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プーチンの恥部を知っている男、ガバナンスが失われつつあるロシア ・・・2023年4月4日小泉 悠(軍事評論家)、河東哲夫(本誌コラムニスト、元外交官)、ニューズウィーク日本版編集部

2023-04-05 15:45:39 | 連絡
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小泉 悠(軍事評論家)
東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。著書に『ウクライナ戦争』、『「帝国」ロシアの地政学』など。
 
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河東哲夫(本誌コラムニスト、元外交官)
外交アナリスト。ロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン「文明の万華鏡」主宰。著書に『日本がウクライナになる日』、『ロシアの興亡』、『遙かなる大地』(筆名・熊野洋)など。
 
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<ウクライナ戦争の特徴の1つは、ロシア軍が私兵団を使っていること。ロシア国内の事情に目を向けると......。日本有数のロシア通である2人が対談し、ウクライナ戦争を議論した>
※本誌2023年4月4日号「小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析」特集に掲載した10ページに及ぶ対談記事より抜粋。4月4日には、対談の後編となる特集号(本誌2023年4月11日号)が発売された。対談は3月11日に東京で行われた。
※対談記事の抜粋第4回:注目すべき変化「ゼレンスキーが軍事に口出しし始めた」 小泉悠×河東哲夫 より続く。

 ――今回の戦争では、ロシア軍が私兵団を使っているのが1つの特徴です。エフゲニー・プリゴジンの民間軍事会社ワグネルしかり、チェチェン共和国の首長ラムザン・カディロフの民兵組織しかり。
 
河東: ロシアではワグネルが有名ですが、アメリカの民間軍事会社では最近まで「モーツァルト(・グループ)」という会社がウクライナで活動していました。
モーツァルトはもう「死んでしまった」(改組で改名した)のですが。
ロシアに話を戻すと、ほかにもいくつか民間軍事会社があります。
カディロフもプーチンの信任の厚い男でチェチェンの兵士をウクライナにずいぶん送り込んでいますが、このカディロフが最近、首長を辞任したら自分も民間軍事会社をつくりたいと言ったんです。
エネルギー関係の会社が私兵企業を立ち上げてもいる。
そういうのを見ていると、90年代の荒れに荒れたロシア情勢を思い出してしまう。
あの頃は金持ちのオリガルヒ(新興財閥)たちがそれぞれ武装警備隊を抱えていて、車列で追い越し競争をし、負けたほうが後から追いかけていって殴り込むような、戦国時代みたいなことをやっていた。
 私兵企業に注目しているのは、そういう混乱した状況がまた起きるのではないか、中央のガバナンスが失われた状況が現れつつあることの兆候ではないか、と思うからです。
ロシア人はいま経済的に若干困ってきて中国から個人でいろいろな物を仕入れてはインターネットで販売している。
彼らは昔、個人で中国へ仕入れに行き、北京の街中でリヤカーを引いて安宿に戻り、ロシアに帰国しては販売していたのですが、それが今はインターネットで近代化されている。
また、最近は路上の露店──キオスクと言いますが──で、みすぼらしい金属製の店をまた復活させる動きも見られます。
民間軍事会社と一緒で、ガバナンスが失われた状況が現れつつあるんじゃないか。
■小泉 本来は、暴力を独占できていることが近代国家の要件として非常に大きいはずです。
90年代のロシアで、その暴力の独占がかなり崩れたというのは河東先生がおっしゃるとおりだし、それがもっと極端な形になったのが(同じ頃に内戦に陥った)ユーゴスラビアだったわけです。
あの時のユーゴスラビアの状況を見たイギリスの政治学者メアリー・カルドーは、「ここにおいて近代的な戦争ではない新しい戦争の形が起きている」ということを言いだした。
今のロシアがそこまで行っているとは感じないものの、軍隊以外のさまざまな連中がなぜか自動小銃やロケット砲を持って戦い、1つの都市を落とそうとしている。
しかも、軍隊の制服組と民間軍事会社を仕切っているプリゴジンは仲が悪い......。
やはりこれは近代国家の戦争ではないと思います。
中世の戦争。領主1人につき従者は何人で、何日までは戦闘に従事せよ的な、帝国的な秩序の中での戦争です。
ただ、プーチンはこれで全部グダグダになって構わないというようなヤワな男ではなく、プリゴジンが成果を上げてドヤ顔をしだすと、抑えにかかる。
最近はワグネルがロシア軍から砲弾を供給してもらえないとか、政治の中枢でもプーチンから遠ざけられつつあるとか、いろいろな話が飛び交っています。
軍にはっぱをかける材料としてプリゴジンは便利だったが、あまり調子に乗るなよ、というところもあるのでしょう。
かといって、プーチンは昔からの仲間を完全には切り捨てられない。
それは温情ではなく、昔の彼の恥部をたくさん知っているからなんです。
プリゴジンに関して言うと、公式のストーリーでは刑務所から出た後にサンクトペテルブルクでホットドッグの屋台を始めて大成功したことになっています。ところが、10年前の(ロシアの独立系新聞)ノーバヤ・ガゼータを見ると、プリゴジンの本業はサンクトペテルブルクの闇カジノだった。
当時の闇カジノ撲滅委員長であったサンクトペテルブルク副市長のプーチンに取り入って、ウチのカジノだけはお目こぼしをしてくれというような関係を築いて、親しくなっていった......ということがその記事には書かれていた。
どこまで本当か分かりませんけど、サンクトペテルブルク副市長で、対外経済委員会や闇カジノ撲滅委員会の委員長だったプーチンが、当時相当な利権の上で悪いことをしたのは、周辺状況から明らかなわけです。
その時のことを知っている人たちというのは、遠ざけはしても完全にたたきつぶせないでしょう。
でなければ、本当に口封じをするしかなくなってしまう。
このプリゴジンとプーチンの変な共生関係というのは続くんじゃないでしょうか。
※この続きは、本誌2023年4月11日号「小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析(第2弾)」特集に掲載されています。




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