ジェンキンズ氏の会見 1月31日

「最初の15年間は、犬のような生活だった」との言葉には、さすがに胸がつまる。脱走兵であるジェンキンズ氏が、北朝鮮国内で同じ米兵に暴力を振るわれたということについては、正直なんともコメントしようがない。それらも含めて「犬のような生活」と表現しているのだろうが、この言葉からは、ジェンキンズ氏の40年間にわたる北朝鮮での暮らしが、どんなに過酷で残酷なものであったかが伺える。

曽我ひとみさんに会ってからは、生活は少し「マシ」になったようだけれど、金正日体制については、「手先以外の人間が、金正日を誉めることはないだろう」「金正日は邪悪な人間だ」と断言しているところに、ジェンキンズ氏の内に秘めたる痛恨と無念の思いが隠されているようにも思う。そうはいっても感情を抑えながらの発言であるだろうから、北朝鮮という国が、いかに非人道的な地獄の国家であるかということが容易に想像される。

ジェンキンズ氏は、「金正日は、国民を搾取し抑圧している」とも明言している。部分的に堰を切ったようなジェンキンズ氏の発言に、私たち一般の日本人は、拉致問題について何らかの活路を見出そうとする。しかし、核心に触れる内容については、ジェンキンズ氏の口はまだまだ重い。

とにかく、ジェンキンズ氏が、日本に溶け込み平和な精神状態で日常を送っておられることは、喜ばしいことだ。願わくば、91歳のお母さんに、一日も早く会わせてあげたいと思うのは、私だけではないだろう。ジェンキンズ氏の話を聴いていると、たとえ経済制裁に踏み切ったとしても、北朝鮮が日本の期待通りの反応を示すかというと、疑問を感じずにはいられなくなる。北朝鮮国民を傷つけることなく、金正日のみを失脚させる方法が、存在するだろうか。そんな方法を見出すことが出来たら、それはとても価値あるものだ。

曽我ひとみさんとジェンキンズ氏は、地獄の北朝鮮で、寄り添い互いを思うことでなんとか生き延びてきた人たちだ。ジェンキンズ氏は、「北朝鮮の暮らしを思うと、日本に適応することくらいた易いことだ」と語っている。あらためて、日本がいかに恵まれた国であるかを思い知る。こんな平和な日本人社会を永遠に守り通すためにも、安易に武力行使や戦争容認につながる国家になることには、慎重にならなければならない。たった1人の日本人も、戦争により犠牲になることは許されない。

私たちは、ジェンキンズ氏の会見から金正日の本質を知り、金正日が手も足も出ない知的戦術に富んだ対北朝鮮外交を組み立てていくことの必要性を知り、また一方で、平和と人権の豊かな日本国家に生きる幸福をあらためて認識し、こんにちの平和を崩しかねないような憲法改正には、慎重に取り組まなければならないことを学ばなければならないのだと思う。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

イラク国民議会選挙 1月30日

イラク移行国民議会選挙投票は、残念ながら予想通り多くの犠牲者が出ている。シーア派の多い南部の投票率は90%を越えているそうだが、スンニー派の多い中部では10数%と低投票率だ。多くの投票所が迫撃砲の攻撃を受けるという前代未聞の選挙は、それでも有効とされるのだ。「イラクの民主主義の幕開け」とは、よく言ったものだ。

自衛隊が駐留するサマワでは、投票所に長蛇の列が出来るほど市民は盛り上がっているという。15万人の米軍を中心とする多国籍軍と10万人のイラク警察が警備にあたる厳戒態勢の中、サマワ周辺では特にオランダ軍とイギリス軍が警備にあたっている。一方自衛隊は、宿営地内に蟄居し整備作業を行なっているのだそうだ。米兵を含め数十名の一般市民が犠牲になるほどの状況は、「非戦闘地域」とは認められず、当然、自衛隊は活動しないということなのだ。投票日当日のテロは十分に予想されていたのだから、昨年末の時点で、さっさと撤退すべきだったのだと、あらためて思う。

今現在の自衛隊のサマワでの仕事は、水の供給や学校施設の整備なのだろうか。最近の活動は、実は、何をやっているのかはっきりしない。この期に及んで、米国のポチであるためだけのイラクへの自衛隊の派遣だったのだと、あらためて強く思う。与党内でも自衛隊のイラク派遣については意見が割れていた。小泉総理の独断専行で、自衛隊はイラクへと旅立って行ったのだ。

よくよく考えてみると、小泉一族は、横須賀出身だ。横須賀は、日米同盟そのものの街だ。自衛隊と米国ネイビーとが共存し、京浜工業地帯をバックにネイビーの空母の修理も横須賀で行なわれている。ネイビーが、数千人の周辺市民を雇用していることも忘れてはならない。まさに日米が一体となって沖縄とは違った形での発展を遂げてきた街、それが横須賀なのだ。小泉総理が米国に対してシッポを振りまくるのは、政治家の誰よりも日米同盟を実感しながら育ったという環境にあるのかもしれない。

小泉一族のために、自衛隊のイラク駐留を延期することは許されない。多くの日本国民が、もう撤退の時期だと感じている。駐留中、大半が宿営地内に蟄居する自衛隊。これ以上、国税のムダ遣いはしないで欲しい。ただそれだけなのだ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )