羽柴一家の人々は、おとうさまもおかあさまも、なつかしい長男が帰ったという喜びに、とりのぼせて、そこにこんなおそろしいカラクリがあろうとは、まったく思いもおよばなかったのでした。
The all Hashibas, the father and mother were so excited by the delight in recieveng old missing son that they never imagined such a horrible trick.
「ぼくは忍術使いです。」
二十面相は、さも、とくいらしくつづけました。
”I'm a master of Ninjutsu."
Twenty Faces said smugly.
「わかりますか。ホラ、さっきのピンポンの玉です。あれが忍術の種なんです。あれはぼくがポケットからじゅうたんの上にほうりだしたのですよ。あなたは、少しのあいだ玉に気をとられていました。机の下をのぞきこんだりしました。そのすきに宝石箱の中から、ダイヤモンドをとりだすのは、なんのぞうさもないことでした。ハハハ……、では、さようなら。」
"Do you understand? See, it's that ping-pong ball. That's the trick of Ninja art. I thew it from my pocket over the carpet. You were distracted by it and looked down the desk. In the meantime it was very easy for me to get diamonds from the box. Ha ha ha. See you then."
賊はピストルをかまえながら、あとずさりをしていって、左手で、かぎ穴にはめたままになっていたかぎをまわし、サッとドアをひらくと、廊下へとびだしました。
The thief walked backward pointing the gun at him, turned the lock of the keyhole, opened the door with his left hand and flew out to the corridor.
廊下には、庭にめんして窓があります。賊はその掛け金をはずして、ガラス戸をひらき、ヒラリと窓わくにまたがったかと思うと、
「これ、壮二君のおもちゃにあげてください。ぼくは人殺しなんてしませんよ。」
といいながら、ピストルを部屋の中へ投げこんで、そのまま姿を消してしまいました。二階から庭へととびおりたのです。
There is a window to the garden. He unlocked and opened it, climbed on the windowsill and said
"Give this Souji for his toy. I am not a murderer."
And he tossed the pistol into the room and disappeared. He jumped down to the garden.
壮太郎氏は、またしても出しぬかれました。
ピストルはおもちゃだったのです。さいぜんから、おもちゃのピストルにおびえて、人を呼ぶこともできなかったのです。
Soutarou was outwitted again.
The pistol was just a toy. He was so scared of it that he couldn't call people.
しかし、読者諸君はご記憶でしょう。賊のとびおりた窓というのは、少年壮二君が、夢にみたあの窓です。その下には、壮二君がしかけておいた鉄のわなが、のこぎりのような口をひらいて、えものをまちかまえているはずです。夢は正夢でした。すると、もしかしたら、あのわなも何かの役にたつのではありますまいか。
ああ、もしかしたら!
But all readers must remember it. The garden the thief jumped off was under the window Souji saw it in his dream. Under the window the trap Souji set was waitig for its pray with opened mouth. The dream came true. Then maybe the trap works.
Oh, maybe!