東京電力福島第1原発事故後の3月15日に東京都世田谷区で採集された大気中の塵(ちり)から、1立方メートル当たり約0・01ベクレルの放射性ストロンチウム90が検出されていたことが2日、分かった。
都によると、都立産業技術研究センターが採集した塵について、日本分析センターに分析を依頼、6月21日に結果を受け取っていた。都産業労働局は「数値が極めて低く、健康に影響を与える可能性が低い」などと判断、公表はしていなかった。
共産党都議団が、ストロンチウムの測定データがあれば公表するように都に求めて明らかになった。
横浜市では、ストロンチウムは市内のマンション屋上の堆積物から1キログラム当たり最大195ベクレルが検出されていた。
さらに港北区の2カ所で新たに放射性ストロンチウムが検出されたことが明らかになった14日、住民からは不安の声があがった。道路側溝で129ベクレル、噴水底で59ベクレル(いずれも1キロ当たり)が検出されたが、市は測定数値について「現段階で危険性が判断できない」とし、国に対しストロンチウムの調査を市内で実施するよう要望する方針だ。
市は検査を迅速に行うため、ストロンチウム90と同89を合わせた値が検出される方法で検査を実施した。このため半減期の長い同90の量が分からず、市担当者は「危険性については判断できない」と話し、国の判断を仰いだ上で、同90の測定などを行っていきたいとしている(横浜市が同位体科学研究所に依頼して行なったこの検査は、文部科学省が定めた検査方法と違い、鉄共沈でなくスリーエム社のろ紙によるろか法である。検出すべきストロンチウム90だけの値はわからない。さらに他の放射性同意物質の放射線量もあわせて測定している可能性もありストロンチウム90がどれだけでたかわからない。あくまで簡易法でその手法は確立されているとは言う得ない。念のため)。
市は「住民調査の値と比べて極端に高い値ではない」としている。
市は検査方法が難しいことなどからストロンチウムについて調査をしてこなかったが、自主検査をした同区の男性からマンション屋上で1キロ当たり195ベクレルのストロンチウムが検出されたとの情報提供を受け、確認のため測定を実施していた。
今回の市の検査結果について、日本分析センターの池内嘉宏理事は、ストロンチウム89と同90を分離できない分析手法が用いられていることから、「数値が高いので原発事故の影響の可能性はあるが、半減期の短い同89が検出されなければ、事故の影響とは言い切れない」とした上で、「福島県外でストロンチウムの検査は行われておらず、県外で出る可能性は否定できない」と話している。
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横浜市が港北区の2カ所で14日夜、新たにストロンチウムが検出されたと発表したことを受け、住民らは「子供が心配」「早く対策を」などと不安の色を隠せない様子を見せた。
ストロンチウムが検出された同区大倉山の側溝周辺は、マンションや民家が立ち並ぶ住宅地。近所の住民によると、近くには複数の学校があり、登下校の時間には多くの子供であふれるという。
無職の女性(61)は「これまでの状況を考え、ストロンチウムが出たと聞いてもあまり驚かなかった。行政には正確な情報をきちんと伝えてもらいたい」と冷静に話した。
2人の子供を持つ会社員の男性(42)は「子供がいるので本当に不安」と憤った。男性の妻(41)は「原発の事故があってから公園に遊ばせに行くのを控えさせていて、そろそろ大丈夫かと思ったら…」と眉をひそめた。
2人の子供がいる看護師の女性(39)は「子供の健康が一番心配。行政には対策などを早く出してもらいたい」とため息をついた。
■ストロンチウム…ウラン核分裂時にできる放射性物質。放射線量の半減期が約29年のストロンチウム90と約50日の同89、約65日の同85などがある。カルシウムと性質が似ているため骨に蓄積しやすく、半減期の長い同90では、内部被曝(ひばく)による発がんなどの恐れがある。放出される放射線の一種「ベータ線」は測定が難しく、検査機関が限られる。