・・・略・・・
合成された粉ミルクを調べたところ エストロゲンは消えていたそうだ。
となると 母乳から粉ミルクへの転換は犯人ではないらしい。
心からほっとしたよ。
すっきり説明がつくのはいいが 同時に それは非常に憂慮すべき説明でもある」
「だが 多くの点で自体はいっそう悪かった。」とマクニーリィは言う。
「なぜなら 原因が粉ミルクのような特定のものでないなら
では いったいなんのせいなのか?およそ考えつかない
知りもしない物質に違いないと思われた。
きっと その量を測定することさえできないだろう!」
・・・略・・・
公演を終えて帰り支度をしていたシャープに
ここ数年会っていなかったフィンランドのミッコ・ニエミ教授が話しかけた。
「彼は私に 食習慣の変化が原因だとは考えてみたかと訊いた。
いいえ 食習慣がどんな風にエストロゲン暴露に影響するのですか と私は聞き返した。
すると彼は スカンジナビアで数年間にわたって行われた研究について教えてくれた。
そんな話は初耳だった。スカンジナビアの研究によれば 女性の体内では
たとえば消化管から排泄されたエストロゲンのようなステロイドが再生されるのだという。
それらは再吸収され 女性は二度にわたって暴露を受けることになる。
体内には文字通り天然エストロゲンのリサイクル機能があるそうだ。
このエストロゲンの再利用・再吸収プロセスは 食習慣によって影響されうる。
ヘルシンキ大学のハーマン・アドラークロイツは
食習慣と乳がんと性ホルモンの関係を研究していた。
彼は 乳がんや結腸がん 前立腺がん 子宮がんなどのホルモン依存型のがんが
何故アジアや南欧 東欧と比較して西欧に多く発生するのか という疑問を抱いた。
西欧への移民を対象にした研究から 乳がんになるリスクの上昇は
西欧式の食習慣を取り入れることに関連していることが明らかだった。
移民のほとんどが 短期間のうちに従来の食生活から
高カロリーで脂肪やタンパク質を大量に摂取し
未精製の炭水化物や食物繊維が少ない西欧型食生活に乗り換えてしまう。
このことや他の研究からアドラークロイツは
高カロリー高タンパクで食物繊維や未精白の穀類が少ない西欧型の食習慣は
体内のホルモン代謝を変化させるのかもしれないと考えた。
さらに彼の研究はその変化が エストロゲンが吸収され 循環し
分解され 体内から排出される道筋を変えてしまう
根本的なものであることを示していた。
こういったホルモン代謝の変化が発がんリスクに影響するかどうかを知るために
アドラークロイツらの研究チームは 乳がん患者の女性たちと
健康な女性たちの食習慣を比較する一連の複雑な調査を行った。
季節的な食事の偏りを避けるために 調査は年に4回各5日間にわたって実施された。
血液や尿を採取して 性ホルモンの値を測定した。
人間の内因性エストロゲンは 体内で分解され 代謝されて
エストロン エストロン・サルフェイトなど13種類の物質になる。
研究チームは女性一人ひとりについて エストロンの完全な分析表を作成することとした。
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