<十二所果樹園>
初春の鎌倉:雨の中の観梅と十二所散策(2)
(山旅スクール5期同窓会)
2010年2月28日(日) つづき
■泥んこになっても山へ行くぞ!
大塔宮の休憩所で,1時間ほどの長い時間,昼食を楽しんでいる内に,天気予報通りに雨が止んだ.もちろん,路面は長い時間降り続いた雨のために濡れている.
私は,ご一緒している皆さんに,
「どうします? 泥んこ覚悟で山へ行きますか? それとも,平らな町中の社寺,史跡でも見学して回りますか?」
と伺う.
私は,多分,町中歩きになるだろうと予想していた.ところが,皆さんの希望は山歩きである.
「足下が悪いので,泥んこになりますよ.それでも良いですか!」
と念を押す.一同,泥んこになっても構わないから山へ登るという.
■理智光寺谷から天園ハイキングコースへ
12時55分,大塔宮休憩所を出発する.私は,歩きながら,
「さて,どこを通ったら一番泥んこにならずに十二所辺りまで行けるだろうか・・?」
と心の中で思案する.だからといって,自動車の往来が激しい金沢街道を通ったのでは面白くない.
そこで,大塔宮から横小路側の出口から外へ出る.稲葉越橋を渡って,理智光寺義僧碑の前の三叉路を右折して理智光寺谷住宅地に入る.住宅地の外周を回り込むようにして,坂道を登る.一番高いところが,浄明寺4丁目との境目になる.
ここで,浄明寺の住宅地の中を下って,泉水橋付近に出ても良いが,いくら何でも,それではつまらない.そこで,一番高い峠から左折して山道に入り込む.途端に,狭くて急な山道になる.路面は,つい先ほどまでの雨で,表面が洗われた鎌倉石の岩盤露出している.とても滑りやすいので往生する.私は心の中で,上りで良かったと胸をなで下ろす.
やがて,尾根に出る.すぐに瑞泉寺登山口からの天園ハイキングコースに合流する.
■大江広元供養塔
合流点から200メートルほどで,明王院方面に向かうハイキングコースが分岐する.ここでまたどうしようかと迷う.ここから少し天園方面に進んで,次の三叉路を右折して十二所へ下山するか,それとも,明王院方面へ向かうかが思案のしどころである.
十二所へ下る道,稲荷小路へ抜ける道は,普段からすごい泥んこ道である.ただ,今回,一筆書きのハイキングにこだわるのなら,この泥んこ道を下らなければならない.不必要に泥んこになるのも嫌なので,結局,ここで明王院へ抜けることにする.
暫くの間,浄明寺4丁目と二ッ橋の間の稜線道を辿る.途中から稜線のすぐ東側のトラバース道になる.稜線上の道もあるが,今回はあえて稜線道は選ばなかった.
やがて稜線道の合流する.この合流点から,ほんの少し稜線沿いに上り返すと大江広元供養塔と言われる石塔が立っている.
<大江広元供養塔>
■初め弁天
再び元の道に戻り,先へ進む,尾根が二手に分岐するところに,小さな神社が建っている.ここが初め弁天である.
江戸時代,江戸から江ノ島観光に訪れた旅人は,金沢八景から朝比奈切通しを経て,この尾根道にある弁天様をお参りした.江ノ島の弁天様をお参りする前に,ここの弁天様をお参りするので,初め弁天と言われたとのことである(鎌倉市生涯学習センターの講義録より引用).
<初め弁天>
■明王院
私たちは初め弁天から,南側の尾根伝いに進む.そして,尾根の終端で,大きく左折して泥だらけで急な下り坂を進んで,明王院登山口に降り立つ.
十二所果樹園を見学した後,再びこの辺りを通り過ぎる予定だが,とりあえずは明王院を参拝,見学する.境内には沢山の梅が咲いているが,先週の日曜日に比較すると,梅はもうとっくに見頃を過ぎているようである.
