健康食品、サプリメント( 健康補助食品 )の摂取は副作用もなく安全であると誤解されている場合が多く、過剰摂取には注意を要することを前回お話した。1989 年(平成元年)に健康食品による衝撃的な事件が起こった。睡眠と日内リズムに関連するセロトニンとメラトニンに体内で代謝される必須アミノ酸であるトリプトファンの健康被害事件である。トリプトファンは、睡眠導入のサプリとして米国では爆発的に売れた。しかし、これを摂取することで約 1,500 ほどの人がアレルギー反応に深く関与する白血球の一種の好酸球の増多と、非常に酷い筋肉痛を伴う新しい病気を発生し、『 好酸球増多筋痛症候群 』 と名付けられた。日本の昭和電工が大量に売り上げており、間もなく製造中止になった。製造工程(遺伝子組み換え)でごく微量の不純物が混入したことが原因と当初は考えられていたが、他社の製品でも被害者が少なからず出ていることなどよりこの考えは後に否定的となり、恐らく快眠を希望するあまりに過剰摂取したことが原因ではないかと考えられている。なんと死亡者が 38 名も出てしまったのである。この事件により、健康食品・サプリメントに対して過剰摂取には注意を要すること、真偽は不明であるものの遺伝子組み換えの食品を制限することなど注目された。現在、ダイエットを目的に本来の食事を制限し、栄養分としてサプリメントを何種類も大量に摂取して栄養分が補われたなどと紹介しているテレビ番組や芸能人が多いようだが、あくまでサプリメントは補助目的の健康食品であることを再認識すべきである。副作用は薬だけにあるのでなく、その服用方法を間違えれば、健康食品にも起こり得るのである。さらに付け加えると、一般食品にもあり得るということである。美味しいからと、ひたすら欲望のまま食事やアルコール、おやつを摂りすぎたり、友人に誘われたからとちょこちょこランチと称して外食したりする人が多いのには驚きである。これ皆、一般食品の過剰摂取で糖尿病、高脂血症、肝機能障害などを発症しますよね。これこそ正に一般食品の副作用なのですが、気付いていない人が多すぎます。いい大人なんだから、自己制御し、もっと自分に厳しくならないとといつも診察しながら思っています(笑)。
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