最近の世界的な問題にもなっているサバクトビバッタによる蝗害のニュースを調べいたところ、
日本にサバクトビバッタの専門の研究者がいるということで興味を持ち本を買ってみました。
感想は、すごくおもしろかったです。
昔のテキストサイトの日記よろしく、子気味の良い読みやすい文章と、自虐ネタで大いに笑わせてくれる。
内容は、先が見えないポスドク(≒高学歴ワーキングプア)の著者が、
愛するバッタの研究を続けるため、論文を書き業績を上げて、研究者としての正式雇用を得ようと向かったのが、”モーリタニア”。
未知なる異国でフィールードワークでサバクトビバッタの研究に奮闘する一青年のアフリカ滞在記(日記?)である。
もちろんサバクトビバッタを研究することは、蝗害という人類の脅威に対して予防的手段の発見に繋がる重要なもので、著者の志は高いものだ。
が、ところどころで溢れ出るバッタへの異常なまでの愛とあこがれは、ちょっと常人には受け入れがたい(笑)
でもでも、読んでいるこちらはには、行動力先行で七転八倒しながら夢を追う著者の姿は応援せずにはいられなくなる。
はるかなるモーリタニアで言葉も満足に通じず、異文化とのギャップに打ちひしがれながら、自虐とユーモアを交えつつ受け入れている。
どんな状況でも常にユーモア忘れないところが魅力的です。
一方で、時折みせる研究者としてのアプローチにも非常に興味深い面も多かった。
デスクワーク中心の研究では掴めない、自然に身を置くことで自然界ならではの”生”の昆虫の生態観察を行う優位性であったり、
ほかの研究者がやらない長期のフィールドワークを行うことでほかの研究者とは一線を画す研究を行うことを意図している。
どんな仕事にも通ずる、現場をを知ることの重要性だったり、他社との差別化を図り独自のブランド力を磨くことにも繋がるだろう。
(事実、著者の前野博士はビジネス情報誌「プレジデント」で連載を持ったそうだ)
また、フィールドワークならではの逆算的に論文テーマを決めていく研究の仕方や、研究テーマからどのような実施実験を行うかなど
自分なりのアイデアを加えて独自の研究ステップをされている。
こういうところ行動力だけでない、彼の研究者としてのストロングポイントだろう。
本書で本当におもしろいのは実験中におこるさまざまなトラブルで思うように研究が進まないところなのであるが。。。
このあたりはぜひ読んでいただきたい。
個人的には途中に研究テーマにしたゴミダマ(虫)の実験と、いつも一緒に行動を共にするドライバーのティジャニさんとのやりとりは微笑ましく読み返したくなる。
人にお勧めしたい本であった。
何より前野博士がこの研究に情熱を傾けているということが、彼自身を何より魅力にしているのかなと。
少し脱線するが、
この本の前に読んだ「熔ける」の大王製紙井川元社長の文章からは仕事に対しての情熱を感じることはできなかったし、井川氏を魅力的な人とは思えなかった。
仕事に対する責任感と、情熱というのは別物なのだろう。
情熱をもって何かに取り組むというのは、周りの人が応援したくなるような影響を与えるのだろう。
情熱って大事。
と、感想は以上です。
別記事にして、もう少しサバクトビバッタと前野先生の言葉を書こうと思います。
さて、ポスドクの社会問題について、少し古いがわかりやすい解説動画があったのでこちらを添えて今日の更新を終わりにします。
博士号を取るってお金かかると思うんです。せっかく育てた人材が生かされない国にしてはいかんよね。