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飯田泰之 GDP統計の基礎  GDP=消費+投資+政府支出+(輸出ー輸入)不況期は右辺政府支出が左辺を決める

2020-12-27 09:07:42 | 連絡
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2020/02/21 14:38 
飯田泰之
【前提】GDPとはざっくり所得総額のことです
GDP(Gross Domestic Products:国内総生産)は辞書的に説明すると「一国の国土の中で」「期間中に生み出された」「付加価値の総額」のこと.ここで押さえておきたいポイントは「付加価値」です.
 販売額から販売原価(原材料費・光熱費・テナント料など)を引いた差額が付加価値です.俗にいうところの粗利ですね.粗利は誰のものになるでしょう? 労働者か経営者(株式会社であれば株主)のものになります.「粗利は誰かの所得」というわけですから,GDPは日本国内の(みんなの)所得を合計したものとほぼ等しくなります. 「一人あたりGDP」という統計を見ることもあるかと思いますが,所得総額を人数で割っているわけですから,これは平均所得のようなものだと捉えておくと良いでしょう.
■【入門】GDP(国内総生産)とGDE(国内総支出)
粗利は実際に販売が行われてみないといくらになるのかわかりません.そこで,GDPは(みんなの)支出額から計算することが出来ます.ここでちょっと具体的に説明してみましょう.
 日本国内購入される牛肉は「国内で生産された」か「輸入された」かのいずれかですね.
 一方,買う側は個人が「消費」のために買ったか,企業や業者が将来の生産のために買ったという「投資」か,政府が買った「政府支出」であるか,海外の人・企業が買う「輸出」のいずれかのはずです.
 売れ残りをについては企業が将来売るための在庫をもつという投資の一種であると解釈すると,
生産+輸入=消費+投資+政府支出+輸出
という等号が成立していることがわかります.この関係は何も牛肉に限ったことではありません.付加価値についても同様の関係が成り立ちます.ここから,付加価値の生産であるGDPについて,
GDP=消費+投資+政府支出+(輸出ー輸入)
という関係が成立していることがわかるでしょう.このような支出項目の総額はGDE(Gross Domestic Expenditure:国内総支出)と呼ばれます.当然ながら,GDP=GDEです.
【基本】寄与度分解とその前提
 支出項目を足し上げるとGDPになることから,GDPについて寄与度分解いう要因分解法が適用できます.
ここでも具体例から.本店と2号店の二店舗をもつラーメン屋の2019年の売り上げが,
池袋本店 800万円(0.8) + 練馬支店 200万円(0.2)=1000万円(1)
だったとしましょう.これが2020年には,
池袋本店 850万円+ 練馬支店 300万円 =1150万円
になったとします.
売上高アップは15%=(1150ー1000)÷1000=150÷1000=0.15アップですね.では,この「15%アップ」のうち池袋店・練馬店の貢献度はそれぞれどのくらいになるでしょう.合計売上金額アップ150万円のうち池袋店の売上増は50万円=850万円-800万円ですから,売上アップの1/3=50万円÷150万円=0.33・・つまりは(総売上のアップ15%のうち)5%=50万円÷1000万円=0.05が池袋店の貢献です.これを「池袋店の売上増への寄与度は5%」と表現します.同様に,練馬店の寄与度は15%<20%×{(300万円-200万円)÷150万円}>です.
 寄与度はより直接的な方法でも計算できます.変化前(2019年)時点の2点の売上シェア(池袋=0.8,練馬=0.2)に各店舗ごとの伸び率(池袋=6.25%=50万円{=850万円ー800万円}÷800万円=,練馬=50%)をかけても同じ値(池袋0.8×0.0625=0.05)が算出できます.
 GDPの速報が発表されると,各項目(民間消費とか公的需要とか)の伸び率の横に寄与度が記載されています.この寄与度は伸び率に前期の各項目のシェアをかけたものになっています.
■【注意】GDPの寄与度分解って意味があるの?
 ラーメン屋の例では,「池袋店で50万円,練馬店で100万円売上が伸びたから売上が150万円(15%)アップした」という因果関係がありました.しかし,GDPについてはこのような因果関係があるかはわかりません.
GDP=消費+投資+政府支出+(輸出ー輸入)
という等式には右辺(消費・投資etc.)が左辺(GDP)を決めるという因果関係は含まれていません.
マクロの経済を考える際にはショートサイド原則という考え方があります.現実のGDPは(付加価値を生み出す)生産能力と(売上実現のための)需要のうち小さい方で決まります.
不況期など,需要不足で供給能力が余っている(失業や生産設備の遊休がある)場合には需要が実際のGDPを決定する度合いが高い……つまりは右辺:消費+投資+政府支出+(輸出ー輸入):が左辺:GDP:を決めていると考えて良いでしょう.
 一方で,好況期で人手不足や需要過多によるインフレが問題になっている状況にこの方向の因果を重視してはいけません.むしろ(付加価値の)生産量が決まり,その後でその内訳(消費に使うか,投資に使うかetc.が決まる)と考えた方が妥当です.典型的には災害やオイルショックといった外的要因でGDPが低下する場合には寄与度分解はあまり意味のある数字ではないのです
 寄与度分解を「消費の寄与度が大きく,消費の増加がGDPを引き上げた」といった説明が可能なのはあくまで需要不足期に限られるという点を踏まえておきましょう. 
https://note.com/iida_yasuyuki/n/n91ea34db8ec6


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