中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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閑話休題;今日は終戦記念日

2016年08月15日 11時06分47秒 | 閑話休題:日々雑感

                                       <玉音放送>

          閑話休題;今日は終戦記念日
                      (戦争回想)

2016年8月15日(月) 曇

 今日は終戦記念日.朝から鬱陶しい天気である.
 昨日までに蒸し暑さはおさまって,今日は涼しい風が吹いていて,実に過ごしやすい.
 毎年のことだが,終戦記念日になると,あの玉音放送を思い出す.
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 あの玉音放送の日,私は旧制中学校1年生.夏休みの暑い日だった.何か重要な放送があるというので,ラジオ(当時はラヂオと書いた)の前に集合した.受信機は並4と呼ばれる方式.ピーピーガーガーと雑音が入って,私には玉音放送の内容は良く理解できなかった.
 当時,父親は軍医として応召中.富山県にある山砲の部隊に所属していた.気丈にも母一人で小さな診療所を守っていた.
 玉音放送が終わってから,母が,
 「戦争が終わったよ…」
と一言だけ,ポツリと言った.
 戦争が終わったって…!
 勝ったの?
 変だな!
 負けたのかな?
 負けるなんて,そんなはずは絶対にない! 神国大日本帝国が負けるはずがない!
 神風がきっと吹く!
 100パーセント,戦時中の教育を受けていた私は混乱した.
 大人の人の目には涙が浮かんでいた.母は,どんな思いで,この放送を聞いたいんだろう.今になっては聞く術もない.
 側にネコが居た.ネコも玉音放送をジッと聞いている感じだった.
 それにしても,あの食糧難の時代に,わが家にはネコにやる餌などなかった.それなのにネコは平然と過ごしていた.多分,ネズミを捕ったり,その辺りの虫を食べて生きていたに違いない.あの頃のネコは逞しかった.
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 この日を境にして,連日のように上空に飛来していた米軍の艦載機が姿を見せなくなった.灯火管制もなくなった.
 なんだか拍子抜けしたような気分になった.
 この日を境にして,あれほど威張っていた配属将校が何時の間にか学校から姿を消した.
 わけもわからないまま,生徒を殴り倒していた柔道教師が,手の平を返したように自由主義だ民主主義だと言い出した.
 やがて中学から予科練に進学していた連中が中学に戻ってきて,学校は荒れに荒れた.おぼこかった私達は,何がどうなっているか分からずに,何時か近いうちに米軍に殺されるの違いないと信じていた.
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 それがどうだろう…!
 驚いたことに,やがて進駐してきた米兵の後を追って,
 ”Give me チョコレート”
に変身した.
 ”そう…!"
 私達の世代は,何も信じない虚無的な世代だといわれるようになった.曰く「焼け跡派」.戦前派,戦中派からは馬鹿にされ,1世代前の戦後派からは取り残された.
 私達は,戦後派(アプレゲール)
の皆さんが,銀座を闊歩して「ミユキ族」といわれているのを,田舎で指をくわえて羨ましく感じていた.
 外国かぶれの人種が大手を振るっていた.
 ”トンデモ,ハップン”
なんていう流行語があったな.
 ”将来,どうしても,東京に出なければだめだ…”
 「東京ブギウギ」だの「林檎可愛いや」の歌が流行した.そして,町子巻きが流行し始めた頃には,多少世の中が落ち着き始めた.

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 「ブロンディ」というアメリカマンガが流行した.
 ブロンディはダッグウッドの奥さん.ダッグウッドはブロンディの尻に敷かれている.
 このマンガから垣間見たアメリカ市民の生活振りは,まるで天国のように思えた.そして,周囲に居る和服を着た年配者がとんでもなく汚らしい未開な人間に見えてしまう.日本の未来など絶望的に思えた.なにしろ,「日本人の知的年令は13才程度」なんて言っていたアメリカの偉いさんが居たぐらいなので…
 あれから幾星霜!
 今は,和服ほど繊細で美しい衣裳は世界中どこへ行っても絶対にないと思っているのに…!
 私達の世代は,結果的に世の中が激変していくのを,この眼で実際に見て,体験してきた貴重な生き残り世代である.むずかしい理屈は,ぼんくらの私には良く分からないが,とにかく戦争だけはもうコリゴリである.
 この平和が末永く続くことをひたすら願っている.
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 余談だが…
 灯火管制が敷かれていた頃の夜空は実に素晴らしかった.
 真っ暗な夜空を見上げると,銀河は,勿論,バッチリ見えたし,星も今より何十倍も沢山見えた.沢山の星がキラキラと輝く夜空は,例えようもないほど素晴らしかった.
 空気は素晴らしく透明だった.朝焼けや夕焼けでキラキラと黄金色に輝く山の稜線.何という美しさだったろう.
 残念ながら,もう今になっては,絶対に見ることができない.実に残念だなあ~.
                                (おわり)
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