本家ヤースケ伝

年取ってから困ること、考えること、興味を惹かれること・・の総集編だろうか。

事実ということ。

2006-12-19 11:40:19 | 社会
*写真は「あいりん労働公共職業安定所」の昼の顔である。ここの周囲にぐるりと毎夕、一夜の仮眠ベッドを求める人々の、凡そ千人の行列が出来る。

*(あちゃ~っ。間違えて「下書き」を押すのを忘れた。笑)
 土曜夜心斎橋筋へ行って、長堀通り交差点で数枚のダンボールを小脇に抱えた老人を見掛けた。横断途中の緑地帯で、彼は殊更植え込みの方へ身を避けていた。交差点の夜景を撮っていた私は急遽彼に目標を絞った。彼がこの夜は心斎橋筋のアーケードの一角で寝るだろうことは容易に推測出来たから、webに公開するしないは別としても、一応の区切りが付くまではビデオで追うことにしたのだ。

 彼はやはり御堂筋からは外れて一筋東側の心斎橋筋商店街に入り、そこをずんずん北へ進んで、大きなボーリングのピンが飾ってある場所に荷物を置いた。時刻は午後8時くらいだったろうか、まだまだ人通りの多い時間帯だった。もっと北へ行って中央大通りの手前の「船場」あたりまで行けば、土曜夜の心斎橋筋とは言え人通りは少なくなるのだが、彼の定位置はそのボーリング場(?)周辺の様子だった。

「おっちゃん、今夜はここへ寝るんか?」と私は声をかけた。彼はボーリング場の斜向かいの宝飾店(?)をずっと気にしていて、「ここだ」と言ったが店はまだシャッターを降ろしていなかった。
「あんた歩くの早いなあ!さっきからずっと追いかけて来たんや」と私は笑いながら言った。
「見て回ってるんか?」と彼は言った。この時期はボランティア団体の人たちも夜一人一人見回って声をかけている筈である。
「そういうわけではないけど」と私は否定し、
「街のあちこちのビデオ撮ってるんや」と答えた。次いで、
「おっちゃん、金あるんか?」とずばり訊いた。
「今日は無い。一銭も無い」と彼はすぐ答えた。
「アルミやダンボール集めてるんか?」
「わしはせん。今はしてへん」
「ほな、食べ物とかはどないしてるん?」
「ローソンや。3時に起きて行くんや。幾らも寝られへん」

 コンビニが賞味期限切れの弁当やサンドイッチを即廃棄処分していることはよく知られている。これらを捨てるのは深夜番の店員の主要な業務の一つである。店側は迷惑がるが、捨てられた食品類はこの季節だから充分に食用に適う。これを回収して商売にしている人達も釜ヶ崎では散見される。早朝のセンター横通称「ドロボー市」では弁当もパンもドーナツもおにぎりも、一律百円で売られている。

 このおっちゃんが回収を生業にしているかどうかはわからなかった。「早く行かないといけない」と繰返すので、「誰か他の人が持って行ってしまうのか?」と訊いたら「誰も来ないが清掃車が来る」という答えだった。

 おっちゃんは「人が寝ているのにシャッターをガラガラ鳴らす奴がいる」と苦情を言った。寝入り端にそれをやられると相当堪えるらしい。私は店員が嫌がらせでやるのかと一瞬思ったが、店の人はシャッターを閉じて帰ってしまうわけだから、通行中の酔っ払いがふざけて彼の安眠を妨害するのだろう。

 私は「後でまた寄るから」と言ってその場を去り、一、二時間してから戻ってみると、おっちゃんはすっぽりダンボールハウスの中に身を隠して寝ていた。例によって手元不如意の私は極く僅かの小銭を彼の枕元に置いて帰途に就いた。

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*私は事実を撮っている。創作映像ではないから演出も作為もないライヴ映像である。そうは言っても、それは私が選んだ対象を、私の選んだ位置から、私の選んだアングルで撮影しているわけだから、そこに私の意図・演出や作為・狙いは当然紛れ込んで来る。メディアの流す映像だって同じことだ。NHKやTBSは「やらせ」も過去やっている。
 (後註:ビデオ「1,000人の行列」は漸く「1回」再生されました。最近では地下鉄御堂筋線が駅に到着する模様を撮ったビデオが既に100回近く再生されていますが、これは私としては新しい試みだとしても、既に同じ趣向の大阪発のビデオが数百回再生されているので何ら新味はない筈で、それを思うと一つのビデオが千単位、万単位で再生されない限り「ヒットした」とは言えないような気がします。)

つまりですね、何を言いたいかと言うと、事実そのものよりも、事実を隠蔽しようと企むことの方が余程恥ずかしいということなのです。大阪市の実情が恥ずかしいのではなく、それを諸外国の人々の目に触れさせないよう腐心している馬鹿どもは、どこかの国の将軍様と同等、もしくはそれ以上に腐り切った精神構造をしているのだ。


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