A Moveable Feast

移動祝祭日。写真とムービーのたのしみ。

八尾地形図

2009年07月24日 | 越中八尾 おわら風の盆
<福島(ふくじま)>
 初夏の曵山の頃にJR高山線の八尾駅に降り立つと、木造ペンキ塗りの駅舎の廂にはツバメが巣を作っていて、いそがしく飛び交っているのが見られる。それが、ひと夏が過ぎて、風の盆を向かえる頃に、この駅に降りた時には、ツバメは既に巣立った後で、たくさんあった巣も駅員によって片付けられている。
 八尾の最初の町が、八尾駅がある福島である。人口が増えている一番新しい町で、おわら人口も最多。駅前広場に特設ステージが設けられ、会所前では演舞が行われ、広い通りで輪踊りが行われる。にもかかわらず、実は自分は福島のおわらはあまりじっくり見たことがない。旧町へとはやる気持ちを抑えつつ、そそくさと足早に通り抜け、そのついでに眺めるという申し訳ないことを繰り返しているからだ。
 ただ、4日の早朝に、駅のプラットホームで行われる福島の「見送りおわら」を見たことがあった。一番列車が出る前に、男女の踊り手が最後のおわらを踊ってみせてくれるのである。連日の行事で若い踊り手も疲れているはずなのに。列車は八尾で夜を明かした乗客でぎっしりいっぱいで、動き始めると同時に、開けた窓から、口々に「ありがとう」と声が飛び交う。それがいかにも自然で、真情がこもっていて、おそらく風の盆でしか見られない返礼である。
 井田川近くまで来ると、通りかかる度に写真を撮るポイントがある。それは廃業された美容院だと思われるが、「八尾美容院 美顔室」という看板を下ろさずにいるお宅で、貼ってあるポスターまで何年も変わらないその家を確認するのが自分の密かなたのしみなのである。