昨夜、我が家は大変でした。夕食を摂っている時です。「何だか煙臭い」と思っていました。その内、雪の様な灰が降り出したのです。我が家から北側の牧場のあたりから出火したらしく、煙が上がっています。かなり離れていましたので、それ程は心配ではなかったのですが、炎も見えています。
牧場が燃えているのが見えるが、かなり距離は離れている。(我が家のベランダから撮影)
やがて消防車のサイレンです。これで安心と思って高峰の見物をしていました。でも風の強さは尋常ではありません。窓ガラスを叩く音は台風並みです。そしてこちらがまともに風下に当たります。その内、あちこちに飛び火しているのも見えました。ホテルからは宿泊客が走り出てきています。炎が丘を駆け上ってきている様です。
お向かいのお屋敷に入り込んで消火活動を始めようとする消防車。かなり煙が立ち込めている。(アトリエから撮影)
我が家の前にも消防車が2台とパトカーも1台やってきました。ホテルの裏に回って消火活動が始まりましたが、ますます火は勢いを増しています。我が家の窓に当たる灰も白いのではなくもっと大きな黒いのが大量に当たる様になりました。警察は規制線を張っていますが、我が家の建物の前は人々でごった返しています。
婦人警官がお向かいのお屋敷のドアを叩いています。避難を呼びかけようと思ったのでしょう。でもお留守の様でした。男たち5~6人がお屋敷に走りこみました。物置小屋を開けようとしましたが鍵がかかっています。窓をこじ開け、窓から侵入し、ホースを取り出しました。そして裏の方に放水している様子ですがここからは見えません。
若者が走り出し、黄色い叫び声を上げました。どこかに飛び火した様です。裏の松の木を見ても大丈夫でした。北東側のお隣の間の灌木に火が付いた様で、そこから煙が立ち始めました。
マンションのお向かいが我が家をノックして「避難した方がよいよ~」と促してくれました。その前から、昨年の教訓から服を着替えて靴を履き、貴重品の入ったリュックを担いでいました。避難しようと思いましたが、避難する前にベランダから風呂桶に貯めておいた水をバケツに汲んで、5杯も6杯も放り掛けました。灌木の火は消えた様でした。下に居た若者にもどっぷりと水は掛りましたが、若者は「良くやった~」と言わんばかりに白い歯を見せ親指を立てました。
それからクルマで非難しました。マンションの住民は既に全員が避難を終えている様でした。家は燃えてしまうかも知れないという不安は残りました。でも命はこれで大丈夫です。
町に降りていくとあちこちで交通規制がされていました。町の中心のボンフィム公園に行きクルマを止めておいて我が家が見える別の水道橋の公園のところまで歩いて行きました。そこには火事を見ている家族づれが何組もいました。我が家がシルエットになって黒々と見えます。
公園から見たホテル(右)と我が家のマンション(中央)(水道橋のある公園から撮影)
我が家の下の方にも飛び火して炎が大きくなるのが見えた時、家は駄目かも知れないと思いました。でもやがて一瞬に消えるのが見えました。消防士が気づいて消火したのでしょう。
かなりの時間、その場所で見ていましたが、小水がしたくなったので、カフェに入りました。カフェのテレビがその火事の模様を臨時ニュースで伝えていました。野次馬だと思っていた住民たちが、消防士の指示でホースを運んだり、はしごを運んだりとボランティア活動をしているのが映像にありました。でも映像は同じものを繰り返すばかりでした。カフェのテレビと後ろを向けば実際の黒々とした煙が同時に見えます。カフェでコーヒーを飲み、小水をして再び我が家が見える場所まで戻りました。
既に火事を見ている人は1人だけになっていました。煙も幾分少なくなってかなり収まったと思ったので帰ろうと思いクルマに乗って帰ろうとしました。でも家の近くには交通規制がまだされていて、近づけませんでした。先程の公園は薄暗いのでもっと明るい港近くまで行って交通規制がなくなるまで待機していようと思いましたが、今夜は規制が取れないかも知れないと思い直し、その港の前にあるホテルに部屋を取ることにしました。
私たちの前にも3人の家族連れがチェクインしていましたが、部屋着のままで、荷物も何も持っていませんでしたから、恐らく避難して来た家族なのでしょう。
