12月3日のブログで、防衛庁が省になっても実態はそんなに変わらない・・と書きました。ところが「世界」1月号の前田哲夫さんの「自衛隊法改正が導く自衛隊の変質」を読むと、とんでもない甘い認識であったことを教えられました。主要任務が変わったのです。国土防衛から海外活動へと。つまり海外派兵の恒久化が真の目的だったのです。年の終わりに、反省をこめつつ、報告します。
防衛省昇格法案には自衛隊法改正案がくっついていました。改正のポイントは3条です。自衛隊の任務が規定されています。これまでは「直接侵略及び間接侵略に対し、わが国を防衛することを主たる任務とする」と規定されていただけでした。憲法第9条の戦力不保持という枠の中で、必要最小限度の国土防衛のための「実力」にとどめるという規定になっていたわけです。
ではPKOやイラクへの海外派兵はどういう法的根拠で行われていたのでしょう。3条にはその根拠はありませんでした。実は100条、「雑則」だったのです。もともと100条は、「土木事業の受託」のみしか持たない条項だったといいます。自衛隊の本来任務に支障を生じない限度において行われる「民間サービス業務」です。ところが1990年代に入ってから、自衛隊が海外で行う活動が「雑則」とその付則に追加されるようになりました。
100条の6 国際緊急活動
100条の7 国際平和協力業務の実施
100条の8 在外邦人等の輸送
100条の9 「周辺事態法」にもとづく後方地域支援
100条の10 同じく「周辺事態法」にもとづく合衆国軍隊に対する物品または役務の提供
付則17 「テロ特措法」にもとづく支援活動、物品の提供
付則19 「イラク特措法」にもとづく人道復興支援活動
前田さんは、まさに「雑則の行列」と書いています。自衛隊は3条ではなく100条によって立つ組織となったと。自衛隊の任務は憲法ばかりでなく自衛隊法にさえそむいて、自衛官は「宣誓」や「心構え」にない任務に「身を挺する」ことになった・・と。
今回の「改正」は、3条に第2項を新設し、そこに100条の大半を引越しさせるというものだったのです。つまり、100条任務に「正当性」を与える改正であったわけです。前田さんは、これを憲法第9条に対する自衛隊法の下克上、実質的な第9条への「絶縁宣言」と説明しています。これまでの「専守防衛」や「個別的自衛権」は死語となる・・とも。
今後は、これをステップとして、海外派兵のための「恒久法」へとすすむとも予言されています。これほど劇的な大「改正」を、私も見逃していたわけですが、いまだに新聞・テレビの情報としては流されていないのではないかと思います。実質的な「憲法の抹殺」がはじまっています。
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