むかしむかし、ある村に大きな川が流れていました。
いつも、ゴウゴウと音をたてて流れる川でした。
村の人たちは、川のむこうへわたるのに、いつもなんぎしていました。
村人たちはなんども橋をかけようとしました。
でも、なんど橋をかけても流されてしまいます。
そこで、村人たちは、村一番の大工の彦造に橋をかけることをたのみに行きました。
「彦造さんよ、なんとか川に橋をかけてくれないかね」
「だれがやっても失敗ばかり。あんたしかできないよ」
彦造は、川まで行って考えました。
「すごい流れだな。こんなに流れが強くては、橋をかけるのはむずかしい」
「そうはいっても、橋がないと村の人もこまるし、何とかいいちえはないもんかな」
「わっ、鬼だ!」彦造はびっくりしてにげだそうとしました。
「おいおい、にげるな。ところで、さっきから川を見ながら何をぶつぶついってるんだ?」
おどろきながらも、彦造は答えました。
「ああ、この川に橋をかけるようにたのまれたんだが、どうやってかけたらいいかわからないのさ」
「この川に橋をかけるって?そいつはむりだ。おれならできるが、人間にはできっこないさ」
「でも、橋がないと村の人もこまるしな。何とか助けてくれないかい?」
彦造は、鬼にたのみました。
「かけてやってもいいが、その代わりお前の目玉を二つともくれるかい?」
「いや、それはこまる、何もみえなくなってしまうじゃないか」
「じゃあ、おれの名前を当ででごらん。そうしたら目玉はいらない。三日目にまたここへ来い。おれの名前を当てたら、橋をかけてやろう」
鬼はそういうと川の中へすがたを消しました。
彦造は、家に帰って考えました。「鬼の名前ってなんだろう?鬼吉、鬼助、鬼平……。う一ん、わからん」
彦造は3日の間、考えに考えましたが、いくら考えてもわかりません。
「こうなったらしかたがない、村の人のためだ。私の目玉とひきかえに、鬼に橋をかけてもらうしかないなあ」
その時、家の外で子どもたちが歌う芦が聞こえました。
「鬼の鬼六目玉が好きで~大工の彦造目ん玉なくす~」
「そうか、鬼六か。よ~し、わかったぞ」
彦造は、川へ行きました。
すると、この前の鬼がでてきました、
「おい、おれの名前はわかったか?』
「え~っと、鬼助」
「いやいやちがう」
「それなら、鬼平」
「いやいやちがう」
「それじゃあ、鬼八」
「いやいや、おしいな」
「さあ、もうあきらめろ。どうせ当たりっこない。さあ、さあ目玉をよこせ」
鬼はそう言うと、彦造に手をのばしてきました。
そのとたん、彦造は大きな声で言いました。
「お前の名前は、鬼六だ」
「わつ」
鬼は、自分の名前を呼ばれたとたん、おどろいて川の中へすがたを消してしまいました。
鬼がすがたを消しでしばらくすると、みるまにりっぱな橋がかかりました。
こうして、川に橋がかかり村人たちは大喜びしました。
一一一おしまい一一一
こいでおわりだあよ