竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

バイオガソリンと戦後補償裁判

2007年04月28日 | Weblog

アメリカでブッシュ大統領と安倍総理が会っていますが、これは出来レースで世界を動かすような要素は何もありません。そこでなんでこの取り合わせという二つのテーマです。世界への影響はこの二つの方が大きいと思いますので。

まずは日本への強制連行と従軍慰安婦の被害者が起こした裁判の最高裁判決。日米首脳会談のその日に棄却で被害者側の敗訴を確定させました。敗訴といっても、安倍総理のように強制連行はなかったとか従軍慰安婦は存在しなかったという判決ではありません。「1972年の日中共同声明で、中国人個人の戦争賠償請求権が放棄された」からというのが、判決理由です。

それ以前に戦後すぐのサンフランシスコ講和条約において、戦勝国と敗戦国双方ともにその損害賠償請求権を放棄するというのがあって、中国はこれに参加していなかったが、1972年の日中共同声明で同趣旨の相互放棄を行ったという解釈です。

これは、ずっと日本政府が強制連行や従軍慰安婦裁判で使ってきたロジックです。戦争被害者個人は、本人に何の確認もなくサンフランシスコ講和や日中共同声明で賠償請求権を放棄させられた・・というわけです。こんな論理が通用するのでしょうか?

従軍慰安婦は日本軍の強制ではなかったと主張した安倍総理に対して、米政府ですら難色を示し、米議会では非難決議まで用意されました。国家と国家の論理という大前提を置きながらも、人生をメチャメチャにされる人道被害を受けながら戦後60年間、何の謝罪も補償も受けることなく放置されてきた人々に対して、国家として「何かをしなければならない」と考えるのが当然ではないでしょうか?

たとえば北朝鮮の拉致問題です。実態とは別に、国際法的には朝鮮戦争はまだ終わっておらず、拉致は日朝間の戦争状態において、戦略的に引き起こされたことであり、戦争終結の講和の再にすべての賠償請求権は放棄しましょうとなった場合に、拉致被害者の方々は北朝鮮にも日本政府にも何の要求も出来なくなるというのが、今回の最高裁判決の意味です。

個人が受けた痛みを、その加害者に対して、もっときちんと裁くべきではないでしょうか?

ドイツがイスラエルに対して「賠償」をし、日本は中国にも韓国にも、東南アジア各国にも、サンフランシスコ条約をタテに「賠償」をしないというという外交方針のために、賠償額以上の開発援助という名目のお金を使っているのかもしれませんが、世界からはいまだ「戦後」を引きずっている国と見られています。戦後補償問題についてはドイツも日本も似たりよったりであるにもかかわらずです。

今度の最高裁判決は、その「世界からの孤立」をさらに深めるものとなるでしょう。首相訪米中にまさに非難の矢面に安倍総理が立たされるような判決を出すとは、最高裁もタイミングを見計らったものだなあと思います。

さて「世界からの孤立」を選択する戦後補償とはまったく逆に、「世界への追随」はバイオガソリンです。正しくは「アメリカへの追随」というべきかもしれませんが・・。

エネルギー問題の世界でも、このバイオガソリンへの評価は分かれるものと思います。トウモロコシやサトウキビからバイオエタノールを作り、それを3%加えたガソリンがバイオガソリンです。97%は従来のガソリンですので、石油業界の仕組みを壊さないで3%のCO2削減ができるわけですから、既得権益を持っている人には、きわめて優れた地球温暖化対策と移るでしょう。

日本がめざさなければならないのは3%ではなく、京都議定書に定められた6%+1990年比で増えている8%の計14%なのですが・・。

しかもバイオエタノールは100%海外からの輸入で、その輸送にかかる環境負荷を考えると、果たしてCO2削減になるのか・・とかなり鈍感なマスコミからさえ指摘される始末です。実はコストも高くリッター10円ぐらいを税金投入でカバーしているといいます。

年間のガソリン消費量は6000万klで、政府としては2030年までにこの1割、600万klをバイオガソリンに換えるというロードマップを作成しているようだ。ずっと輸入が続くと、最大600億円の税金をつぎ込むことになります。需要の増大でサトウキビやトウモロコシ価格が上がれば、投入する税金はもっと大きくなるでしょう。このシステムの欠陥は、普及すればするほどコストが上がることです。

世界のサトウキビやトウモロコシを日本で使うエネルギーに換えるということは、それ自体が他国の資源搾取で、石油の構図と同じですし、よく言われているように食糧の需給バランスが壊れ、それが思わぬところに影響してきます。すでにオレンジジュース価格が高騰しているという話ですが、やがて牛乳や食肉、豆腐や醤油にまで影響してくるでしょう。

こうして我慢して努力しても、それが生み出すCO2削減効果はガソリンの3%の1割、0.3%に過ぎませんし、日本の全体の排出量12億トンに比べると微々たるものに過ぎません。まだ、同額程度の税金投入で、太陽光発電の普及目標(2010年に500万kWでしたが、ほとんど放棄されています)を達成させた方が、総量に対する1%以上の効果はあると思われます。

輸入はダメだけれど、日本国内の資源を使ったバイオエタノールの生産は大いにやるべきだと思います。その一番の資源は「竹」だろうと思います。実用化までには、まだまだ時間がかかると思いますが、放っておいたらどんどん繁殖していきますし、全国で竹による森林侵食被害の声を聞きます。困り者の「竹」をエネルギーに変えてはいかがでしょうか?しかし、広大な畑を占領する菜の花やサトウキビについては政府支援もあるようですが、「竹」はノーマークのようです。

現在のバイオガソリン騒ぎは、これを推進している石油連盟の「得点稼ぎ」=「責任逃れ」のように見えてなりません。

竹の面白いページを発見しましたので貼り付けます。

http://akibamboo.at.webry.info/

(内容精査したわけではないので、内容すべてに関しては当方での責任は負いかねますのでご容赦ください。)

タケエタノールについては、東京農業大学や京都精華大学でも研究開発が行われていたように思います。



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