人間ドックや健診を受けて異常が認められれば医療機関の受診を勧められ、再検査や治療が開始される。しかしながら、異常と指摘されたことが実ははなから異常ではなかったということが結構ある。先日も、「 健診で糖尿病と高脂血症と言われ、再検査を受けるよう言われました。結構悪いのでしょうか? 」と健診結果を持参され診察室で相談されたFさん。「 血糖値が102、HbA1cが5.9% ですか。これは正常値ですね。総コレステロールが210、LDLコレステロールが128ですか。これも正常値ですね。」「 エッ、どういうことですか?」 健診や人間ドックでは日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が独自に健康な人から集めた検査値の分布の中央の95%を含む数値範囲を統計的に表わしたもので、なんの指標にもなりません。臨床の場で用いる判断値は、専門学会(動脈硬化学会、高血圧学会、糖尿病学会、循環器病学会など)で疫学的調査をされ、将来心筋梗塞や脳梗塞などを起こしてしまうことが予測され、予防が必要であると判断される検査閾値のことで、簡単に言えば糖尿病や高脂血症は予防を怠ると心筋梗塞や脳梗塞を来す疾患であるため、安全な値まで治療して下げておきましょうというのが臨床判断値です。この値は長年に多大なデーターを集積され検討されてきた値で、人間ドックで使う基準値とは全く比較になりません。「 Fさん、血糖値は110以下、HbA1cは6.2%以下が正常値(判断値)です。総コレステロール値は220以下、LDLコレステロール値は139以下が正常値です。ですから、貴女はともに正常ですから今の時点では心配いりません。」「 そうですか。安心しました。」「 いえいえ、高いお金をかけて健診を受けて、正常なのに異常と言われ、時間とお金を使ってクリニックを受診するなんて大損ですね 。インターネットで調べれば、各々の正常値(臨床判断値)が載っていると思いますので、これからはそれを調べてからクリニックを受診された方が良いですね(笑)