共鳴胴(波動もどき)スピーカー、共鳴胴バスレフ式スピーカー、それぞれの試聴、ダクト等のテストが終わったので、いよいよクラフトの段階に入る。 スピーカーとして完成させようということだ。
工作の内容は以下の2点となる;
1. ボイド管の外装
2. バッフル板の塗装
ボイド管
ボイド管外装には、突板を接着することにした。 突板というのは自然の丸木の外皮を、大根の桂剥きのように、薄く平らに削ったものである。 いわば、かんなくずの大きいもの。 木皮のままのものもあれば、裏に和紙を張ってあるもの、接着剤が付いていて両面テープのようになったもの、等が売られている。
今回は和紙の裏張り付のかりんとウォールナットを購入した。
ボイド管は16~7cm幅の雑板紙という種類の薄い紙を何重にもスパイラルに巻いて筒にしたものである。 各層の紙は酢酸ビニル系の接着剤で接着されている。 下の層の接合面を上の層の紙がまたぐようにして重ねて接着されている。 雑板紙というのは古紙から作られており、繊維の短いものを漉き固めたものだ。 フェルトの硬いような感じ。 くずすとボロボロになる。
ボイド管というのは生コンクリートを流し込んで円柱を作ったり、逆に丸い円筒の穴を作ったりするためのものであることから、防水処理がされている。 一番上の層には防水紙がスパイラルに接着されている。
このボイド管に突板を接着するわけであるが、一番上の防水紙(メーカーなどの文字が印刷されている)を下地にするとうまく接着できない。
接着が剥がれる・破壊されるということには以下の3種があるそうだ;
凝集破壊(cohesive failure)硬化した接着剤層が破壊する。この場合、接着剤が要求強度を満たしていない場合が多く、種類の選定または接着時の条件を適正にする必要がある。
接着破壊(interfacial failure、界面破壊)接着剤層と被着材層との境界面が破壊する。この場合、接着力そのものが不充分と考えられる。種類選定または接着条件の適正化とともに、被着材の表面状態についても考慮する必要がある。
基材破壊(adherend failure)被着材そのものが破壊する。この場合、接着剤および接着力は充分な強度を持っており、むしろ被着材の強度を検討する必要がある。
防水紙の上に接着しようとすると、上記2番目の界面破壊が起こることになる。
じゃによって、防水紙を剥がす。
防水紙はすんなり薄く剥がれる場合と、下の雑板紙もくっついてくる場合(基材破壊)とがある。
すんなり薄く剥がれる場合は、防水紙と雑板紙の間の接着剤(酢酸ビニル系)が雑板紙の上にのこった状態となり、なでてみるとロウを塗ってあるような感触である。 このロウのような層は酢酸ビニル系の接着剤を薄く塗布した層である。 上の紙の防水紙層とは接着破壊によって剥がれたわけである。
びりっと下の紙がくっついてくる場合は、防水紙と雑板紙の接着がしっかりしており、雑板紙が基材破壊を起こしたということになる。
ロウのような接着剤の層も、その上から何かを接着したとしても接着破壊が簡単に起こる。 だからこの層も剥がした上で、新たな接着をせねばならない。 どうやって剥がすか・・・
上の防水紙とは接着破壊を起こしているが、下の雑板紙とはしっかり接着しているので、剥がすとなると基材破壊、それもできるだけ薄く基材破壊をさせて剥がさねばならない。 こうだ・・・
これには方法がある。 ガムテープの接着力を利用するのだ。 剥がしたいところにガムテープを貼りつける。 そして、すね毛を剥がすが如くに、びりっとガムテープを剥がすのである。 接着剤とその下の紙の層がガムテープにくっついて剥がれる。 ガムテープは表面に近い距離で表面と並行に引くと、薄く剥がすことができる。 表面と直角くらいで引っ張ると割と多めに紙の層が剥がれてくる。
剥がし終えるとこんな風になる。 表面はざらざらの毛羽立った紙。
バッフル板を仮止めして、板とボイド管切り口を同じ面にする。 これにはよく切れるバンブーロッド用のカンナを利用した。
