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第8章 暴露ルート
研究の最前線にいる科学者たちの前に 人間の暴露量の評価は大きな壁として立ちはだかった。
「日常使われている合成化学物質は10万種以上もあり 今現在も年々増加しています」と
ジョン・サンプター教授は説明する。
「私たちはそのうちいくつがエストロゲン活性を持つか ということさえ知りません。
当然 暴露ルートを知ることもまた困難です。
化学物質の影響で川に住む魚に雌雄同体のものが発生していることから
まず最初に 飲み水に注目しました。
ところが 最近になって 予想以上に数多くの化学物質に
エストロゲン活性があることが発見されたため
潜在的な暴露ルートははるかに広範囲に存在することが明らかになりました。
揮発性の化学物質の場合 呼吸する空気を通じて暴露します。
農薬などは飲み水に含まれています。
私たちが口にする食物や 触れたり体につけたりする製品にも
化学物質は含まれているのです。
このように暴露ルートは多種多様で どれが主要ルートかを
判断するのはきわめて困難です。」
目には見えなくても 私たちが父祖の時代とは非常に異なる世界に生きていることは
さまざまな証拠が示している。
環境中には弱い性ホルモン類似作用を持つ ごく微量の化学物質があふれるほど存在し
私たちはそれらに触れ 食べ 飲み 呼吸して生活しているが
そういう科学物質多くは ほんの100年前には存在すらしていなかったのだ。
実際 分子レベルで見れば 環境はすっかり変容しているという説さえもある。
当初はこういったホルモン類似物質は 農薬や工業製品などのごく一部のみ
含まれていると考えられていたが プラスチックからも溶出することがわかって
新しい研究の波が起こった。
科学者たちはさまざまな暴露ルートを探るうち
エストロゲン様化学物質が日常使われている品々に極めて大量に含まれていることを発見した。
それは思いもよらない発見だった。
プラスチック類からの暴露
1994年 グラナダ
1980年代後期 カルロス・ソネンシャインとアナ・ソトが
一件を汚染した謎のエストロゲン様化学物質の正体を突き詰めようと悪戦苦闘していた最中
スペインから来たがん研究の専門家ニコラス・オレアが研究室に加わった。
オレア教授はフルブライト奨学金を得て 研究チームの一員として
ホルモンとがんの関連について研究することになっていた。
オレアはノニルフェノールと その関連物質がエストロゲン様作用を持つという
ソトらの発見に強い興味を抱いた。
まもなく カリフォルニアのフェルドマン教授が
ビスフェノールAもエストロゲン様作用を持ち 実験の結果
それがプラスチックから溶出していたと発表すると
オレアはいっそう関心を深めた。
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