<マッケンジー湖>
ルートバーン(16):ルートバーントレッキング第1日目(5)
(湘南カラビナ隊)
2005年1月25日(金)~2月5日(日)
第4日目:2005年1月31日(月) (つづき)
16 マッケンジー湖へ
<気持ちの良い展望を楽しみながら・・>
■橋の袂の冷たい水
アーランド滝を後にした私たちは,コプロスマやデイジーの花や,マウントリトルの山並みを楽しみながら,ゆっくりと山旅を続けている.
16時05分,少し大きな沢を渡る.この沢の水はもちろん飲むことができる.橋の畔でカナダから来た人たちが休んでいる.フクロウと私は,橋の反対側の袂で水を飲んだり,顔を洗ったりして暫時休息する.この時,岩の上に置いた温度計は摂氏40度にも達していた.
いつの間にか,フクロウと私の2人が仲間たちよりも,少し前に飛び出しているらしい.ほんの2~3分,ここで休息した私たち2人は,カナダの人たちに挨拶をしてから,先へ進む.
16時10分,右手に簡易トイレがあるところに到着する.あたりの風景は相変わらず素晴らしい.私たち2人は,ここで仲間の到着を待つ.そして,16時23分,ふたたび歩き始める.
振り返ると,いままで辿ってきたなだらかな道が続いているのが見える.その先にアーランド滝が遠く見えている.
道は,なだらかとはいえ,多少,急坂になる.トレッキングの良い点は,一番前と一番後ろのガイドの間にいる限り,自分の好きな速度で歩けることである.
■オーチャード草原
フクロウと私はドンドンと先へ進む.仲間のメンバーも,少しバラけ始めた.消防隊長,消防隊員,そしてノシイカさん,スケルトンさんが後に続く.さらに遅れて,バーダー,仁王さんが続く.
今,ルートバーン出発点からおよそ9キロメートルの地点である.この辺りはオーチャードと呼ばれるところらしい(Hosking, G., et al, 2003, p.16).辺り一面に湿地のような草原が続いている.
<素晴らしいパノラマ>
■マウンテンリボンウッド
この草原を囲むように,マウンテンリボンウッド(Mountain Ribbonwood,Hoheria lyallii)が群生している.
この花は五枚のギザギザした白い花びらを持っていてとても可憐な印象を受ける.世界でも,ここニュージーランド南島にしか存在しない貴重な花だという(Ryall, R.,2002, p.20).
花のことは全く無知の私には,この花の価値は良く分からないが,群生する可憐な白い花に心が引かれる.綺麗な花の写真を何枚か撮る.
さらに気持ちの良いトレッキングコースが続く.深い森林と見通しの良い草原が交互に現れる.日陰に入ると涼しいが,見通しの良い草原に出ると,日差しがとても強い.
途中で,何人かのトレッカーを追い越す.フクロウと私は,まるで解き放された鴨のように快調に飛ばす.
■マッキンレーキャンプサイト
16時38分 ,マッキンレーキャンプサイト(McKinley Camp Site,標高1015メートル)に到着する.
ここは小高い丘のようになっている.先発の外国人の集団が3々五々たむろしている.
陽光が眩しいが,素晴らしい眺めである.私は,素晴らしいパノラマを目に焼き付けておきたくなった.大急ぎでこのパノラマのスケッチをする.
<桃源郷のようなお花畑>
■マッケンジー湖
16時45分,私たちは見晴らしの良いマッキンレーキャンプサイトを通り過ぎる.途中,何人かのトレッカーを追い越す.追い越すといっても,私たちが特段に速い速度で歩いているわけではない.ただ,登山学校で学んだ「マイペース」を守って,体力に合った定速度で,終始歩いているだけである.そして,原則として1ピッチ約1時間を守っている.ただし,風光明媚なところや,水場に出くわしたときは,こんな原則など簡単に無視してしまう気儘な歩き方をしている.
中高年者の私たちのこんな歩き方でも,はじめに驚異的な速度で歩き出す若手の方々を,途中から簡単に追い越せてしまうことが多いのを体験すると,登山学校へ通っていて,つくづく良かったなと思う.
17時20分,深い森林を抜けると,まるで桃源郷のような所に出る.
桃源郷の入口右手に小さなロッジが建っている.先頭を歩いていたフクロウと私は,案内看板を見て,このロッジはインデペンデントワーカー用のものだと判断した.私たちはガイデドワーカー用のロッジに宿泊する.したがって,このロッジを通過することにした.
■広大なお花畑
このロッジを通過すると,辺り一面が広大なお花畑になる.
進行方向右手にはアイルサ山脈(Ailsa Mountains)の山麓が落ち込んでいる.そして,左手には遙か前方に見えるオーシャンピーク(Ocean Peak)の山麓が迫る.その間にこの桃源郷のような草原が広がっている.
草原の幅は300~400メートルほどだろうか.その真ん中を小径がくねくねと続く.辺り一面に白い花が咲き乱れている.多分,デイジーであろう.(写真16-3を挿入)
草原の縁には高さ4~5メートルの小さな岩塊が,まるで庭石のように並んでいる.この風景を見て,私は死後の世界,つまり良く臨死体験をしたときに見るといわれる桃源郷を連想してしまう.とにかくこの世のものとは思えないほどの美しい所である.
フクロウと私は,吸い込まれるように,この桃源郷に彷徨い込んだ.この桃源郷を5~6分ほど進むと,新緑が美しい広葉樹林帯に入る.ギラギラ輝く陽光が,広葉樹の間を通り抜けて,優しく私たちを包み込む.
この広葉樹林帯を,ほんの1分ほどで通り抜けると,いきなり青い水をたたえたマッケンジー湖(Lake Mackenzie)の畔にでる(17時22分).
何という美しさであろう.
山の名前は良く分からないが,正面には氷河を抱えた山が見える.左手にはオーシャンピークからの尾根が続いている.その手前にはアイルサ山脈の突端が岬のように突き出ている.
湖面は山肌を縫うように奥の方まで続いているようである.
(※写真16-4を挿入)
左手の湖岸,私たちから30メートルほど離れたところで,数人の白人が水浴をしている.私も湖水に手を突っ込んでみる.摂氏10度位だろうか.とにかく冷たい.よくこんな冷たい水に入るなと感心する.
■マッケンジーハット
フクロウと私は,暫くの間,マッケンジー湖の畔で写真を撮った後,湖岸の小さな岩を伝って,歩き回わる.そして,湖岸近くにあるマッケンジーハットの中に入る.先客が何人か居るが,私たちの仲間は,まだ,誰も居ない.
私は,受付に置いてある宿泊帳に,自分の名前,住所をローマ字で書き込む.小屋の奥が炊事場になっている.1人の男性が何か調理している.その手前に,10人程が座れるテーブルと椅子が置いてある.私は,この椅子に座り込んで,メモ帳の整理をする.
フクロウは小屋のテラスで休んでいる.正に至福の一時である.私はたった今見た素晴らしい光景を思い浮かべながら,明日はどんな素晴らしい旅ができるのだろうかと期待を膨らませている.
余談になるが,私は日本の山が大好きである.もちろん,私は山登りの素人だから,訪れた山は決して威張れるほど多くない.でも,北アルプスや,南アルプスの山々を縦走していると,繊細で変化に富んだ日本の山は,本当に素晴らしいなと思う.だが,ここ,ニュージーランド南島の山並みを見ていると,規模の大きさや,雄大さでは,日本の山よりも,数段勝っているような気がしてくる.
(つづく)
「ルートバーン」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/c9784cc2cca352a9a77664082ee3a676
「ルートバーン」の次回の記事
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