忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

いつか陰謀論にハマりかけた自分に警鐘を鳴らすための予備知識

2022年04月19日 | 忘憂之物






1週間ほど、ネッともテレビも見ない生活をしていた。理由はとくにない。それで久しぶりに地上波なんかをみていると、ロシア語が禁止になったのか、キエフはキーウになったらしい。第二言語としてのロシア語を禁止したポロシェンコみたいだが、チェルノブイリなんかチョルノービリになったとか、アナウンサーが嚙みながら言っていた。実に阿呆らしい。

心配になったから「アジト」や「イクラ」や「インテリ」などは大丈夫かと調べてみたら、それはそのままでいいらしい。これで安心して会社でも「ノルマ」とか言えるが、テレビ朝日の「ナニコレ珍百景」のBGMは「キエフの大門」とか思い出してまた心配になった。ちゃんと「キーウの」に代えたのだろうか、というか、そもそもムソルグスキーはロシア人だからいいのか、などと気になったが、よく考えるまでもなく、心の底からどうでもいいと気付いた。

それから「アゾフ連隊(大隊)」という固有名詞もぽんぽん言っていた。ほんの1週間、ずいぶんと変化があるものだと感心した。先月などは、馬淵氏ではない「元ウクライナ大使」が「みたことない」とテレビで言っていた。陰謀論どころか都市伝説レベルの扱いだった。それがいまや「マリウポリを守った英雄」として「地元住民からも支持されている」と平然とやる。

アリバイ程度に「過激な人も少しいて、新ロシア派の住民などを傷つけてしまうこともありましたが」と付け加えてもいた。相変わらずの人間の屑、下劣極まるのが日本のメディアだと再確認した。

また最近、面白い現象がある。ジャーナリストの山口敬之氏だ。日本の保守層から蛇蝎の如く、それこそ、まるでプーチンのように、いくらでも叩いてもよい対象となった橋下氏だが、山口氏は橋下氏と「上海電力」との怪しげな関係を調べているとのことだった。たしかに「ナニかある」とはみんな思っていた。そこにその「ナニか」とはこれじゃないか、となれば盛り上がりもする。後追いの調査もされるだろうし、本当に「ナニか」出てくるかもしれない。大いに期待するものではある。大阪出身の私からしても、浪速の街をチャイナタウンにしやがって、ナニが都構想だ、くらいの恨みもある。

保守論者も「さすがは山口氏、本物のジャーナリストだ」と絶賛。私もそう思う。山口氏の著作も多く読んでいる私からしても、我が意を得たり、なぜにこの御仁がメンヘラ左翼から狙い撃ちにされたのか、スケベだから、という以外の理由はここにあった。するとこの直後、ウクライナ情勢について馬淵氏みたいなことを言い出した。みんな大好き「ファクトベース」による客観的な考察だ。クリントン外交を基盤とした人為的、且つ、作為的な紛争を説明し、現在のウクライナ紛争がこれらに酷似しており、日本のメディアは乗っかった扇動報道ばかりで日本の国防は大丈夫か、という問題提起だった。これにも我が意を得たり、その通りだと思う。同時に本当に危ういと思う。動画の視聴をお勧めする。

しかし、橋下氏の「上海電力との関係」に歓喜した保守論者は、これについては「さすが真のジャーナリスト」とか褒めない。いまのところ、ざっと確認しても、誰も触れていない。バイデン並みの人格攻撃を受けていた馬淵氏と比して批判も見ない。反論もない。つまり、反応がない。都合が悪いと「取り上げない自由」「触れない自由」「書かない自由」「動画作成しない自由」か。まったく朝日新聞みたいなことをするもんだ。

山口氏や馬淵氏、あるいは自民党なら西田昌司氏も触れていたかもしれないが、そもそも、ゼレンスキー大統領がウクライナ国民に対して発した「ロシア兵を殺害しても罪に問わない」という声明は正式に3月3日付、その翌日から法令は発行されるとなっている。戒厳令の間は武器でロシア兵を殺してもよい、と合法化されたわけだ。ゼレンスキーの口だけではなく、実際に1万8千丁の銃器が配布されて、ウクライナ市民は火炎瓶をつくり、バリケードを設置し、サイバー攻撃をしたり、ドローンで情報を得ていたりする。これは普通に日本のテレビでもやっていた。普通に素人が考えても「ジュネーブ条約」の外側にいるとわかる。「人間の盾」どころではなく、ゲリラの大量生産だ。ゲリラは殺してもよい、が国際常識だ。橋下氏はここを言えばいい。


また、こういうことを書くと、このコラムニストのように「馬鹿にして」くる輩も沸く。せっかくだから、この石原壮一郎氏のコラムも読んでみると、申し訳ないが、あまりの低レベルにウクライナに千羽鶴でも送りそうになった。

「陰謀論」にハマることで味わえそうな7つの幸せ 、とのことだ。コラムのメインテーマはこれだ。読めばわかるが、小馬鹿しているつもりの悪口ばかりで、例えばひとつめは「自分は選ばれし特別な存在だと感じてウットリすることができる 」だ。さすがだ。

ちなみに、この石原壮一郎氏は、2007年9月25日付の朝日新聞で、あの懐かしい「アベしちゃおうかな」を書いた御仁だ。仕事も責任も放り出して逃げる、こんな流行語を総理大臣が作ったのがカナシイ、みたいな書きぶりだった。この件は、いわゆる「アサヒる問題」として殿堂入りしたが、記事が出たときから「そんなの聞いたことない」が世間の声だった。いろいろと調べた人もいて、やっぱり、そんなの「流行ってない」とわかったから、石原氏は取材を受けている。こんなのどこで流行っていたんですか?と記者が問うと「何だったのかは覚えていないが雑誌の見出しにもなっていたし、何人からも聞いた」とのことだった。所詮、この程度の人間だ。さすがである。

