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日常と日記
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可愛いエミリー

2019-06-10 | 読書
本棚の整理をしていて久しぶりにモンゴメリのエミリーシリーズを読みたくなって手に取ったんだけど
それはそれは古い本なので黄ばみを通り越してまっ茶色になっていて、衰えた目にしんどく読みにくいの何の


小学生の頃に買った本だからなあ
好きな本はそのとき持っていたお気に入りの紙でカバーかけて背文字も見えるように穴をあけてセロテープで窓を作ったりしていました。

新装判を買いなおしまた一から読みすすめました




ひりひりするようなエミリーの文学的野心や頭の良さ、融通の効かない性格、行く先々で敵が出来てしまうへたくそな生き方とそれに負けない精神の不思議な気高さ
辛辣な観察眼と描写力そして
「いわゆる美人ではないけれど、睫毛と甲高な足にかかと、尖った耳の妖精っぽい魅力」
今でも変わらず夢中で読めます

とにかく何かを書かないでは生きている意味がない、と思うエミリー。
内面をこれでもかと描写され辛辣さとかたくなさがしんどいです。わりと真面目に選民意識高いし。
正直あまり好きにはなれない主人公です。
ていうかこのシリーズ出てくる人がみんなあまり好きになれない。
私はエミリーも親友イルゼもテディもペリーもジャーバックも伯母さんたちもカーペンター先生もみんな全然好きになれません。みんなすごく自分勝手です。
でも好きな小説なのです。


久しぶりに読んでちょっとだけ印象が変わったのが、エミリーの求婚者のひとり
子供の頃身の毛がよだつほど気持ち悪いと思ったディーン・プーリストこと、ジャーバック

昔読んでた時はただひたすら嫌悪感しかありませんでした。
14のまだ幼いエミリーに40前のおっさんが「育ってきた。育って来た」と思いながら、キスしたくなるような唇だ、とか首筋のラインがいいとか思うところとか
その「恋愛小説の書き方がわからない」という作家志望の少女に
「僕が教えるよ。高校へ行っても僕以外に教えてもらおうとしてはいけない」
としたり顔で言ったりするところとか

ぎょえーーー
「君の命を助けたのが僕だということを忘れてはいけない、君は僕のものだよ」
なんてことを言ってしまうの。ロマンチックどころかあつかましい気持ち悪い
こういうのは圧倒的魅力がある人がちゃんとその影響を与えているとわかっている相手以外に言っていい台詞ではありません。


エミリーが憤然と「私の命は私のものだし」と心理的抵抗を感じるところリアルです。
のちにディーンがそういう対象として自分を見てることに気付いてからはエミリーの惧れと葛藤がとても怖く感じます。
そしてのちのち弱ったエミリーがそれにすがろうとしてしまうところもリアルで怖い

ディーンはエミリーの父親と高校の同級生。
なのに娘を見る目ではなく最初の出会い、12のときから女としてみてるのですがその描写がいちいち気持ち悪い

ここまで書いたが、ディーン・フジオカなら許されるかもしれん。いやあかんて。やっぱし



子供の頃は「まー結局エミリーはテディが好きだし」
「それにディーンが小さいとか足が悪いとか背中にコブがあるからって嫌ってはいけない」
って妙な真面目さでその薄ら怖さから必死で目を背けてたのですがそう思わないと耐え切れなかったのです

頭もいいしお金持ちだし、だけど「自分より高みにいっちゃうと僕の手に入らなくなる」
からって若いエミリーの作家としての才能をこっそりうまく言いくるめて捨てさせようとするところが一番酷い。
弱ってるところに付け込んで結婚申し込むところも怖くて仕方がない
それは昔も今も同じ感想です

ですが今回十数年ぶりに再読して、ていうかもう何十回も読んだものなのに、今回初めてディーンが可哀想で愛おしくて、特に最終章は泣いてしまいました

若く才能もあり未来もあるエミリーの残酷なこと。そしてディーンの優しさ弱さ、諦めと情けなさ。
しかしその残酷さに対する哀れさを私自身も年を取ったので、わかってしまえるんですね。



すごくよくできた三部作だと思います


それにしてもエミリーの相手のテディは今も昔もほんっとーーーにマジクソ嫌いだわ。
マザコンで優柔不断な優男。超絶美男子という設定も嫌い。結局顔か!!って言わせたいのかい。
そしてテディを支配する母親は最初から最後まで恐怖の存在でしかありません。可哀想だけどずるくて弱くてああああ耐え難いわ
ほんと嫌なキャラばかりよ。
アンは優しいいい友達もいっぱいいて、学校生活の描写も楽しかったけど
エミリーはその高すぎる自尊心と選民意識で友達とか全然作らないで周り敵ばっかりだからどこにいてももめたりいじめられたりスキャンダルに巻き込まれたりでほんと辛い。

でも面白いのよ。