中国の消費者はしばらく財布のひもを締めていた。
小売売上高データによると、7-9月期には消費が緩やかに回復したようだが、美容関連企業の株価からは違う景色が見えてくる。
中国経済の底打ちを願う投資家は、冷や水を浴びせられた気分だろう。
足元で不振が目立つ美容関連株は、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「イプサ」などの化粧品ブランドを展開している資生堂だ。
同社の株価は13日に14%安と、制限値幅の下限まで落ちた。
ファクトセットによると、これは1日の下げ幅としてはここ30年余りで最大。
資生堂は10日、中国事業とトラベルリテール事業の不振を理由に、2023年12月期の利益見通しを36%下方修正した。
トラベルリテール事業も中国の観光業に大きく依存している。
同社の中国での売上高は4-6月期(第2四半期)に前年同期比21%増加したが、7-9月期は16%減に転じた。
福島原子力発電所からのALPS処理水の海洋放出が中国の反発を招いたことが一因だと説明した。
海洋放出が反日感情をあおって資生堂への打撃となった面もおそらくあるが、美容業界の「しわ」は日本よりはるか遠くでも現れている。
「クリニーク」、「アヴェダ」などのブランドを手掛ける米化粧品大手エスティローダーは2週間ほど前、中国での売り上げが大きく減速し、目がくらむほどの株価急落に見舞われた。
資生堂と同様の理由で利益見通しを下方修正すると、株価は19%安で引け、1日の下げ幅としては過去最大となった。
中国での販売不振は共通の現象だ。
政府統計によると、同国の9月の化粧品売上高は前年同月比1.6%増と、1-6月期の8.6%増から鈍化した。
この傾向は小売売上高全体にも見られる。
新型コロナウイルス対策撤廃後の回復は失速し、夏季には伸びが急減速した。
減速の一因に、6月と7月は前年の伸びが大きかったことがある。
経済規模の大きい上海が2022年前半にコロナ関連の行動制限を課し、消費が停滞したものの、6月に制限が解除された。
今年8月と9月の小売売上高はいくぶん改善した。他の指標も同様に、7-9月期に景気が上向いたことを示唆している。
だが、消費関連企業の多くが7-9月期も不振続きなら、中国の景気回復の持続性を巡る疑心暗鬼は深まるだろう。
中国の消費者は今や、世界の美容関連企業にとって大きな収益源となっている。
資生堂の1~9月の売上高に占める中国事業の割合は約25%、空港の免税店を含むトラベルリテール事業は15%だ。
後者は特に、かつては世界各地を訪れていた中国人旅行者の戻りが遅いことが影響している。
中国当局が、国外で購入した商品を国内で転売する「代購」に対する取り締まりを強化したことも痛手となった。
加えて、国内ブランドが消費者から受け入れられるようになったことも逆風だ。
世界の化粧品会社は、中国の消費者のおかげで何年もの間、驚異的な成長を享受してきた。
だが誰もが知るように、美しさとははかないものだ。
また、中国経済は全身を大改造しようとしている。
少なくとも今のところ、消費者向け装飾品に散財することは、
改造計画の大きな部分を占めてはいないようだ。
(The Wall Street Journal/Jacky Wong)
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