<明王院>
■大慈寺跡から馬頭観音まで
明王院から,住宅地の路地を抜けて大慈寺跡を通過する.大慈寺は源実朝が創建した寺であった.
イエズス会鎌倉修道院瞑想の家の前から,一旦,金沢街道に出る.そして,金沢街道をバス停十二所神社前まで,東に向かって歩く.
バス停前で右折,大刀洗川に沿いの道に入る.すぐに進行方向左手に,ちょっとした台地が残っている.その台地の上に馬頭観音他数基の石塔が置かれている.昔の朝比奈街道が,この馬頭観音の高さにあったことを示している.
■大刀洗から三郎滝へ
舗装道路が途絶えて砂利道になる.つい先ほどまで降っていた雨のために,道路の至る所に水たまりができている.水たまりを避けながら先へ進む.
やがて,進行方向左手,つまり大刀洗川の右岸が,高さ10メートルほどの絶壁になる.その絶壁に,沢山のヤグラが掘られている.今は,ヤグラの近くに行くことは困難だが,昔の街道が,このヤグラ群の近くを通っていたことは容易に想像がつく.
梶原大刀洗水の前に到着する.私より前に歩いていた数名は,気がつかずに通過する.私は,心の中で,
「・・勝手にしなよ・・毎回,私より前に行かないでと言っているのに・・・馬鹿者!」
と無言の罵声を飛ばしてから,私の近くにいる方々に,梶原景時が上総介広常を討った刀を,ここで洗ったと言われる伝説のことや,三郎滝のすぐ上辺りに広常の屋敷があったこと,朝夷奈切通しにまつわる伝説など,鎌倉の年寄り学校で勉強したことをオウム返しに説明する.
谷間の左岸も絶壁になる.雨が止んだ直後なので,至る所に普段見かけないにわか滝が流下している.これがまた荘厳で,なかなか見応えがある.
すぐに朝夷奈切通の入口の三叉路に到着する.入口近くにある三郎滝は,雨水を集めて,何時もと比較にならないほど勢いがよい.
<三郎滝:今日は水量が多い>
■十二所果樹園
今回は,朝夷奈切通には入らずに,直接十二所果樹園を目指す.道幅はかなり広いが,荒れた砂利道が続く.道路の至る所で雨水が流下している.進行方向左手に飯場のようなところが続く.かなりの上り勾配である.皆がばらけ始める.私は心中で,
「この分では,とうてい16時には鎌倉駅まで戻れないな・・」
と覚悟を決める.
「連中,それにしてものろいな~ぁ・・・!」
と心の中で呆れている.でも,すぐに,
「まあ・・・いいか.どうせ鎌倉の中だ.なるようになれ・・」
と腹をくくる.mさんが,口の中で,
「遅くて予定通り歩けない・・さっさと歩きましょう・・」
とブツブツ言っている.
果樹園の梅は,今が丁度見頃.梅の甘い香りを楽しみながら,14時39分,果樹園の中央にある展望台に到着する.時間が大分押しているが,ここでテーブルを囲んで,食べ物を出して一休み.
今日は視界が悪いので,残念ながら,富士山は見えないが,この展望台は三浦半島の丁度真ん中に位置しているので,東に東京湾,西に相模湾が見通せる風光明媚なところである.
<十二所果樹園>
■光触寺へ下る
14時54分,展望台を出発する.
暫くの間,池子弾薬庫跡の垣根沿いの尾根道を辿る.やがて,道の真ん中に作られている不思議な門の前を通過する.前方の木の枝越しに鉄塔が見え始めるところから,右折して藪道に入る.入口には何の目印もないので,ウッカリすると気づかずに通り過ぎてしまうところである.
両側は背丈を超える笹藪.笹に貯まった雨雫が,笹を揺らすと落ちてくる.冷たい.途中に「明治33年,横須賀海軍・・・」と刻字してある石杭が倒れている.この辺り,戦前は旧帝国海軍の基地だったのだろう.
