【ウクライナ侵攻から半年】
ヘルソンで進む“ロシア化”の実態
ウクライナは奪還急ぐ
ウクライナが奪還に向けて反撃を強めている南部・ヘルソンでは、
急速に“ロシア化”の動きが進んでいます。この町に住む人は、
この1か月で起きている「急激な変化」について語りました。
◇ ロシア軍の占領下にあるウクライナ南部・ヘルソン。
町では一見、普通の市民生活が見られます。
しかし、夜になると砲撃音が響き渡ります。
南部で反撃に出ているウクライナ軍が連日、周辺を攻撃しているのです。
町の様子を撮影したヘルソン市に住むコンスタンチンさん(44)は
「砲撃は定期的にあります。ほとんど毎晩、音が聞こえます」と話していました。
ウクライナ軍がヘルソンの奪還に向けて反撃を急ぐワケは、“ロシア化”の動きです。
ウクライナ軍が反撃を強める、南部ヘルソン。
この町に住むコンスタンチンさんは、
この1か月で急激な変化が起きているといいます。
ヘルソン在住 コンスタンチンさん(44)
「ロシアのイメージを改善するようなポスターや看板が、見られるようになりました」
実際に、コンスタンチンさんが、町なかを車で走りながら撮影した映像には、
「ロシア人とウクライナ人は同じ民族で、離れられないものだ」
「ヘルソンは永遠にロシアと一緒だ」と書かれた看板など、
“ヘルソンはロシアの一部だ”とするプロパガンダが至る所に映っていました。
これらは、ヘルソンをロシアに編入するための住民投票に向けた準備だといいます。
さらに、コンスタンチンさんが普段使うスマートフォンでは…
ヘルソン在住 コンスタンチンさん(44)
「見てください。YouTubeを開こうとしますが…何も表示されません」
ヘルソンでは、5月頃からウクライナの通信が遮断されたため、
コンスタンチンさんはロシアの通信会社を利用することになりました。
その結果、VPN接続がない場合、ユーチューブやフェイスブック、
ウクライナメディアにアクセスできなくなっているといいます。
こうした中で、人々が目にする情報はどのようなものなのでしょうか。
市内で配られていたという新聞には
「ヘルソンは所有者(ロシア)の元に戻りつつある」と書かれていました。
また、ロシアのテレビ局がヘルソンで取材した映像では、
笑顔でロシアのパスポートを受け取る人々の姿が映っていました。
ロシアのテレビ局の映像(14日) 「(我々は)
自発的にロシア国籍を取得し、ロシアへの忠誠を誓います!」
さらに、親ロシア派の幹部は、ヘルソンの住民が
ロシア編入を待ち望んでいるかのような映像をSNSに投稿しました。
年配の人が「ロシアに入りたい人は手をあげて!」と呼びかけると、
周りの人々が手を上げる様子が映っていました。
しかし、コンスタンチンさんは、ロシアの占領で多くの親ウクライナの住民が
ヘルソンから避難した今でも、実情は異なると話します。
ヘルソン在住 コンスタンチンさん(44)
「真っ先にロシアのパスポートをもらいに行っているのは、
ロシアを受け入れている人たちです。しかし、彼らが大喜びしているのは、
見たことがありません。ロシアを歓迎している人もいれば、
(ロシアに対して)怒りを感じ反対している人もいます」
◇
こうした中、ヘルソンの南に位置し、2014年にロシアが一方的に併合し
たクリミア半島では、このところ、ロシア軍の軍事施設などで爆発が相次いでいます。
専門家は、これもヘルソン奪還を見据えたウクライナ側の動きだとみています。
防衛省防衛研究所 高橋杉雄防衛政策研究室長
「(ヘルソンにいるロシア軍は)クリミア半島からヘルソン州になだれ込んだ部隊なので、
補給源はクリミア半島。クリミア半島を混乱させることで補給を断つ、
あるいは補給を混乱させるのが、ウクライナ側の目的だと思います」
ただ、ヘルソン奪還の見通しは立っておらず、
現地では今も“ロシア化”の動きが着々と進んでいます。
(2022年8月24日放送「news every.」より)