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年末年始の川めぐり-2 ―カワセミA,B,C―

2014-01-04 | その他探訪記
前回『年末の川めぐり-1』としてログを書いたのだが、それを『年末年始の川めぐり』とあらためさせてもらうことにする。僕の家の周りの川の説明をするのに、写真があった方が良いと思い、年始にその写真を撮りに出かけてみたのだが、年末の続きの情報が沢山得られたため、一連にログとして紹介することにした。

忘れてました、明けましておめでとうございます。今年もがんばってログを付けることにします。
それから、今年から、このログの文体を変えることにします。基本的には、自分のメモの延長線だから…。と思って、常体で書き始めたのですが、読み返してみると、ちょっと偉そうですね。というわけで、年があらたまったところで、敬体にさせていただくことにします。

それでは、冒頭の続きを…。
1月3日。散歩道の途中にある川の写真を撮りに出かけた。まずは、カワセミをよく見かけた谷戸川と丸子川ですが、この川は、どちらも川幅2.5m~5mほどの小河川…。岡本静嘉堂緑地を挟み込むように流れています。樹林と小河川が組み合わ去れば、生き物がいないはずはありません。鳥も、虫も沢山見られます。

 
丸子川:右手より谷戸川が合流(右写真) 静嘉堂緑地の樹林と丸子川 2014-01-03 世田谷

しばらく行くと、年末にヒヨドリがイイギリの実をついばんでいたポイントなのですが…。イイギリが見当たりません。確かここだったはずだがと見上げるのですが、赤い実が見つかりません。

 
赤い実がすっかりなくなったイイギリ 2013-01-03 世田谷
 
イイギリ 12月31日の様子(左) 足元に残る痕跡(右) 2014-01-03 世田谷

年末31日から今日までの4日間で、綺麗に無くなってしまったのです。最初は、場所を間違えたのかと思ったのですが、足下を見ると、赤い実がが散乱していました。ここで間違えありません。ということは、この4日間で、ヒヨドリが全部食べちゃったのでしょうか? まあ、3が日に大宴会が開かれたということにしておきましょう

さらに行くと、静嘉堂緑地を通り過ぎ、やや開けた景観に変わります。そこに番いと思われるカルガモが…。なかなか美しい光景です。一枚頂きました。 その先には、コサギも! なんとか一緒のフレームに入れられました。


カルガモの採餌 2014-01-03 丸子川(世田谷)

カルガモ&コサギ 2014-01-03 丸子川(世田谷)

美しい写真に満足し、先に進むことにしました。
とっ、その時、右手の桜の枝の中に、青い姿を見つけたのです。いつものカワセミでした。樹の枝の被らない位置に苦労してカメラをセットし、シャッターを切ろうとした時に、年賀状を配達する郵便バイクがすぐ脇に入ってきて、カワセミは飛んでいってしまたのです。「なんと…。でもご苦労さん」
カワセミは、さらに上流側へ、ここまで来ると丸子川は、両側とも住宅地となり開けた環境になります。

 丸子川:周囲は住宅地となる 2014-01-03 世田谷

カワセミを刺激しないように慎重に歩を進めると、ちゃんと居てくれました。それも写真に収めやすい位置に! 

 カワセミ 2014-01-03 丸子川(世田谷)

雌ですが、下嘴のオレンジがとても小さい個体。気お付けないと雄と間違えそうです。12月31日に確認した個体で間違えないでしょう。今回は、しっかり観察もでき、秋の間よく見てきた個体とは違うと確信できました。とりあえず、この秋、何度も確認してきた個体をA。今回のオレンジが小さい個体をBとしておきましょう。
さらに、この後に紹介する野川にもカワセミが居るのですが、それをCとしておきましょう。この個体もメスなのですが、Bとは明らかに違います。今の段階ではAと同じ個体か否か、判断はつきません。
ただし、これまでの観察地点から、別個体ではないかと思っています。整理のために、これまでの観察地点を記した地図を添付しておくことにします。


