ポーランド訪問記(26);キーノートスピーチ
(学会参加)
2001年6月16日(土)~6月25日(月)
2001年6月21日(木).第6日目.クラコフ4日目(2).
私達はバラバラにホテルを出て,コンファレンス会場に向かった.
私は途中で一緒になったF先生と一緒に道に迷いながらも,開会時間ギリギリに会場に到着した.
受付を済ますと,最初のキーノートスピーチが行われる2階の9号室へ急いで入る.すでに数十名の聴衆が集まっている。
9時05分,バルチモア大学のジェイキンズ教授によるキーノートスピーチが始まる.
演題は,
“The Evolution of the MIS Discipline;
From Data, through Information and Knowledge, to Wisdom”
である.
論旨は,「・・Eコマースの発達によって,急激な変革が進行している。私達は,現在,情報化時代に生きている。この時代を旨く乗り切ることが成功への道である。さあチャレンジしよう・・・」というものであった。
実務出身の私には,申し訳ないが,あまりにも抽象的すぎる内容で,あまり魅了は感じなかった(ただし,あくまで私の主観で,このスピーチの内容が良くないという意味ではない).
ジェイキング教授を責めるわけではないが,こんなに抽象的過ぎる内容の話を聞くために,わざわざ日本から来たんじゃないぞという思いが募る.でも,これはあくまでも私個人の感じ方であって,決してスピーチの内容が悪いと言っているわけではない.このことをくどいほど弁解しておく.
一体,「急激な変革」とは,具体的にどのようなことを指しているのか,どんな尺度で”急激さ”を測定するのか,「情報化時代」と簡単に言うが,どのような具体的な現象を捕らえて「情報化」と言っているのか,「チャレンジ」とは具体的に何をすることなのか・・・・こんな疑問が次々に湧いてくる.
懇親会の時に,是非,伺ってみようと心に決める.でも,実際には,他の人達と雑談している内に,質問することをすっかり忘れてしまった.
キーノートスピーチの後,私は第1会場に廻り,10時05分から11時53分まで行われた3人のプレゼンテーションを拝聴した.
最初はオークランド大学ジャンセウスキー教授の
”Importance of Communication System.”
である.
中国からのオーストラリアへの移民が増えるにつれて,社会が彼らをどう受け入れるかが問題になっているという報告である.自分のことを棚に上げて,再び辛口のコメントをすると,もやもやと問題だといっているだけで,何の提唱もない.
物足りない内容である.
2番目は南アフリカのプレトリオ大学レオナルド氏の
”Physical and Abstract Element that Support Cooperation
between Team Members During System Development”
である.
実際に情報システムを開発したときに体験したトラブルを紹介している.具体的だが,ほんの2~3人で,開発期間4~5ヶ月,しかも特別に困難なこともないオモチャのように小さなソフトを開発した話に終始している.
実務の世界から見ると,ママゴトのように見えてしまう(辛口のコメントで申し訳ない).
3番手は,イリノイ大学ウイーク氏の
”Communication Across Culture Global and Cultural Aspects
of Information Climate in a Training.”
である.
情報システムの話ではなかったが面白かった.
同じ英語の表現でも,性の違い,ユーモアセンスの違い,経済の違い,言語の違い,イディオムやスラングの違いなどによって受け取り方が違ってしまう.
そこでこれらの違いを意識した教育用方法を開発する必要があるという提案である.
ある程度具体的に新しい方法を提案しているところが評価できる.
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12時05分からランチである.
学内のレストランへ移動して,ランチを受け取る.アップルジュース,スープ,コロッケ風ジャガイモのメインディッシュである.
適当に近くの席に座って食事を摂る.
私の隣には,スリランカの方が座り,盛んに私に話しかけてくる.お互いに訛りのある英語なので,コミュニケーションに苦労するが,こんなやり取りがとても楽しい.
スープは酸味のある妙な味がする.ちょっと経験のない味なので戸惑うが,これがポーランド風なのかもしれない.中に小さな団子のようなものが入っている.
メインディッシュの大皿には,大量のジャガイモが盛りつけられている.その隣に茹でたニンジンが添えられている.これがポーランド風というのだろう.
昼食後の休憩時間を利用して,一人でキャンパス内を散策してみる.
余り手入れはされていないが,たくさんの樹木の中に校舎が建っている.その雰囲気がいかにもアカデミックで好感が持てる.
私は木陰で立ち止まる.そして,ノートを取り出して,目の前にある古風な3階建ての校舎のスケッチを開始する.
スケッチに熱中していると,ガイド係のB女史がめざとく私を見つけて近寄ってくる.
「あなたはアーティストですか・・・この建物には学長室があります・・・」
と説明してくれる.
アーティストといわれて,全くのところ,私は照れる.実際は,ご覧の通り,下手の横好きに過ぎない.
とはいえ,ここは実に良いところである。私がスケッチに没頭していても,通りすがりの人達が,私を放置していてくれるからである.他人のことは干渉しないという雰囲気が漂っている.だから,画いているところを,覗かれる心配もなしに,のびのびとスケッチができる.もう,研究報告を聞くのを止めて,この辺りのスケッチを続けた方が良さそうだと心が揺れる.
(つづく)
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