暫くの間,枯葉がふかふかに降り積もった心地よい藪道が続くが,下山口の光触寺が近付くにつれて,次第に険しい下り坂になる.枯葉の下に濡れて滑りやすい鎌倉石(凝灰岩)が潜んでいる.前回,五十三次洛遊会のメンバーを案内したときには,随分沢山の人が,ここで滑ったり,立ち往生したりで大変だったが,今日はさすがに登山学校卒業生である.全員が何の苦もなく平然と下山してしまう.
「さすがに,登山学校の卒業生は違うな・・」
と感心する.
15時16分,光触寺に到着する.ここで,一遍上人像や塩嘗地蔵を見学しながら休憩を取る.
<一遍上人>
■チリ大地震と津波警報
15時25分,光触寺を出発する.大分時間が押しているので,寄り道をせずにまっすぐ鎌倉駅を目指すことにする.
この頃,同行者のお一人の携帯電話に,ご主人からのメールが盛んに着信する.どうやら,昨日起きたチリの大地震による大津波が日本に到着するようである.
「それほど海抜が高くない鎌倉くんだりを,のそのそ歩きしていてはまずいな・・」
と思うが,鎌倉の防災無線からは何も情報がない.一体どうなっているんだろう.唯一の情報源は,この旦那さんからのメールだけである.どうやら小田急線が運行休止になっているようである.つづいて,江ノ島電鉄も運休したとのこと.だが,鎌倉にいる肝心の私たちには,何の情報も得られない.もし,このメールがなかったら,津波警報が出ていること自体を知らずに,夕方まで呑気に構えていたかもしれない.この辺りに,防災体制の落とし穴があるような気がしてきた.
<田楽辻子で見かけた見事な梅の木>
■鎌倉駅でホットミルク
私たちはとにかく鎌倉駅まで急ぐことにする.
明王院前から一旦鎌倉街道に出て,足利公方御所跡から裏道に入る.そして報国寺前から田楽辻子に入る.犬懸ヶ谷から釈迦堂口を通過する.そして大町の大宝寺は,立ち寄りたかったが通過,安養院,常栄寺,妙本寺,本覚寺を経由して,16時50分,ようやくJR鎌倉駅に到着する.
ここで解散.
私は,バスの時間まで,大分,間があるので,駅舎内のコーヒー店,BECKsに立ち寄る.ただ,昨年の急性胃炎の後は,一日に飲むコーヒーは2杯までと決めているので,折角だがコーヒーを注文するわけにはいかない.しかたなく,同じ値段のホットコーヒーを注文する.
「さて,明後日には現在受講中の講義の試験がある・・到底,予習する暇はないな・・」
と口には出さないものの,半ば諦めながら,牛乳を味わう.
本当はコーヒーが飲みたかったのに・・・冴えないな~ぁ・・・
<ラップタイム>
10:02 鎌倉駅前歩き出し
10:25 寿福寺(10:42まで見学)
10:50 英勝寺
11:08 歓喜天
11:18 鶴岡八幡宮
11:44 荏柄天神(11:47まで見学)
11:55 鎌倉宮(12:55まで昼食)
13:24 初め弁天
13:43 明王院
14:23 十二所果樹園
14:39 展望台(14:54まで休憩)
15:16 光触寺(15:23まで休憩)
15:34 明王院
16:50 鎌倉駅
[散策記録]
■水平歩行距離 13.7km
■累積登攀下降高度 410m
■所要時間(休憩時間込み)
鎌倉駅 発 10:02
鎌倉駅 着 16:50
(所要時間) 6時間48分(6.80h)
歩行速度 13.7km/6.80h=2.10km/h
(おわり)
「鎌倉あれこれ」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f4fc61bd2a94e94efdd60a1fdd032565
「鎌倉あれこれ」の次回に記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/5ff52b3f2fab09be493eaf8d0536b883
初春の鎌倉:雨の中の観梅と十二所散策(2)
(山旅スクール5期同窓会)
2010年2月28日(日) つづき
■泥んこになっても山へ行くぞ!