丸子川周辺カワセミ観察位置図 2014-01-03 

これからしばらくの間は、AとCの個体が、同一個体か否かを確認すのに費やすことになりそうです。 




 

悪天候の母島。メグロ、ムニンシュスランそして誕生日。

2013-10-18 | その他探訪記
いきなり私事ですが、本日は僕の誕生日。
何回目かは、クイズにしておこう。少なくとも、前回の東京オリンピックを知っている世代なのだ。
さて、前回のログを、小笠原の父島で書いたが、その後13日に母島へ渡った。
宿の奥さんに、「雨を連れてきた」と言われたぐらい、今回は、天候に恵まれていない。それにしても、どうしてこんなに台風が続くのだろうか…。フィールドワーカーとしては、かなり辛いものがある。

雨にたたられた母島でのログの始まり。
雨でも仕事はしなくてはならない。急な斜面が多いところのため、かなり厳しい状況だ。
街中だけは晴れていても、山の中hガスに覆われ、まるでミストサウナの中にいるようになる。


母島沖村 人口500人弱。人家は港の周りにしかない。山を望むと上部はガスの中。

最初に紹介するのはメグロ。特別天然記念物で、世界中で母島とその属島である、向島、妹島の3島にしか生息がない。名前から、メジロと対比されるが、見た目はかなり異なる。

 
メグロ 2013-10-16 小笠原母島            メジロ 2013-10-16 小笠原母島

母島を歩いていて見かける鳥は、山の中では、この2種にオガサワラハシナガウグイスを加えた3種で8割以上を占める。さらにヒヨドリ、トラツグミ、海岸線や、街中、道路沿いでは、イソヒヨドリぐらいだろう。あとは、オガサワラノスリ、オガサワラカワラヒワ、アカガシラカラスバトをたまに見かける程度だ。これに、カツオドリやミズナギドリ類などの海鳥や渡りの途中のシギ・チドリ類などを加えても、30種はなかなか見られない。

昆虫は、ほとんどいない、以前はたくさんいたそうだが、グリーンアノールというトカゲ《イグアナの仲間》が入って以来、昆虫はほとんどいなくなってしまったのだ。小笠原で昆虫を調査していたある研究者は、「アノールが入って10年ほどの間に、昆虫は100:0になった」と言わせたほどだ。100:1ではなく0なのだ。つまり100分の1以下になってしまったということだ。
実際に、僕が今回こちらに来てから見た、ある程度のサイズのある昆虫は、アサギマダラ(チョウ)1頭、ウスバキトンボ(数回)、西洋ミツバチ(数頭)だけだ。

母島には、石門(せきもん)という地域があり、ウドノキ、シマホルトンキ、テリハハマボウ、アカテツなどの大木が林立する湿性高木林が成立する地区がある。東京都は、ここで、エコツーリズムを進めようとしている。
しかし、一般人が喜ぶような花は少なく、眺望の開ける場所もほとんどない。特に、今の時期に開花している花は少なく、ムニンシュスランの白い花くらいだろう。あとは、一般人からすると、ほとんど同じようにしか見えない常緑の広葉樹、各種のシダ植物などの緑色と、赤っぽい土と枯葉の色しか目につかない。固有種が多く、学術的には極めて貴重な場所ではあるが、一般の人に受ける観光対象とはなりにくい。

 
ムニンシュスラン 2013‐10‐17 小笠原母島     マルハチ(木性シダ)2013-10-17 小笠原母島

エコツーリズムを否定するつもりはない。しかし、ただ貴重な生物があると言うだけで、そこをコースにするというのには疑問を感じる。こういった場所は、学術研究林的な扱いで、年に何回か、研究者向けに開放するところだと思う。母島の中には、乳房山や、南崎のコースなど、一般の方に楽しんでいただける場所がまだまだ他にあるのだから…。

さらに考えさせられる話を聞いた。
石門地区は、調査・研究者や、外来種の駆除作業などで入る人を除くと、指定ガイドの同行無しで入ることはできない。それくらいルートが難しく、危険な場所も多いのだ。もし途中でけが人でも出たら、救急車はもちろん、担いで運びだすのも大変な道が続く。では空からヘリで対応と考えるが、これも、ヘリが着陸できる空間はなく、それどころか、ロープを下ろして釣りあげる空間さえ数えるほどしかないのだ。コースは、ほとんどジャングル状の樹林の中なのだ。

