「聴くボランティア」 12月2日

核家族化が進み、一人暮らしの高齢者が増えた今、「聴くボランティア」が社会のニーズに応えている。介護施設などで、高齢者の「話し相手」というよりは「聴き役」に徹し、若い頃のように自由のきかない体への不満や、残り少なくなった先行きへの不安から、つい閉ざされがちになる高齢者の心のケアを目的に広がりはじめたボランティアだ。

相手の心の訴えを聴く「傾聴」は、高齢者ばかりが対象とは限らない。年齢を問わず、病気をはじめ様々な悩みを抱える人、あるいは、孤独な日々を送る人などにとって、自分の話を聴き共感してくれる相手が存在することは、大きな支えとなる。そんな現代社会のニーズに応えて、各地に「聴くボランティア」が誕生しているのだ。

「聴く」は「聞く」とは異なり、十の目と心を持ってきくことであり、相手の全てを受け止める気持ちがなければ出来ない行為だ。「聴す」と書いて、「ゆるす」と読む。相手がどんなこと言っても、まず一旦は許し受け止めることが傾聴の基本なのだ。が、実際には、なかなかできないことだ。相手の言動に敏感に反応してしまいがちな態度を、自戒し聴き上手になることは、難しいがでも目指さなければならない姿勢だ。ディベートとは異なる、「傾聴」の奥義を認識し、その能力を高める努力が必要なのだ。

日経に掲載されていた「傾聴のポイント」を紹介する。
1. 話をする相手を大切な存在だと考える。
相手が寝たきりでも認知症でも、聴き手にとっては大事な人。

2. 相手がいつも主人公であり、その話を興味を持って聴く。
興味が持てないと、話を聴けない。

3. 相手の話に批判・反論をしない。
相手の話を否定しないで、ありのままを受け止める。

4. 相手がどんな気持ちで話しているか、その気持ちをくみ取る。
つらい思いを話す相手には、そのつらさを疑似体験する気持ちで聴く。

5. 相手に聴き手の考えを押し付けない。
相手がより多く話すことで、自分の考えを整理し、自ら問題を解決していくのをお手伝いする気持ちで接する。

「聴くボランティア」は、誰でもができるものではない。きちんとトレーニングを受けた人、あるいは人生経験の豊かな人間力のある人でなければ務まらない。時代は「聴くボランティア」を求めている。「傾聴」する人が増えてくれば、思いやりのある人権の豊かな社会になるだろう。私も「聴す」心を肝に銘じて、日々精進していきたい。
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