Hanews-はにゅうす

ウィーン歌曲歌手、「はにうたかこ」の毎日のちょっとしたことを書いています

見えるってすごいこと

2008年04月04日 00時37分36秒 | Weblog
今日はとても貴重な体験をしてきました。「暗闇での対話」とでも訳しましょうか。そういう催しに申し込んで行ってきました。つまり普通の人が何も見えない世界を体験するというものです。

普通は8人で一つのグループらしいのですが、前もって予約する時に「外国人なので、ドイツ語に不安がある。特に周りの人が叫んだり、大きな声で話をしたら、わからなくなって置いてきぼりになるので怖い。」と言ったら、空いている時間を選んでくれ、また一人だけのマンツーマン参加をさせてもらえました。

まず、入り口で盲人用のステッキをもらいます。それを手首にかけて、コンコンと道を確認しながら真っ暗闇に入っていきます。本気で何も見えません。見えないのに見ようとするからか、途中三半規管もあいまってめまいを起こす人がいるそうです。実は私もその一人。かなりくらくら来ました。家に帰ってきた今も、まだ何か回ってます。

今回は生まれた時から全盲であるという、ハンガリー人のシャンドルさんに案内してもらいました。まずは、地面の感触を確かめながら(ちゃんとコンクリか芝生か石だたみかわかった)どこかに向かっていきます。何かの木にあたりました。「本物かどうかわかる?」といわれたので、とっさに匂いをかいでいました。次は足元に鉄のかたまりがありました。あちこちさわっているとベンチでした。

そんなことをしながら、今度は街の中へ入っていきます。横断歩道はおそらく数センチの段差なんだと思いますが、降りるのも、あがるのも怖かったです。それに今横断歩道を渡っているといわれても、どの方向に歩いているのかわかりません。シャンドルさんの声だけが頼りです。もし案内役の人がいなかったら、道の真ん中に座り込んで動けなくなってると思います。

ポストやスーパーのレジは触ってわかりましたが、かなり時間がかかったのが、道路のゴミ箱。自分が見えなくなったら確認のために何分もゴミ箱を手でなめまわすことになるのか、と思ったら恥ずかしかったです。もちろん今回は危険なものは触らないし、最初に段差は横断歩道だけと教えてもらっていたので、大丈夫でしたが、普通の生活の中で、未知の物に触る前に危険かどうかの認識なんかできないなぁと痛感。

野菜や果物はわかりやすかったけど、自称「鼻はいい」と思っていたのに、ナツメグやカレー粉、お茶の匂いがわかりませんでした。(2006年からおいているから古いということもある)

不思議なことに、シャンドルさんには私が匂いをかいでいることや、(ほとんど音はさせていない)どっちをむいているとか、何をつかんだとか、見えているんです。これには驚きました。なんで?って思いましたもん。

それからバスにも乗りました。(もちろん暗闇の中で)これは乗り降りの段差が怖かった上に、乗って「前に椅子がありますよ」と言われて座ろうとして、手すりに思いっきり顔をぶつけました。痛かった!

もちろん見えない状態では、自転車も車も自分では乗れないし、触るか、匂いをかぐか、聞くかしないと、目の前に何があるのかなにもわからないのはかなりキツイなぁと思いましたし、工事中の「立ち入り禁止」や「迂回せよ」の看板なんか読めるはずもなく…(ところが看板があるとわかれば、字の上塗りが手で触って読めるらしいんです)

真っ暗だということは、こんなにしんどいことか!と痛感しました。特に視力には不安があるので、早いうちにこういう体験ができてよかったです。

最後は、バーで飲み物を頼みます。ワインにしようと思ったのですが、赤だか白だかわからないので、結局コーヒーを頼んで(クリームもお砂糖も入れました)ちゃんとお金も払ってきました。もちろん暗闇で。
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