そこで、地元観光協会は、救急用品、水、雨具、保温シート、携帯トイレなどを入れた救急ボックスをコースの途中に設置した。使用した際には、中にあるチェックリストに記入し、下山後、速やかに観光協会に連絡するよう指示書きがしてある。だが、何の連絡もなく、雨具は持ち去られ、水は消費されているという。地元ガイドが、当番をきめて、点検・補給をしているのだが、もし、あるはずのものが無く、猶予の無い緊急状況が発生したら…。
犯人探しはしていないようだが、このような状況が続くのであるのなら、それなりの対処が必要なのではないだろうか。

 
石門の途中に設置されている救急ボックス 2013-10-16 小笠原母島 

一般の人が入ることが難しい場所で起きている事実に、強い疑念と憤りを感じる。犯人よ、命や、場所を軽く見過ぎていないか!
ルールに則ッて…。いやいや、ルール以前の問題だ。分別ある人として、使った後にはきちんと連絡を入れる。あたりまえだと思うのだが…。

洋食?が好きなアゲハチョウ  

2013-10-04 | その他探訪記
昨日(10月3日)は、学生と共に、西葛西の緑道を歩いた。
テーマは秋の木の実。ドングリはもちろん、サンゴジュ、モッコク、ヒメリンゴ、ボケ、アカシデ、ユズリハなど、約20種ほどの木の実を採集した。あとで種子サンプルを作る予定だ。


モッコクの実 2013-10-03 西葛西

この途中で、ちょっとおもしろいものを発見。それは、花壇の一角に、ガーデンルーと言うハーブが植えられていた場所でのことだ。


ガーデンルーが植えられた花壇 2013-09-03 西葛西

ほんの1m四方程度のガーデンルーの植え込みに、アゲハチョウの幼虫がビッシリ。ちょっと見ただけでも、20頭程が数えられる。おそらく30頭以上はいるだろう。
ほんの数m先には、立派な夏ミカン(写真の区中央)があり、そちらを探してみると、ほとんどいない。さんざん探した末、やっと1頭見つけることができた。
チョウにあまり詳しくない人でも、アゲハチョウが、ミカンやサンショウなど、いわゆる柑橘系の葉を食草にしていることを聞いたことがあるのではないだろうか。アゲハチョウは、かなり都市化が進んだ場所でも見られ、小さな公園や、庭の片隅に生える、ミカンやサンショウなどで繁殖する、なじみの深いチョウだと思う。
それが、なんでハーブに…。


ハーブ(ガーデンルー)を食べるアゲハチョウの幼虫 2013-10-03 西葛西

「実は、僕もこの事実を、10年ほど前に初めて知った」僕は、学生に話し始めた。
たまたま実家のそばにある公園で、ハーブ類の植え付けをしたらしく、残った株を《ご自由にお持ちください》と書いた札と一緒に置かれていたのだ。ハーブなど育てたことはないのだが、軽い気持ちで、そこにあった3種類の株をもらって帰った。
早速リビングのすぐ外に植えたのだが…。その後すぐに異変が起こった。
例年だと、庭の奥のフェンス近くをよく通過するアゲハチョウが、リビングのすぐ前にやってくるのだ。不思議に思い覗き込むと、ハーブにとまったアゲハチョウが、産卵しているようなのだ。外へ出てみると、いくつもの卵が見つかった、さらに小さな幼虫も。大変なことが起こったと思った。
しかし、調べてみると…。
なるほど、ガーデンルーがミカン科の植物であることが分かったのだ。

 
ガーデンル 2013-10-03 西葛西            近くにあったナツミカン 2013-10-03 西葛西

柑橘系と言えば、丸っこい葉っぱの樹をイメージするが、こんなヒダヒダ、ヘラヘラの草のような植物(実は低木)ががミカン科とは。しかも、日本を代表する蝶の一種であるアゲハチョウがたべるとは。

