竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

グリ-ンニューディールと新アポロ計画

2008年11月16日 | ビジネス
アメリカに新大統領が誕生した。47歳のバラク・オバマである。世界中の多くの人が待ち望んだ「ブッシュでない」大統領。
しかし、1年近くの予備選挙、本選挙を通じて、まったく無名に近かったオバマが、民主党の大統領候補者となり、本選挙での激戦を制しての勝利は、単に「チェンジ」のかけ声だけではなく、多くの人がそれを望み動いたその結果であることを、世界中の人に追体験をさせたのではないだろうか。

1年前には、ほとんどの人がヒラリー・クリントンが次の大統領になると思っていただろう。政治経験とりわけ医療制度改革をはじめとする内政ではヒラリーの方がはるかに経験豊富である。オバマは内政においても外交においても、金融経済政策においても未知だった。その彼がアメリカ国民の多くに信頼され支持されるようになった一番のポイントは、「常に落ち着き失敗をしなかった」ということではないだろうか。

ヒラリーもマケインも、焦りからオバマを激しく攻撃し、それが逆に反感も招いた。オバマは誰も攻撃せず、対立するものが手を携えなければならないと説いた。アフリカンであることを強調せず、白人も黒人もともに手をつながなければならないと説いた。「あせらず、あわてず、あきらめず!」というのは誰かさんのスローガンであるが、それを着実に誠実に実行していたら、最後に残った!ということである。

そのオバマ、今度は大統領として実際に未曾有の金融危機、イラクやアフガニスタンとの戦争、そして地球温暖化問題をはじめとする国際課題に対処しなければならない。その「解決策」と目されるのが、表題のグリ-ンニューディール政策と新アポロ計画である。

マネーは常に投資先を求めて動くアメーバーのようなものである。自己増殖の味を覚えてしまい、常に美味しそうなところへとこのモンスターは食指をのばす。しかしまだあまり利口ではなく、往々にしてサブプライムローンのような粗悪な素材に手を出し、大やけどをして収縮する。かつての日本の不動産バブルも、エンロンのような粉飾事業拡大も、石油への投資急拡大もこのようなものだったろう。

今後も中国への過剰投資集中や原発への過大な期待、石油資源採掘投資への大きな流れなど、危険なにおいのするものが数々ある。マネーは甘ければすぐに吸い寄せられ、それが毒か栄養か分別がつかない。その分別をつけるべきとの動きが、いま国際的にもローカルのレベルでもはじまっている。

国際的には世界の金融機関に対して投資先を選べという指針が出されようとしているし、ローカルのレベルでは市民出資のように投資先が明確な資金運用が現れはじめている。そして、このどちらもが向かっている先が「環境」「地球温暖化」「自然エネルギー」である。

石油への投資はそれ自身が利権をめぐって戦争に直結している。イラク戦争もアフガニスタン攻撃も、その背景には石油利権がちらついているし、ベラルーシやオセチアの紛争もそうである。原子力は核兵器と不可分である。所詮、平和的には採算が合うものではない原子力を核廃棄物の処理や事故の被害想定を低く見積もらせ、日本では地震が起きる活断層まで消させて原発立地をさせてきた。日本が核武装するというわけではないが、少なくともそのオプションを手放さない結果が、原子力が地震で止まり石油と石炭に頼らざるを得ず・・という、いまの日本の情けないエネルギー事情を生んでいる。

オバマは「ニューエナジーフォーアメリカ」というエネルギー政策をかかげている。この政策はクリーンエネルギーへの投資を今後10年で1500億ドル(約15兆円)行い、500万人の雇用を生み出し、2012年までに自然エネルギーによる電気の割合を10%に,2025年にはさらに25%にし、温室効果ガスは2050年までに1990年比で80%削減するというものだ。

この政策の背景には、サンフランシスコを本拠としたアポロ同盟の「新アポロ計画」があるようだ。今後10年間で500億ドルをクリーンエネルギーに投資して500万人の雇用を生み出すことを提唱している。

これらの情報は、下記の日経エコロミー、飯田哲也(環境エネルギー政策研究所代表)の記事に詳しい。
http://eco.nikkei.co.jp/column/iida/article.aspx?id=MMECcm000010112008

この記事では、金融危機への対処としても、英国に本拠を置く「グリーン・ニューディール」グループが自然エネルギーへの投資で危機を乗り切ることを提言していることが紹介されている。国際エネルギー機関(IEA)も先のレポートで、地球温暖化に対処するために2050年までに温室効果ガスを半減するために45兆ドル(約4500兆円)もの投資を行うべしとの空前の「グローバル革命」を提唱したとされる。

オバマのエネルギー政策には、すでにこれらが反映されており、これから本当に世界的な「チェンジ」が到来しそうな気配となってきた。
世界のエネルギー政策を変えて、地球温暖化をストップできるか?Yes,We can!と行きたいものである。




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