「どうせまた、究極の選択でしょ?」
「うっ!」
「バイトの時間が迫ってるから、早くお題を出してよ」
「お題って・・・お前なぁ」
「するの?しないの?どっち!」
「しますします」
「じゃあ、とっとと始めてよ」
「へーへー」
「で?今回は何なの?」
「嫁姑の仲がすこぶる良好、旦那様も優しくいつも一緒で笑顔が絶えない西門家か、嫁姑の仲は険悪、旦那様も粗野で気遣い一つ出来ない多忙な道明寺家。お前ならどちらの家に嫁ぐ!?」
「う~ん」
「さあさあ、どっちだ!」
「道明寺家かなぁ」
「何でだよ!」
「仕事で行き詰まって旦那に相談したくても、多忙のあまりすれ違いばかり。何の相談も出来ない。そんな中、努力して頑張って自力で解決して、業績上げて結果を出したら、認めてくれそうじゃない?鉄の女って」
「・・・」
「例え最初は嫁姑の仲が険悪でも、仕事で成果上げたら多少は、こちらを見る目が変わりそうな気がするんだよね。鉄の女ってさ、実力主義的なところがありそうじゃん!?頑張って結果出したら出しただけ、心を軟化させてくれると思うんだよね」
「・・・」
「何よ!?その顔は。例によって、また不満でもあるの?」
「あるに決まってんじゃねーか!」
「何でよ」
「あのカーチャンだぞ!?旦那は珍獣だぞ!?家庭は寒々しいんだぞ!?それに対し西門家は、嫁姑関係もバッチリで旦那も優しく、何かあればフォローする。道明寺家とは雲泥の差じゃねーか」
「・・・あのさ、一つ忘れてない?」
「はっ?」
「本人の努力だけでは、どうにもならない問題が西門家にある事を」
「どうにもならない問題?」
「うん。それは、家柄、血筋、伝統。この三点セット」
「三点セット?」
「そう。結婚は本人達だけじゃなく、家と家との結びつきでもあるの。分かるでしょ?」
「まあな」
「何百年と続く名家なら尚更、家格を保つ事や血を繋ぐ事に必死でしょ。そんな所にポッと出の人間が嫁げる訳ないじゃない。そもそも、一門衆や後援会の人達が許さないわよ。私が西門サイドの人間でも許さないわ」
「・・・」
「それにさ、伝統を継承するって大変じゃない。すごい重責を担うじゃない。そんな旦那様を支える気骨は私にはないわ。無理無理」
「ぐっ!」
「日本の伝統文化は勿論好きよ!?次の世に繋げてもらいたいと思ってる。でもそれは第三者的な見解であって、実際に自分が中に入ってその一旦を担うとなると話は別。私には荷が重い」
「・・・」
「てな訳で、道明寺家を選びます」
「・・・結婚するならあきら、付き合うなら類、嫁ぐなら道明寺家。じゃあ、俺は何の対象になるんだよ!?」
「う~ん。単なる先輩後輩?」
「はっ?」
「だってさ、西門さんと仲良くしてるだけで刺されそうだもん。西門さんが付き合ってる数多の女性達からさ。刃傷沙汰は絶対イヤ!トラブルに巻き込まれるのも絶対イヤ!だから───」
「だから?」
「必要以上に話しかけてこないでね。じゃ、行くね」
「・・・」
〈あとがき〉
拙宅での総ちゃんの扱いは、こんなもんです(笑)
短篇を書くと、どうしても総ちゃんがこんな扱いになってしまうんですよね。
書きやすいと言うか、何と言うか(笑)
このシリーズは、これにて完結です。
ありがとうございました。