しかしながら、この「アベしちゃおうかな」と同じレベルを、日本が誇る保守論者がやっている。こんなコラムと同様に「7つの幸せ」みたいな解説をしているのもいた。要するに冷や水ぶっかけて小馬鹿にして晒す。家の外で馬淵氏の著作なんか読むのは恥ずかしい、という雰囲気をつくる。西側の報道で「プーチンを支持しているのは貧困層で知的水準が低く田舎暮らし」と決めつけているのと同じだ。相当なアレだが誰も騒がない。


例えば、ブチャで虐殺があった。ロシア軍が撤退すると、数百の遺体が放置されていた、というのが第一報だった。動画もたくさんあった。怪しいのもたくさんあったが、モザイク処理して日本のワイドショーでも流していた。そしてスタジオで酷い、可哀そう、人間じゃない、とやる。「専門家」も「戦争の狂気」やらでお茶を濁してから、プーチンは頭がおかしいを入れて、ロシアは旧ソ連時代からこういうことをやる連中、と紹介する。出てくるのは「カティンの森」だ。日本の保守論者はそこに足して「満州、樺太を忘れたのか。シベリア強制連行に北方領土はどうなんだ」と凄んでくるが、いま、問うているのはウクライナのキエフ周辺にある村々だ。私もソ連もロシアも嫌いだが、だから「やったに決まっている」は危険だと言うのみだ。


関係ない話をしていいなら、例えば1941年のキエフだ。街には「ロプロ協会に登録せよ」というポスターが貼られる。当時、キエフにいたユダヤ人は20万人以上。それらの人はロプロ協会に登録していないと「殺されます」。

6月になるとナチス・ドイツ軍がキエフに侵攻。3日後はユダヤ教の休日、ヨムキッパーの日から虐殺が始まる。「バビ・ヤールの虐殺」だ。ナチスに協力したウクライナ警察によって数万人以上が深い深い峡谷に連れ去られた。2週間で「子供の靴だけでトラック2~3台分もあった」(THE GOOD WAR スタッズ・ターケル)などの証言も残る。戦後の調査で10万人以上が殺害されて峡谷に放り込まれていたとわかった。埋められたが、その周辺の草は他と比して「最も高く育ち、最も色濃く育つ」らしい。ぞっとする話だ。

また、このバビ・ヤールの大虐殺はナチスの「ホロコースト」による「1件での最大被害者数」を記録している。問答無用のジェノサイドだが、このときのナチスですら死体を燃やして峡谷に屠っている。最近、よく聞く「カティンの森」もそう。結局、犯人はロシア人(旧ソ連)だったじゃないか、はその通りだが、このときも大きな穴を7つ掘って埋めている。他にもメドノエとピャチハキ、ビコブニアの事件もあったが、これらもすべて埋めている。つまり、隠している。言うまでもないが、戦争犯罪は隠す。隠さないで堂々と威張るのはアメリカくらいだ。

なぜ、ブチャだけではなく、キエフ周辺の「ロシア軍による虐殺」の遺体はこれ見よがしに並べているのか、普通、そこに疑問を生じても「プーチン擁護」とはならない。親ロシア派も違う。私は死ぬまで「日本派」だ。

また、ウクライナ東部のクラマトルシク駅のミサイル攻撃。子供を含む52名が死亡、98人が負傷とのことだが、これも速報では「ロシア軍の短距離弾道ミサイル、イスカンデルによる攻撃」と報じられた。ミサイル本体にはロシア語で「子供たちのために」と書かれている、としてテレビカメラが映すと、それはイスカンデルではなく、ウクライナ軍の「トーチカU」ではないか、という情報も出た。たしかに似ているのかもしれないが、要するに「まだ確定していない」が正解だと思われる。それにロシア軍は侵攻初日に「トーチカU」も使っている、という報道もあった。戦争中だ。情報は錯綜する。当然だ。

だから吟味して考察して慎重になる。

ウイグル人の虐殺は100万人以上が連行されて、数十万人が拘束されて拷問されて殺害されている。アムネスティ・インターナショナルのアニエス・カラマール事務局長 は「地獄のような恐ろしい光景を圧倒的な規模で作り出している」と非難声明を出している。根拠は160ページにわたる報告書と55名のウイグル人への聞き取り調査だ。他にも「数百万人単位」になるウイグル人の減少などの客観的情報などによる「評価」だ。この中国共産党に対して「名指しした非難決議すら出せない」日本政府がいま、英米の尻馬に乗ってプーチン、ロシアを非難する。そうだ経済制裁だ、と国民も支持する。昼間のテレビでお茶の間に対して「プーチンを暗殺するしかない」と物騒なことも言う。

自民党の政治家も社民党の党首もオレンジにブルー。頭が痛くなってネットをみれば保守論者がウクライナカラーでドレスアップ。軍服っぽい格好で「ゼレンスキーモデルです」とやっているのもいた。まったく嘆かわしい。


この「アベしちゃう」の人はコラムの最後のほう、

「ハマってしまった人は、なんせ甘美な世界だけに、そこにずっと留まっていたいし、ケチをつける人に強い憎しみを抱くでしょう。まして「バカじゃないの」と本当のことを言われたら、ますます意固地になります。周囲としては、どうにかしてあげたくても手のつけようがありません 」

と書いて心配してくれている。べつに「甘美な世界」でもないが、嘘丸出しを書いてメシ喰うよりは「真面な世界」にいると感じる。御心配には及びませんが、コラムニストなら情報源について「何だったのかは覚えていないが雑誌の見出しにもなっていたし、何人からも聞いた」とかテキトーしないほうがいい。あと「バカじゃないの」と言われても意固地にならないように。




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