武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

089. バービーの下敷き -Barbie-

2018-12-19 | 独言(ひとりごと)

 下敷きを買いたいと思って大型スーパーに出掛けた。鉛筆で字を書くときにノートの間に挟むあのセルロイドの下敷きだ。いやセルロイドなどとは大昔のはなしで今ではプラスティックなのだろう。

 大型店の文房具売り場を探してみたが見当たらない。
 ポルトガルの子供は下敷きを使わないのだろうか?鉛筆は売られているから鉛筆は使うのだろう。消しゴムも売られている。でも鉛筆よりボールペンを使うことが多くなってきているのかも知れない。ボールペンなら下敷きはあまり必要がない。勿論、文房具専門店にでも行けばあるのだろうが…。

 実は鉛筆でスケッチをするのに、このところ鉛筆の乗りが悪いと感じていた。紙質によっては鉛筆の乗りが異なる。紙はいくつも使ってみて自分にあった紙質のものをいつも購入して使っている。だから以前と同じお気に入りの紙で、しかも同じ鉛筆を使っているのに……。 

 これは湿度が関係する。

 ポルトガルの冬は雨季で湿度が高い。日本とは逆の現象だ。湿度が高いと鉛筆の乗りが悪い。乗りが悪いと余計な力を入れようとする。そうすると自分の線とは違う線が出たりもするから思うようなスケッチができない。少々大げさに聞こえるが案外と微妙な物なのである。

 スケッチをするのは乾燥している季節に限る。などとは言っておれない。描きたい時に描かなければならないのだ。時期を逃せば気は失せてしまいかねない。晴耕雨読などと呑気なことは言っておれない。

 雪景色を描くには雪の中にイーゼルを立てなければならないだろうし、雨模様を描きたいなら傘を差してまでスケッチブックを広げなければならないのだ。
 いや、安藤広重でもあるまいし、ゴッホでもない。そんな崇高なことは考えてはいない。
 只、鉛筆の乗りが悪いのを克服したいだけなのだ。スケッチブックの間に下敷きを敷けば解決できるだろうと考えただけの話なのだ。

 ところがその下敷きが見当たらない。だいたいポルトガル語の辞書を調べても下敷きに該当する単語が見つからない。

 大型スーパーの一角で1ユーロ・コーナーが特設されていた。日曜大工道具、台所雑貨、ペット用品そして文房具。もしかしたらと思ったが下敷きはなかった。

 でもMUZが良いものを見つけてきた。「これ、ええんとちゃう~」
 それはファイルブックである。A4サイズの書類をファイルできるファイルブックだが、表紙が分厚くて硬いプラスティック。この表紙を切り外せば立派な下敷きとして使えると言うのだ。
 色はピンク色しかない。表にはバービーが印刷されている。まさか僕がバービーグッズを買おうとは思わなかったがこれしかないので仕方がない。

 買って帰って表紙をカッターナイフで切り外した。表紙を外したファイルブックはそのままファイルブックとして利用できる。

 表紙をスケッチブックの下敷きとして使い始めたがこれがすこぶる具合が良い。それ程力を入れなくても鉛筆の乗りが良くなった。下敷きがあるとなしでは格段の差がある。すらすらと自分の線が引ける。お陰で乾季と同様の描き心地が得られた。

 スケッチブックの周りから少しはみ出したピンク色が最初は気になったがそのうち慣れるだろうと思っていたが…使えば使うほど、ますます気になりだした。
 描き終わって次に下敷きを移し替える時にはバービーが「ハロー」と微笑む。何だか照れくさくもある。 VIT


バービーの下敷き

 

(この文は2011年2月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)

 

 

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