学生と共に、幼虫を観察を始める。
次々と見つかる。そして蛹も。しかし、蛹は寄生蜂にやられ穴が開いていた。

いくつかの疑問が浮かんだ。

① 幼虫のサイズが小さい。
アゲハチョウの幼虫は、小さいうちは、黒っぽく、鳥の糞のような模様をしている、4回脱皮をしをした後に、緑色の幼虫の姿に変わる。昆虫の幼虫は、脱皮をするごとに令を重ね、最初が1令幼虫、次が2令と進み、アゲハチョウの場合、最後の脱皮で緑色の5令幼虫のなる。通常は、5令幼虫で50mmくらいになるが、ここに居るのは、どれも40㎜に満たない。それどころか30㎜にも満たない小さなものまでいる。

② アゲハチョウ(ナミアゲハ)とは異なる模様の幼虫が居る
後で調べた結果、模様、艶、臭角の色などから、ナガサキアゲハが混じっていると判断された。しかし、そのどちらとも異なる個体もいた。色彩は、オナガアゲハに似るが、決め手に欠ける。いまだに謎。

 
ナガサキアゲハの幼虫(3令ないし4例と思われる) 2013-10-03 西葛西

 
謎のアゲハ類幼虫(左)と、臭角を出したナガサキアゲハ幼虫 2013-10-03 西葛西

③ 寄生されている個体が多い。
蛹は寄生蜂が抜けた後のものだったが、幼中にも、明らかに寄生されたと思われるものが、多く見られた。今まさに、寄生蜂が産卵している最中という物も見られた。


寄生蜂に寄生(中央の黒い染み)されたナミアゲハ幼虫 2013-10-03 西葛西

 
寄生蜂(幼中の右) 2013-10-03 西葛西      寄生蜂の抜けた蛹 2013-10-03 西葛西 

①の大きさに関しては、
○在来のミカン類と比べ、ガーデンルーだと、植物の成分などで、やや小型化する。
○寄生率が高く、ほとんどの個体が寄生されており、その影響で大きくなれない。
○今年最後の発生で、気温が下降し始め成長が悪い。
などが考えられる。
よく考えると、今成長している幼虫は、蛹になり、そのまま冬を越し、来年春に発生することになる。1年に数回発生するタイプのチョウは、春に発生する春型と、夏型では、色彩や大きさにかなりの差がある。アゲハチョウの春型は、明るい色で、サイズは二回りほど小さい。
ということは、僕が知らなかっただけで、秋の幼虫は小型なのかもしれない。これについては、後で調べてみよう。

アゲハチョウという、日本在来のチョウが、突如入ってきた、ガーデンルーという洋物に強く惹かれている。このままでは、都会生活のアゲハチョウは次第に洋風化してしまうのだろうか。コメの消費が落ち、洋食化する日本人と同じではないか。
最近あまりコメを食べていない僕自身に対し、自戒の念を込めて、「在来種」を見なおさなければ…。


タコの葉細工とトビウオ桟橋  小笠原レポート 最終回

2013-09-03 | その他探訪記
夏の小笠原探訪。最後の話しをしよう。

小笠原土産で、僕のお気に入りは3つある。
①小笠原産のフルーツや野菜。
②わしっこの魚
③タコの葉細工

フルーツや野菜はすぐにわかると思う。特にバナナとシカク豆はお薦めだ。
バナナは、小ぶりのいわゆるモンキーバナナだ。甘いだけではなく、さわやかな酸味があり、何とも美味しい。そのほか、パッションフルーツやマンゴーも良いのだが、最近の世界遺産ブームのせいか、あまりにも値段が高騰してしまい、僕には手が出せなくなってしまった。

それからシカクマメ。これは、10cmほどのフリルのついた莢ができる豆で、その断面が、長方形に近いため付いた名前らしい。癖がなく、煮ても、茹でても、何と一緒に調理しても美味しく食べられる。その種も売っているので、買って帰り、我が家の庭に植えてみた。6株植えたら、夏の間は、2日に1回ボール一杯取れ、ほぼ毎日食べられた。

  庭で育ったシカクマメ(左)2011-09-17 と 収穫した莢 2011-10-01 共に庭(世田谷) 

ただ、9月の半ばになると、目ざとくウラナミシジミが現れて、せっせと卵を産んでくれる。ウラナミシジミは、日本の南岸に多く、小笠原にもいる。世田谷あたりでは、9月の中頃になるといくらか見られるが、それほど多くはない。それが、シカク豆を植えたら、毎日、何頭も居座って、せっせと卵を生んでくれる。卵はつぼみや若い莢に生むため、9月の終わりには、食べるのをあきらめた。あとはウラナミシジミに提供しよう。

   ウラナミシジミ(左)、産み付けられた卵(中)、幼虫が食い進んだ穴(右)2011-10-01 庭(世田谷)

わしっことは、和紙で作られた魚のことだ。これは型打ち落雁(砂糖菓子:これがわからないか?)のように、木型にちぎった和紙を詰めて形を作り、それに彩色して作ったものだ。
始めて見たものは、剥製かと思ったほど精巧なものだった。大変気にいって、行くたびに1匹ずつ買って帰り、今では10匹ほどが居る。


我が家の壁に泳ぐわしっこの魚たち(左)とユウゼン(右) 

最後は、タコの葉細工。
これは、タコノキという小笠原固有の植物の葉で作られた細工のことだ。美しく、強度が高いため、極めて実用的だ。

 
タコノキ 気根が幾本も下がる 2003-08-00 母島   タコノキの実 2010-10-17 母島

父島に棲む友人が、タコの葉細工の体験講座があるとおしえてくれたので、ビジターセンターに見学に行ってみた。
その日作っていたのは、ブレスレット。会場には、タコの葉細工のできるまでの行程を紹介したパネルや、実際の作品が並べられていた。指導も丁寧で、参加者はとても楽しそうだった。

 
体験講習会で展示されていたタコの葉細工と展示パネル(タコの葉細工研究会作成)

体験講習会の後、講師を務めていた友人と共にトビウオ桟橋へ向かった。そこにシロワニがきているというのだ。
シロワニとは、オオワニザメ科に属する大型のサメで、小笠原近海には多いらしい。これが、湾内に入ってきていて、夜間照明に照らされるトビウオ桟橋に現れるというのだ。

行ってみると、10人ほどの人がそれぞれに腰を据えていた。
「イヤー。シロワニ見たら帰ろうと思っていたんだけど、今日はまだ出ていないな~」などと言葉少なに話す。決して井戸端会議の会場になっているのではない。それぞれが、一日を振り返っているかのように、水面を静かに眺めているのだ。新たな傍観者が来ると、ちょっと挨拶を交わし、また、それぞれの時間に入る。
子どもたちもいた。小学校の中学年と思われる3人が、「今日はシロワニ来ないね~」と素朴な笑みを湛えている。時計を見ると8時半。都会の多くの子供たちはテレビを見たり、ゲーム機で遊んでいたりするのだろうなと思った。

 
昼間のトビウオ桟橋(手前) 2013-08-21 父島    ハリセンボン 2013-08-19 父島

なんとも良い時間…。

大人も、子供も、シロワニを通して、自分の心を見つめているように思えた。
母島でも、似たような経験がある。観光客のあまり来ない、夕日がきれいに見えるポイントへ連れて行ってもらった。そこへ着くと、既に来ていた村人に、「こんにちは」、「今日は雲が少しかかってるな」などと挨拶を交わし、その後はそれぞれの静かな時間に入るのだ。
夕日など、もう何回も見たはずなのに…。それでも、何度も足を運ぶ。まるで、夕日に透かして、自分を見つめているかのようだった。

結局その日、シロワニは現れなかった。僕は友人と共に、ふっと無重力的に浮かぶハリセンボンと、スクリンセイバーのように刻々と姿を変える小魚の群れを見ながら、ゆったりとした一時を過ごした。

都会生活者には想像できない時間が、そこにはあった。