糖質制限、低血糖、血糖スパイクといった言葉が飛び交いますが、
単純に糖を制限すればよい、というのは間違い。
更年期世代は、“糖とどう付き合うか”がとても重要になります。
ウェルエイジングに欠かせない“食のルール”を
昭和大学医学部教授の山岸昌一先生に伺いました。
お話を伺ったのは… 山岸昌一先生
(昭和大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門教授)
●久留米大学医学部客員教授。金沢大学医学部卒業。糖尿病、循環器、高血圧専門医。
老化の原因物質AGEに着目。AGE研究で米国心臓協会最優秀賞、
日本糖尿病学会学会賞ほかを受賞。
『老けない人は何が違うのか』(合同フォレスト刊)など著書多数。
写真=Getty Images 『婦人画報』2022年8月号
調理法の小さな心掛けでAGE(終末糖化産物)を作らせない
糖化は、体内で過剰になった糖がタンパク質にくっつき、
いわば体が砂糖漬けでベタベタになる現象。
糖化によるタンパク質の成れの果てがAGE=
終末糖化産物(Advanced Glycation End Products)です。
AGE(終末糖化産物)は、老化を進め、さまざまな病気を生みます。
体内のAGE量を増やさないために最も大切なのは食生活です。
いまの私たちにとって大切なのは、糖質そのものを抑えることよりも、
血糖値を急上昇させない食べ方や食材の選び方、
揚げ物や加工食品など現代になって増えてきた
AGEリッチな食品をなるべく摂らないようにすること。
毎日の食事の細かな努力や対応をコツコツと重ねていくことが何より有効です。
「そうはいっても、目の前のご馳走を我慢するのもストレスが溜まるばかり。
外食をたっぷり楽しんだ翌日は、AGE控えめの野菜たっぷりの和食メニューにするなど、
例えば1週間単位で帳尻を合わせればよいのです。
一日3食365日、年間1000回以上の食事の積み重ねで私たちの体はできています。
まさに”病は口から”。
健康長寿を手に入れる即効法はどこにもありませんが、
老化の進行をゆるやかにすることはできます。
食事の大切さをあらためて見直して、できることから実践してください。
よりよく歳をとるための確かな一歩になるはずです」(山岸先生)
AGEを溜めない6つの調理法
同じ食材でも調理法や食べ方で溜まるAGEは変わってきます。
毎日の食事を小さな工夫で変えていくこと。
それこそが最も効果的なAGE対策です。
※参考資料/『AGEためないレシピ』
(タカコナカムラ・山岸昌一 共著 Pan Rolling刊)
1.[ウォーターソテー]AGEを増やす大敵
・油を使わず水を使って炒める
フライパンに油を引いて熱する代わりに、
水を入れて沸騰させて食材を入れていく蒸し煮のような方法。
途中で塩をひとつまみ入れると野菜自身の水分や甘みをぐっと引き出します。
加熱した油はAGE値が高いうえ酸化物質になるため、
油を入れたい場合は仕上げにかけて非加熱で。
良質な油を少量使いましょう。
1.油の代わりに少なめの水を入れ、中火くらいの火加減で沸騰寸前にする。
2.具材を入れる。
3.焦げつかないよう炒める。塩をひとつまみ入れて素材の水分も利用する。
4.焦げつきそうになったら差し水をする。
食品中に含まれるAGE値を数値化した単位がexAGE。
1日あたりの目安は10,000exAGE。
これを超えないようにするとAGEが過剰に溜まることはないといわれる。
2.[低温蒸し] AGEができにくいのは短時間で低温の蒸す調理法
AGEの観点から最も理想的なのは生食ですが、
水を使ってゆでるか蒸すかの調理法もAGEが発生しにくい調理法です。
水は加熱しても100℃以上にはならないからです。
蒸す場合は70℃前後の低温蒸しがおすすめ。
最近では簡単に温度設定ができるスチーム調理器も各社から出ています。
通常の蒸し器やせいろを使う場合は、蓋と鍋の間に箸を一本かませて、
蒸気を逃がすことで70℃の低温蒸しが可能です。
3.[べジブロス] 簡単に作れるAGE
(終末糖化産物)を防ぐ “野菜だし”
べジブロスとは野菜から取った出汁のこと。
野菜の皮やへた、種などを煮出して作ります。
べジブロスには生活習慣病などを予防し、
AGE(終末糖化産物)化を抑える作用のある機能性成分
ファイトケミカルが多く含まれており、効率的に摂取できます。
出汁やスープとして幅広く活用でき、保存容器で冷凍保存も可能です。
1.大きめの鍋に水1300㎖を注ぎ、よく洗った両手一杯分の野菜の切れ端を入れる。
2.火をつける前に料理酒を加えて野菜の臭みを消して旨みを引き出す。
3.弱火で20~30分コトコト煮る。アクはファイトケミカルなので取り除かない。
4.ボウルの上にざるを置き、鍋ごと移して濾す。