関連ブログ記事・・・2024/3/26付「神戸空港島に登場した「フェリーありかわ」の正体について <追記あり>」
上記ブログ記事に書いたとおり、佐世保港~有川港(新上五島町)間で高速船と旅客フェリーを運航していた株式会社五島産業汽船(以下旧社)が経営破綻により2018/10/2に全航路を突然運休とし、うち高速船航路についてのみ同社の元従業員が新たに立ち上げた五島産業汽船株式会社(以下新社)が再開し現在に至っています。ただ、新社の航路は2018/10/19に運航を開始した「長崎港~鯛の浦港(新上五島町)間」であり、旧社の航路とは大きく異なります。
https://www.goto-sangyo.co.jp/line/line01/
その新社の航路が、再び存続の危機に陥っている旨の記事が長崎のマスメディアで報道されています。
利用伸び悩み赤字運航 長崎-新上五島町・鯛ノ浦の運航困難 五島産業汽船 (長崎新聞2024/9/13付)
五島産業汽船 長崎上五島航路の運航継続困難 町は船の廃止か新たな指定管理者を探す (テレビ長崎2024/9/13付)
長崎ー上五島を結ぶ五島産業汽船 航路存続に揺れるも10月はダイヤ維持 (テレビ長崎2024/9/18付)
最大のポイントは「長崎港~鯛の浦港の航路で使用する船舶が2024/4から変わったこと」なので、その背景を調べてみました。
この航路はもともと300人乗りの「びっぐあーす」と79人乗りの「Vアイランド」の2隻で運航していました。いずれも経営破綻した旧社が所有・運航していたものですが、後者が新社の所有(旧社から直接購入、旧社時代の船名は「ありかわ8号」)なのに対し、前者は新上五島町が旧社から買い取っており、町が指定管理者に選定した新社がこの航路に就役させています。ちなみに「びっぐあーす」は2000年~2006年の間旧社が大阪港・神戸港と小豆島・高松を結ぶ高速船航路に就役させていました。
しかし、新社は2023/12/1付で「びっぐあーす」と同タイプでやはり新上五島町が所有する「びっぐあーす2号」の指定管理者<期間5年>に選定され、2024/3/中旬から長崎港~鯛の浦港の航路に「Vアイランド」に代わり就役させる旨を公表しました。
https://www.goto-sangyo.co.jp/blog/9717/
実際に「びっぐあーす2号」が就役したのは2024/4/8ですが、
https://www.goto-sangyo.co.jp/blog/9774/
これに伴い(2隻とも新上五島町有となったことから)新上五島町民が乗船する場合に適用される燃料油価格変動調整金が2024/4/1から大幅に引き下げられ、島民運賃は片道で3790円→2800円、往復で7330円→5350円と25%以上の値下げとなっています。一方、島民以外の運賃は片道6520円・往復11730円(2024/7~10の間適用)なので、島民の倍以上の負担となっています。上記長崎新聞の記事で「町によると同月以降、町民の利用は増えたが島外からの利用が伸びず」とあるのは、この運賃施策の効果であることは明白ですね。
その「びっぐあーす2号」はもともと旧社のもので<小豆島・高松航路での運航歴もあり>で、「びっぐあーす」と同時に新上五島町が旧社から買い取りましたが、指定管理者には五島列島発着航路の最大手である九州商船が選定され、佐世保~上五島の高速船航路に同社保有の「シークイーン」(140人乗り)とともに就航していました。
しかし、九州商船は2023/11限りで同船の指定管理者を返上することとなり・・・経緯は下記URLの内容をご覧ください(注)
https://kyusho.co.jp/publics/index/1/detail=1/b_id=1/r_id=388/sp_ssid=2
2023/12/1以降の佐世保~上五島の高速船航路は「シークイーン」と「シーエンジェル」(シークイーンと同タイプ)の2隻体制に変わり、1日あたりの輸送力は3分の2に減じています。
https://kyusho.co.jp/publics/index/1/detail=1/b_id=1/r_id=381/sp_ssid=2
(注)この中で言及されている、令和5年10月の新上五島町の広報誌に掲載されたというお知らせとお詫びは、このブログ記事を書いている時点で新上五島町公式サイトで公開されている「広報しんかみごとう2023年10月号」内には見当たりません。
<10/30追記>
五島産業汽船では、この現状を鑑みて9月中旬より航路存続のためのクラウドファンディングを行っていましたが、期限の10月31日の直前にめでたく2000万円の目標を達成しました。
https://readyfor.jp/projects/goto-sangyo
また、上記で紹介した九州商船公式サイトにおける「びっぐあーす2号」の指定管理者返上の経緯に関する記事(新上五島町側の五島産業汽船との対応の違いがポイントでした)は、既に削除されています。