大塔宮の休憩所で,1時間ほどの長い時間,昼食を楽しんでいる内に,天気予報通りに雨が止んだ.もちろん,路面は長い時間降り続いた雨のために濡れている.
私は,ご一緒している皆さんに,
「どうします? 泥んこ覚悟で山へ行きますか? それとも,平らな町中の社寺,史跡でも見学して回りますか?」
と伺う.
私は,多分,町中歩きになるだろうと予想していた.ところが,皆さんの希望は山歩きである.
「足下が悪いので,泥んこになりますよ.それでも良いですか!」
と念を押す.一同,泥んこになっても構わないから山へ登るという.
■理智光寺谷から天園ハイキングコースへ
12時55分,大塔宮休憩所を出発する.私は,歩きながら,
「さて,どこを通ったら一番泥んこにならずに十二所辺りまで行けるだろうか・・?」
と心の中で思案する.だからといって,自動車の往来が激しい金沢街道を通ったのでは面白くない.
そこで,大塔宮から横小路側の出口から外へ出る.稲葉越橋を渡って,理智光寺義僧碑の前の三叉路を右折して理智光寺谷住宅地に入る.住宅地の外周を回り込むようにして,坂道を登る.一番高いところが,浄明寺4丁目との境目になる.
ここで,浄明寺の住宅地の中を下って,泉水橋付近に出ても良いが,いくら何でも,それではつまらない.そこで,一番高い峠から左折して山道に入り込む.途端に,狭くて急な山道になる.路面は,つい先ほどまでの雨で,表面が洗われた鎌倉石の岩盤露出している.とても滑りやすいので往生する.私は心の中で,上りで良かったと胸をなで下ろす.
やがて,尾根に出る.すぐに瑞泉寺登山口からの天園ハイキングコースに合流する.
■大江広元供養塔
合流点から200メートルほどで,明王院方面に向かうハイキングコースが分岐する.ここでまたどうしようかと迷う.ここから少し天園方面に進んで,次の三叉路を右折して十二所へ下山するか,それとも,明王院方面へ向かうかが思案のしどころである.
十二所へ下る道,稲荷小路へ抜ける道は,普段からすごい泥んこ道である.ただ,今回,一筆書きのハイキングにこだわるのなら,この泥んこ道を下らなければならない.不必要に泥んこになるのも嫌なので,結局,ここで明王院へ抜けることにする.
暫くの間,浄明寺4丁目と二ッ橋の間の稜線道を辿る.途中から稜線のすぐ東側のトラバース道になる.稜線上の道もあるが,今回はあえて稜線道は選ばなかった.
やがて稜線道の合流する.この合流点から,ほんの少し稜線沿いに上り返すと大江広元供養塔と言われる石塔が立っている.
<大江広元供養塔>
■初め弁天
再び元の道に戻り,先へ進む,尾根が二手に分岐するところに,小さな神社が建っている.ここが初め弁天である.
江戸時代,江戸から江ノ島観光に訪れた旅人は,金沢八景から朝比奈切通しを経て,この尾根道にある弁天様をお参りした.江ノ島の弁天様をお参りする前に,ここの弁天様をお参りするので,初め弁天と言われたとのことである(鎌倉市生涯学習センターの講義録より引用).
<初め弁天>
■明王院
私たちは初め弁天から,南側の尾根伝いに進む.そして,尾根の終端で,大きく左折して泥だらけで急な下り坂を進んで,明王院登山口に降り立つ.
十二所果樹園を見学した後,再びこの辺りを通り過ぎる予定だが,とりあえずは明王院を参拝,見学する.境内には沢山の梅が咲いているが,先週の日曜日に比較すると,梅はもうとっくに見頃を過ぎているようである.
