あっけない。
まだ、若い。
正統派なのに、気取りなく、庶民的な風貌がこの国の愛らしさと合間り、短くも美しく燃えた人生だったのではないでしょうか。
とても怖いお客様でした。
しかし、ほんの一瞬、育てていただいた言葉を思い出します。
扉を開き、開口一番。
「姐さん、観てくれたね。いい席座ってたね。」
私は、返答に困った。
何でもポンポン宣うのだが、絶句してしまった。
本当のプロフェッショナルなんだと、思った。
演じながら、客までチェックする余裕さは、あっぱれで、ましてや、1週間経たない間にお越しになり、私ごとき使用人にも話かける気さくさ。
しかし、私は怖かった。
飲んでも、酔わない姿に、益々、冴え渡る眼に。
今にしきる子と名付けて下さいましたっけ。
その時だけ、ほんの一瞬近くに感じました。
それも、いい思い出です。
ご冥福をお祈りします。