ボイド管切り口は、何かにぶつかったり、いじくっている間に、何度も刺激を与えると、元の紙のように柔らかくなってしまうので、木工ボンドをヘラで塗り付けて硬くしておく。 紙と紙の層の間には、隙間がある部分があるので、そこにボンドが入り込むように塗りこむ。
次は、接着剤の塗布。 突板と一緒に購入した、コニシボンドCH7という接着剤を使う。 このCH7は下地と突板の両面に塗布後、乾燥した段階で100~200度のアイロンを当てて圧着すると、プロ並みに接着できる。
まず、突板を下地の大きさにカットする。 筒の長さの両端に1㎝程度の予備を用意しておく(貼る時にずれるから)。 次に、ボイド管を突板でぐるっと巻いて、余白を1~2㎝くらい残してカットする。
ボイド管にローラーを使ってCH7を塗りつける。 できるだけ厚め(2回塗りくらい)に塗り付けた。
次に、突板にボンドCH7をローラーで塗布する。
上は乾いた状態、CH7は透明化、下は塗りたてで白い接着剤の色
しばらく置いて両者の乾燥を待つ。 乾燥するとCH7は透明になり、手で触ってもさらっとなっていれば良い。 べとつくうちに接着しようとすると、予期せぬ部分などがくっついたりして皺を作る原因になるので、乾燥した後でアイロンで接着させる。
突板にボンドCH7を塗る場合には、突板よりも大きめの段ボール板に四隅をテープで留めるなどして固定して塗ることをお勧めする。 ワシは下に新聞紙などを敷いてやったために、はみ出た接着剤が突板の表目にくっついて、それが・・・新聞紙にくっついたりして・・・ 涙
でもご安心を・・・ このCH7、水溶性なので、くっついた新聞紙などは後で唾付けてこすったらきれいに捕れました。 下手にサンドペーパーなどでごしごしやってはいけません。
では接着します。
幸い細めのボイド管があったので、それを芯にしてアイロンを当てました。
両端の余白が均等になるように突板を置きます。 貼っている間に突板がずれると、片側が足らなくなったり、接合面がずれたりしますので、重要です。
突板接合は重ね切りするので、とりあえず端から10㎝位のところにアイロンを当てて接着します。 ここはもうしっかりと筒に沿って熱着させます。 そして、中央、上端に向かって、下端に向かって、ふすま貼りで皺をのばすような感じでアイロンを滑らせます。 そして時折、筒の局面に沿って皺を伸ばすようにアイロンを滑らせます。 そうです、ふすま貼りの要領です。 刷毛の代わりにアイロンを当てるだけです。
接合面は重ねるようにして、定規を当てて、良く切れるカッターでカットします。 その後、接合面に向かってアイロンを当てます。 全体が接着できたら、念のために、今一度、反対側から接合面に向かってアイロンを横滑りさせて皺が出来ない様にします。
貼り終えたら両端の余白を良く切れる新しい刃のカッターでカットします。
かくして綺麗に突板が貼れました。
同様にして、波動もどき用のダクトの内外にも余った突板を貼っちゃいました。 芯はアルミのロッドケース。 ダクトの内側に突板を張るには、ダクト内側だけにCH7を塗り乾燥させてから、カット済み突板を丸くして入れ、アルミパイプに通してから、ダクトの外側からアイロンを当てました。 内側を接着するのに外側から熱を加えるので、かなり長い間アイロンで抑えておきます。 内側が貼れたらダクト外側にボンドを塗り、乾いてから外側の突板を貼ります。
完成した共鳴胴とダクト
かりんが波動もどきの共鳴胴、ウォールナットはバスレフの共鳴胴
波動もどき用ダクトの端っこは湾曲しているので、穴に差し込み鉛筆で淵の線をなぞり、ナイフで大まかに削った後、ボイド管にサンドペーパーを張り付けて、円周に沿ってこすりました。 同じ湾曲なので・・・
このダクトの入口カーブには、網戸の留めゴムを切り開いて接着してリムを付けました。
次回はバッフル板の塗装です。
問い合わせが多いのでここでご紹介しておきます。 URLを入れるとこのブログエラーになるのでご自分で検索してください。
突板購入先: 価格がリーズナブルで突板の種類が多いです。 親切丁寧な対応をしてくれます。 ここで使用したコニシボンドCH7はプロが使う接着剤で一般には市販されていませんが、小分けしてくれます。
木工・木材素材の通信販売/DIY銘木ショップ 府中家具 (広島県府中市)