<明王院>
■大慈寺跡から馬頭観音まで
明王院から,住宅地の路地を抜けて大慈寺跡を通過する.大慈寺は源実朝が創建した寺であった.
イエズス会鎌倉修道院瞑想の家の前から,一旦,金沢街道に出る.そして,金沢街道をバス停十二所神社前まで,東に向かって歩く.
バス停前で右折,大刀洗川に沿いの道に入る.すぐに進行方向左手に,ちょっとした台地が残っている.その台地の上に馬頭観音他数基の石塔が置かれている.昔の朝比奈街道が,この馬頭観音の高さにあったことを示している.
■大刀洗から三郎滝へ
舗装道路が途絶えて砂利道になる.つい先ほどまで降っていた雨のために,道路の至る所に水たまりができている.水たまりを避けながら先へ進む.
やがて,進行方向左手,つまり大刀洗川の右岸が,高さ10メートルほどの絶壁になる.その絶壁に,沢山のヤグラが掘られている.今は,ヤグラの近くに行くことは困難だが,昔の街道が,このヤグラ群の近くを通っていたことは容易に想像がつく.
梶原大刀洗水の前に到着する.私より前に歩いていた数名は,気がつかずに通過する.私は,心の中で,
「・・勝手にしなよ・・毎回,私より前に行かないでと言っているのに・・・馬鹿者!」
と無言の罵声を飛ばしてから,私の近くにいる方々に,梶原景時が上総介広常を討った刀を,ここで洗ったと言われる伝説のことや,三郎滝のすぐ上辺りに広常の屋敷があったこと,朝夷奈切通しにまつわる伝説など,鎌倉の年寄り学校で勉強したことをオウム返しに説明する.
谷間の左岸も絶壁になる.雨が止んだ直後なので,至る所に普段見かけないにわか滝が流下している.これがまた荘厳で,なかなか見応えがある.
すぐに朝夷奈切通の入口の三叉路に到着する.入口近くにある三郎滝は,雨水を集めて,何時もと比較にならないほど勢いがよい.
<三郎滝:今日は水量が多い>
■十二所果樹園
今回は,朝夷奈切通には入らずに,直接十二所果樹園を目指す.道幅はかなり広いが,荒れた砂利道が続く.道路の至る所で雨水が流下している.進行方向左手に飯場のようなところが続く.かなりの上り勾配である.皆がばらけ始める.私は心中で,
「この分では,とうてい16時には鎌倉駅まで戻れないな・・」
と覚悟を決める.
「連中,それにしてものろいな~ぁ・・・!」
と心の中で呆れている.でも,すぐに,
「まあ・・・いいか.どうせ鎌倉の中だ.なるようになれ・・」
と腹をくくる.mさんが,口の中で,
「遅くて予定通り歩けない・・さっさと歩きましょう・・」
とブツブツ言っている.
果樹園の梅は,今が丁度見頃.梅の甘い香りを楽しみながら,14時39分,果樹園の中央にある展望台に到着する.時間が大分押しているが,ここでテーブルを囲んで,食べ物を出して一休み.
今日は視界が悪いので,残念ながら,富士山は見えないが,この展望台は三浦半島の丁度真ん中に位置しているので,東に東京湾,西に相模湾が見通せる風光明媚なところである.
<十二所果樹園>
■光触寺へ下る
14時54分,展望台を出発する.
暫くの間,池子弾薬庫跡の垣根沿いの尾根道を辿る.やがて,道の真ん中に作られている不思議な門の前を通過する.前方の木の枝越しに鉄塔が見え始めるところから,右折して藪道に入る.入口には何の目印もないので,ウッカリすると気づかずに通り過ぎてしまうところである.