部屋に入ってみると南向きの港の見える部屋です。普段なら1番良い部屋なのでしょう。でもすぐにフロントに引き返し「反対側の部屋に替えてください」と言いました。最初は「もう満室でありません」と言っていましたが、「私たちの家のすぐ側が火事で部屋からその様子を見たいのです」というと、もっと上階の北側の部屋に替えてくれました。我が家は角度が少し違い直接は見えなかったけれど煙がもうもうと上がっているのが見えました。まだまだ鎮火には時間がかかりそうだと思いました。拙速にホテルを取ることにして良かったなと思いました。
真夜中のニュースでもセトゥーバルの火事は取り上げられていましたが、昨夜は全国で10か所の山火事だそうです。その夜はぐっすりと眠りました。気疲れがあったのでしょう。朝は起き辛かったです。
朝にもうっすらと煙は上がっていました。ホテルは朝食付きなので、7時半からゆっくりと朝食を摂りました。でも早く帰って確かめてみたい気持ちがありましたので、すぐにホテルを出ました。ホテルは12時まで使える筈ですので、チェックアウトをする時に、「もし規制線が張られていて帰れなかったら戻って来て12時まで部屋を使って良いですか」というと「13時まででも良いですよ~」と言ってくれました。
家にはすんなりと帰ることが出来ました。マンションの住民は未だ誰も戻ってきていない様子でした。屋内の筈の階段にも灰が一杯積もっていました。ベランダにも一杯です。ベランダを掃除していると我が家から見える空き地で煙が少し上がっているのが見えました。これは自分で消火した方が早いな。と思いましたが、我が家からは断崖になっていて直接行くことは出来ません。6リッターの水タンクを2人で4本階段を持って下り、クルマに乗せて、大回りしてその場所に行きました。煙が上がっているのは、昨夜、下の公園から見ている時に燃え上がって、一瞬に消火された場所だと思いました。その煙に6リッターの水4本、合計24リッターを全部撒きましたが一向に煙は消えません。
家に戻って再びベランダから様子を見ていましたが煙は同様です。きょうは風は穏やかですが、強風が吹くとまた火が付くかも知れません。ホテルの先の牧場でも煙はあちこちで未だ上がっています。ヘリコプターが何回も何回もサド湾の水を汲み上げては消火活動をしています。ホテルには消防士の姿も見えました。テレビが消防士に取材をしていました。ホテルに行ってみると、そのあたりは真っ黒です。ホテルのすぐ側まで火が迫っていたのが判りました。そしてお向かいのお屋敷の垣根が少し燃えた後がありました。昨夜、お屋敷に侵入した男たちがこれを消火したのだと判りました。消防士に我が家の下の煙のことを言ってみることにしました。テレビ局は目の色を変え「火は大きいのか」と私に聞きました。「いや煙がほんの少しです」と言うと、テレビ局は興味を失ったようでした。
でも消防士は3人が小さな消防自動車に乗りすぐに出動してくれました。我が家の前でガレージへ入る道に入ろうとするので、「ちがう、ちがう」と言って「大回りしなければ」と言いました。そして私も道案内するために消防自動車に乗り込みました。現場まで案内すると煙はかなり少なくなっていました。消防士は「これかね」と言いながら大きな岩を靴でどかして土を踏み固めました。そうすると煙はすぐに消えました。ああそうか、水を掛けるばかりではなく、土を踏み固めれば良いのだ。と思いました。
その後、午後からはやはり風が強く吹き始めました。我が家の西の方で又、煙が上がりました。風向きは我が家とは違う方向なのでその煙は心配ではありませんでした。消防車がすぐにやってきましたが、煙はますます大きくなり、炎まで見え始めました。一旦、消火したと思ってもなかなか完全に鎮火は難しいものです。消防車が次々にやってきます。ヘリコプターも又、出動です。
消火活動をするヘリコプター。散水を終えてサド湾に水を汲みに行く途中。町の中心と下はボンフィムサッカー場。(我が家のベランダから撮影)
火事場とサド湾を何度も何度も往復しては水を撒いていましたが、なかなか消えるものではありません。ようやく鎮火したのは夕方近くなってからです。
私たちにとっては、昨年に引き続いて命が縮まった一日でした。VIT