中国の「国家情報法」とは?その危険性は?わかりやすく解説
近年、アメリカと中国の関係は著しく悪化しています。
さらに、新型コロナウイルスが拡大して以降は、アメリカ側にイギリスやフランスなどの自由主義諸国が追従し、中国側にロシアがつくなど、その対立は他国を巻き込み、「新冷戦」とも呼ばれるまでになりました。
そんな中で、アメリカをはじめとする自由主義諸国が警鐘を鳴らしているのが、「中国製通信機器の危険性」です。
では、実際、中国製通信機器を使った場合、どのようなリスクが存在するのでしょうか。
本記事では、そのリスクの正体である「国家情報法」に迫りたいと思います。
■「国家情報法」とは何か?
「国家情報法」とは、「国の情報活動を強化、保障し、国の安全と利益を守ることを目的とする」法律。
中国製通信機器を使うべきではない理由は、実は、「ハード的なリスク」でも「ソフト的なリスク」でもありません。
すなわち、通信機器本体に問題があるといいたいのではありません。
中国製通信機器には、深刻な「法的なリスク」が存在するのです。
その深刻なリスクとは、「国家情報法」という中国の法律です。
では、どのような法律なのでしょうか。
まず、その法律の目的を見てみると、「国の情報活動を強化、保障し、国の安全と利益を守ることを目的とする」法律であるとしています。
これだけを見ると、一見、どこの国にもありそうな法律です。
しかし、問題は、その条文内にありますので、次に検討していきます。
■「国家情報法」のリスク
この「国家情報法」の最大の懸念点は、「国家情報法」第7条にあります。
「いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する。」
この法律によれば、中国の国民や組織は、中国政府の情報活動に協力する義務があることがわかると思います。
これは、すなわち「中国国民・中国企業は、嫌でもスパイとして活動しなければならない」ということです。
(これについては、以前の「HUAWEI製品を使ってはいけない本当の理由」でも解説しました。)
中国国民・中国企業は、「国家情報法」に基づいて、中国政府のスパイ活動を強要されることとなります。
情報流出の危険性
「国家情報法」第7条では、全中国国民・全中国企業が、スパイとなり得る存在であるという危険性をご説明しました。
もし、「国家情報法」第7条を根拠にスパイとして活動した場合、あらゆる情報が中国政府に流れることとなります。
そして、ここで、最も注意すべきは、流出する情報は自分の情報だけではないということです。
よく、「自分の情報が抜かれたところで、何の価値もないし、平気だ」という人がいます。
しかし、問題は、その本人の情報だけでなく、「連絡先」に入っている友人・職場の個人情報、スマートフォンのカメラ機能・録音機能を用いたスパイ活動など、他者の情報も流出する恐れがあるのです。
こういった「法的リスク」を少しでも回避するために、少なくとも、自分だけは中国製通信機器を使わないことを意識すべきでしょう。
確かに、友人・職場が中国製通信機器を使っていれば、自身の個人情報が流出する恐れはあります。
しかし、自分が被害者側になることはあっても、加害者側にならないためには、そのリスクを認識し、中国製通信機器の使用を直ちにやめることが正解だと思われます。
■実際に、「国家情報法」第7条を適用する場面はあるか
では、現実問題、「国家情報法」第7条を適用する場面は出てくるのでしょうか。
これについて、「適用する場面は出てくるだろうが、公表することは考えにくい」と考えます。
例えば、中国政府が、H社のみに本条を適用させ、H社製品の利用者の情報を抜き取ることはあり得るでしょう。
しかし、仮にそれを公表してしまった場合、H社の製品を買う者はいなくなり、それは中国自身に対する打撃にもなります。
ですから、中国政府は、H社に対して、多額の資金援助をする代わりに、情報提供を求め、そのことは公表しないといった手法も十分想定されます。
私たちの知らない間に、「国家情報法」第7条を根拠に、中国政府に個人情報が流れていた、ということも現実的にあり得ると考えるべきです。
■中国政府の反論
この、「国家情報法」第7条の懸念に対し、中国政府の反論もあります。
これは、「国家情報法」第8条にあります。
「国家情報活動は法に基づき行い、人権を尊重及び保障し、個人及び組織の合法的権益を守らなければならない。」
つまり、中国は、「国家情報法」を適用するにあたっても、人権や個人・組織の合法的権益を守るというのです。
しかし、これを信用する者は皆無でしょう。
中国政府は、これまでも、人権を無視してきた”前科”があるからです。
香港では、イギリスとの約束を破り、「一国二制度」を形骸化させ、「国家安全法」により市民の民主主義や自由を奪い去りました。
ウイグル人に対する非人道的な扱いに対しては、「中国政府は現代版ナチスである」とまでいわれるほどです。
台湾に対しても、武力での統一をもくろみ、批判対しては「内政干渉である」との定型文で一蹴しています。
このような、度重なる人権軽視姿勢を貫く中国政府の”人権尊重発言”を誰が信用するのでしょうか。
第8条は、「国家情報法」に対する批判をかわすためだけにつくられた、無意味な条文だと捉えるべきでしょう。
まとめ
・「国家情報法」とは、「国の情報活動を強化、保障し、国の安全と利益を守ることを目的とする」法律。
・「国家情報法」第7条により、中国の国民や組織は、中国政府の情報活動に協力する義務がある。
・中国製通信機器の使用は、自分自身だけでなく、他者を巻き込んだ情報流出の危険性がある。
・「国家情報法」第8条による中国政府の反論は、意味をなさない
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