・・・略・・・
誰かが自分たちの仮説の欠陥を指摘するだろうと彼らは半ば予期していた。
だが その心配は杞憂に終わった。
科学界は彼らの考えを支障なく受け入れた。
彼らの考えには反論に詰まるような明らかな欠陥はなかった。
まちがっていると納得いく根拠を示せる者は 誰一人いなかった。
一方で マスコミは彼らの仮説を 世界が直面する危機へと変身させた。
シャープたちの慎重で地道な いかにも科学者らしい努力は
迫りくる人類滅亡の悲劇へと変身させられたのだ。
女性ホルモン エストロゲンは人類の敵とみなされた。
そして 人類すべてがさらされている 謎のエストロゲンの正体を
突きとめる競争が始まった。
第3章 エストロゲンの大海
・・・略・・・
「サリドマイドの悲劇は 侵されざる子宮という安らかな幻想を
一瞬にして打ち砕いた」とマクラクランは回想する。
この薬剤は1950年代から60年代初期にかけて
鎮痛・睡眠剤として 妊婦に処方された。
その結果 胎内でサリドマイドにさらされて生まれてきた子供たちに
心臓障害や 手足がない無肢症 異常に短いあざらし肢症が発生した。
被害者の赤ん坊や子供たちの写真が
医学の思い上がりを(読めないので省略)する生き証人として
何か月もの間さまざまな雑誌の巻頭に載った。
当時 若きマクラクランは科学の道を歩き始めたばかりだったが
この悲劇は彼にとって 異物である化学物質が
発生中の胎児へ与える影響について
人々に先んじて関心を持つきっかけとなった。
・・・省略・・・
研究所の赤レンガ造りの大きな建物は 人通りのない道の
奥まった場所に 森に抱かれてひっそりと建っていた。
マツなどのさまざまな針葉樹の森が見渡す限り広がっている。
建物の窓は南部の夏の強い日差しを避ける曇りガラスだ。
裏手には 一目で人工と解る湖がある。
正面入り口のアメリカ国旗が目についた。
マクラクランは ここに自分の研究室を与えられ
すぐさま独自の研究科チームを編成した。
最初に雇った細胞学者のレサ・ニューボールドは病理学の専門家
チームの初の博士号を持つ研究員は ケネス・コーラックだった。
このチームの共同研究はこの後22年も続き 大成功をおさめた。
loumargi:
Wilgelm List.
4 weeks ago / 905 notes / Source: loumargi
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