただドキドキするのだがしばらく庭園を散策しポツリポツリとおしゃべりしているとお別れする頃には屈託なく笑っていられる。
集英社コバルト文庫
金蓮花
『水の都の物語 前編』
「2 出逢い」
カイエンは地面に滅びた過去の王国の文字をゆっくりと指で書いた。
――――――厦維燕
サヒャンは意味などわからぬ文字の、その並びの美しさに我知らず目を奪われていた。それに目を細めカイエンは音楽的な声で言葉を続ける。「《厦》は家を表します。《維》はつなぐという意味で、《燕》は必ず帰ってくる鳥の名前でもあり、くつろぐという意味もあります。これが私という存在の本質です。今日から、あなたが私の《真珠》です。どうぞ、疎ましくお思いにならず、なにかあれば私を思いだしてください。必ずあなたのために私は尽力いたします」カイエンの百点満点の騎士ぶりに、生まれて初めて《真珠》となった乙女は……、落第点の答えを返すことしかできなかった。
不評ならばそれっきりになるかもという段階のパイロット版だったため、設定が少々異なっている。
読み切りでの篠塚は組織の最高部直属の一構成員でしかなかった。その証拠に一々指示を求め、敵の一味を爆殺に至るまでの反撃も攻撃許可を得て実行した。連載が開始されてからもサポーターを務めるメンバーが現場を確保し、篠塚の行動しやすいように補佐するも彼女の部下という訳ではなかった。「DUTY5:No.4」でNo.7らしき同僚はいたが、この時点まで一構成員のままだった。
ところが、「城南一高」篇の序盤「DUTY7:メッセージ」以降から正式にボス設定を付加され、9つに管轄を分けた1つの頂点に立ち、その管轄で任務に携わる部下達を持つことになり彼らを指揮する立場に変更された。
しかし、彼女自身はボスキャラではないため、ドラマ性の無さもあり物語は破綻してゆく。