両側は背丈を超える笹藪.笹に貯まった雨雫が,笹を揺らすと落ちてくる.冷たい.途中に「明治33年,横須賀海軍・・・」と刻字してある石杭が倒れている.この辺り,戦前は旧帝国海軍の基地だったのだろう.
暫くの間,枯葉がふかふかに降り積もった心地よい藪道が続くが,下山口の光触寺が近付くにつれて,次第に険しい下り坂になる.枯葉の下に濡れて滑りやすい鎌倉石(凝灰岩)が潜んでいる.前回,五十三次洛遊会のメンバーを案内したときには,随分沢山の人が,ここで滑ったり,立ち往生したりで大変だったが,今日はさすがに登山学校卒業生である.全員が何の苦もなく平然と下山してしまう.
「さすがに,登山学校の卒業生は違うな・・」
と感心する.
15時16分,光触寺に到着する.ここで,一遍上人像や塩嘗地蔵を見学しながら休憩を取る.
<一遍上人>
■チリ大地震と津波警報
15時25分,光触寺を出発する.大分時間が押しているので,寄り道をせずにまっすぐ鎌倉駅を目指すことにする.
この頃,同行者のお一人の携帯電話に,ご主人からのメールが盛んに着信する.どうやら,昨日起きたチリの大地震による大津波が日本に到着するようである.
「それほど海抜が高くない鎌倉くんだりを,のそのそ歩きしていてはまずいな・・」
と思うが,鎌倉の防災無線からは何も情報がない.一体どうなっているんだろう.唯一の情報源は,この旦那さんからのメールだけである.どうやら小田急線が運行休止になっているようである.つづいて,江ノ島電鉄も運休したとのこと.だが,鎌倉にいる肝心の私たちには,何の情報も得られない.もし,このメールがなかったら,津波警報が出ていること自体を知らずに,夕方まで呑気に構えていたかもしれない.この辺りに,防災体制の落とし穴があるような気がしてきた.
<田楽辻子で見かけた見事な梅の木>
■鎌倉駅でホットミルク
私たちはとにかく鎌倉駅まで急ぐことにする.
明王院前から一旦鎌倉街道に出て,足利公方御所跡から裏道に入る.そして報国寺前から田楽辻子に入る.犬懸ヶ谷から釈迦堂口を通過する.そして大町の大宝寺は,立ち寄りたかったが通過,安養院,常栄寺,妙本寺,本覚寺を経由して,16時50分,ようやくJR鎌倉駅に到着する.
ここで解散.
私は,バスの時間まで,大分,間があるので,駅舎内のコーヒー店,BECKsに立ち寄る.ただ,昨年の急性胃炎の後は,一日に飲むコーヒーは2杯までと決めているので,折角だがコーヒーを注文するわけにはいかない.しかたなく,同じ値段のホットコーヒーを注文する.
「さて,明後日には現在受講中の講義の試験がある・・到底,予習する暇はないな・・」
と口には出さないものの,半ば諦めながら,牛乳を味わう.
本当はコーヒーが飲みたかったのに・・・冴えないな~ぁ・・・
<ラップタイム>
10:02 鎌倉駅前歩き出し
10:25 寿福寺(10:42まで見学)
10:50 英勝寺
11:08 歓喜天
11:18 鶴岡八幡宮
11:44 荏柄天神(11:47まで見学)
11:55 鎌倉宮(12:55まで昼食)
13:24 初め弁天
13:43 明王院
14:23 十二所果樹園
14:39 展望台(14:54まで休憩)
15:16 光触寺(15:23まで休憩)
15:34 明王院
16:50 鎌倉駅
[散策記録]
■水平歩行距離 13.7km
■累積登攀下降高度 410m
■所要時間(休憩時間込み)
鎌倉駅 発 10:02
鎌倉駅 着 16:50
(所要時間) 6時間48分(6.80h)
歩行速度 13.7km/6.80h=2.10km/h
(おわり)
「鎌倉あれこれ」の前回の記事
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