・・・略・・・
何年もの間埋もれていた。
しかし 1957年 バローズ・ウェルカム研究所のリチャード・ウェルチと
ロナルド・クンツマンが これをよみがえらせた。
肝臓である種の酵素の構造を変化させ
それによって エストロゲン プロゲステロン テストステロンといった
性ホルモンの構造や分泌を変化させうると発表したのだ。
またこのような性ホルモン代謝への影響は特定の鳥類の生息数減少の
原因だろうと推測した。
さらにDDTが 性ホルモン代謝を変化させ
その結果生殖に影響することが確認された。
その一方でDDTは1950年代に最も大量に使用された。
需要に応えるため 10年間に 合成殺虫剤の生産はほぼ5倍に増加し
その額は2億5000万ドルにも達した。
この数字は DDTが当時どれほど気軽に使われたかをよく示している。
子供たちの頭からかけられ 郊外の家々では
芝生が真っ白になるほどまかれた。
農村ではどこでも ヘリコプターから白い霧状の空中散布が見かけられた。
人畜無害で殺虫効果の高い薬剤と信じられていたため
ある昆虫学者は食べても平気だと主張し
一つまみ飲み込んで見せたくらいだった。
結局のところ 定期的に噴霧を受けた数百万人もの兵士たちが
格別命に別状ないことは確かだった。
もしこれが死をもたらす物質であるなら
死はゆっくりとやって来たのだった。
しかし1962年 DDTとの蜜月は終わりを告げた。
アメリカ政府の魚類野生生物局の生物学者
レイチェル・カーソンが『沈黙の春』を出版した
この本は大反響を起こし
70年代に盛んになり西欧でのDDT使用全面禁止を促進した。
環境保護運動のきっかけを作ったと広く認識されている。
彼女は野生生物たちに起きた異変を描写し
それは郊外の家々の庭先でもたやすく感じ取ることができると主張した。
鳥が苦しげに羽ばたいたかと思う間もなく死んでしまう。
ハチの羽音や鳥のさえずりといった春の音が聞こえない。
植物は枯れ萎れ 動物たちは子供が生まれない。
生まれた子供も突然死んでしまう。そう彼女は訴えた。
「アメリカの無数の町で 春の声を沈黙させたのは何だろう?」と
彼女は問いかけた。「この傷ついた世界で新しい生物の蘇りを沈黙させたのは
魔術でも戦争でもない。人々が自分でやったことなのだ。」
それが彼女の答えだった。
「死の妙薬」と呼ばれた合成殺虫剤
とりわけDDTの使用によって 人間が自分自身でやったことなのだと
彼女は雄弁に語った。
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