第11巻(完結巻)
第34章(最終回) 舞姫七変化
カイ:たいした…女だなあ。ふつー、この設定(シチュエーション)で笑えるか……あの強さバケモノだなー。
宗三郎:ふつーの娘さ…おじょうは。
カイ:ふつー!?どこが!!?ふつーが驚いて逃げるぞ、あれじゃ。
宗三郎:ふつーだよ。怒って、笑って、泣いて、すねる。きどって、あまえて、そして気高く。一色に染まり貫く“意思(こころ)”と違う、七色にうつろい変わる、やわらかな“感情(こころ)”。あざやかに七変化する、愛さずにはおれぬほどいとおしく……。
妖:市。見えるか?あれが。
市:は…い。
妖:あれがうわさのもとというわけだ。フン…成功した者を妬んで死んだ小娘の霊らしい。陳腐な自縛霊だが、わらわの霊力(ちから)をすこうし加えてやれば使い道もある。
市:霊がまるで鋼鉄のくもの巣のようにスタジオ中に!!
妖:せいぜい、このスタジオでファンをあおってやれ、市。おまえが“不安”だと言えば眠れぬほどの“不安”が、“哀しい”とつぶやけば世をはかなむほどの“哀しみ”が。おまえの魂(こころ)を受けとった者は皆、魂(こころ)を闇にさし出すだろう。
第9巻
第26章 梅がさね
蘭:…………あなたは平気なのですか?
宗三郎:蘭………。
蘭:私は…耐えられない……たまらない。必要なのだと…あの方のためだとわかっていても………。
宗三郎:蘭………庭の梅がきれいだ、雪に映えて…。
蘭:梅?
宗三郎:“梅がさね”という色あわせがある、同じ梅の色だが………同じ紅でも濃き薄きでとりどりの色を染めあわせて、かさねて……同じ…かえがたい想いでも、人にもとりどりの色がある。同じ、あざやかな紅色に染まる想いも………それぞれ…あざやかに。
ボニータ・コミックス
第8巻
第23章 烈風征嵐
宗三郎:(何を…思い出したのか…私とカイの霊力を受けて…あのとき目がさめた君はふるえながら、この腕にしがみついた……………。…………けれど…いくら、この腕に君を抱きしめても…実感はない。君はさながら天女のごとく―――決して人間(ひと)のものにはならぬ。)