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【企画展】考古学視点から考察されなかなか気合が入った好企画展「呪い(まじない)の世界~山梨の考古呪物」@山梨県立考古博物館

2024-08-24 11:55:44 | 博物館・美術館・イベント
 ようやく観て参りました!現在 山梨県立考古博物館で開催されている企画展「呪いの世界~山梨の考古呪物」なかなか興味深く面白い好企画展でした。

 数多く発掘される資料は土器や土偶だけではなく様々な過去の遺物が出土されるわけですが、やはり中には禁忌的な意味合いを持った遺構も出土されるわけで今回の企画展は、その中でも山梨県内で発掘された考古学見地からの考察を交えた展示内容となっています。
一部ですが、展示内容を紹介したいと思います。

現代社会の中での呪いの世界(写真クリックで拡大)
読んでいてなるほどと思う事ばかりです。
「まじない」と言うと、大抵はこのような社寺に関連するお札だったり祭祀道具だったりを想像しますが、考古学見地から出土された遺構をみると、さまざまな当時の人々の生死や生活ぶりが想像できたり、禁忌的な呪物などは人知れず埋められていたり隠されていたりしているわけで、その様な興味深い資料が多く展示されているのが本企画展です。

双口土器(甲府市 宮の上遺跡) 今回、一番興味深かった展示物でした。土器にしては何の用途で製作されのか良くわからないものです。
実用性はゼロです。現代でも生け花とかで使う「花瓶」くらいにしか思い浮かびません。
縄文の時代より本来の意図とは違う目的で造られたこれら装飾が施された土器や石棒などの遺構は、果たして何に使われていたのでしょうか。
釣手土器(甲州市 安道寺遺跡)
 不思議なことにこの型の土器は長野、山梨の八ヶ岳周辺地域でしか出土されていません。この型の土器もその用途に関しては良くわかっておらず香炉として(あえて香炉型土器として括られることもあり)燈明として用いたとか説は、あるもののそれにしては、煤が全く付着しておらずまた、複雑な造形の文様は何を意図しているのかも不明で、このように用途不明の土器や土偶などは、大抵は、「祭祀(儀礼)などで用いられていたのではないか」と、ひと括りにされているのが考古学見地からの限界であるのが現状です。
地鎮具 (甲府市 武田城下町遺跡)建物を建てる際に行う呪いに今でも行われている地鎮祭があります。地を鎮めるための祭祀儀礼ですが、古くは県内だと仏塔の柱の礎石に石英などが埋められているのだそうです。写真の「輪宝」は、甲府駅前のヨドバシ辺りで出土されたものです。
輪宝は密教系の法具ですが江戸城でも見つかっているそうで用途など詳細は不明のままなのだそうです。
こちらも甲府城の近くで発見されたもの 地鎮具として水晶、メノウが用いられています。鉄製鳥居(笛吹市)自体も呪いとして用いられていた事実は初めて知りました。
富士御室浅間神社で出土された地鎮具(経石、水晶、剱など)溶岩に蓋をした四角い穴が開けられその中に入れられていたものだそうです。容器として富士山の溶岩を使う意味合いも呪いとしての意図があったものと思われます。
経石 甲州市の景徳院にある武田勝頼の墓の調査に際に、石塔の下から5千個を超える石片が発見されたそうです。石片には法華経が書かれ埋葬時に一緒に埋められたものと推測されています。
戒名が書かれていた経石 同じく勝頼の墓に埋められていたものです。5千個以上のこれだけの数ひとつづつに経典を書く行為は、石片の調達と多くの人物が関わっていたはずで、勝頼自身の供養に留まらず関わった人々が功徳を求め参加していたという事です。現代も寺社などで良く行われている願掛けと通じる興味深い資料と言えます。
呪符木簡(南アルプス市 二本柳遺跡)アニメや映画などで我々が知るいわゆる「呪符」です。
一石経(富士吉田市 富士山ミュージアム蔵) 経石の簡易判とでも言うのでしょうか。旅の安全を願い縁起のいい文字を石に書き登山道などに撒いたのだそうです。
猿像(富士吉田市 富士山ミュージアム蔵)富士山は考安天皇九十二年庚申の年に出現したと考えられていて、そのため「猿」は富士山の神の使いとされているそうで、富士吉田の旧登山道に置かれていたものです。いわゆる狛犬ならぬ狛猿でしょうか。
呪符木簡(南アルプス市 太師東丹保遺跡)ドーマンとセーマン この二つは「印」の呪符として有名です。五芒星の印と言えば、陰陽師安倍晴明です。方や晴明の天敵「蘆屋道満」は印として九字が用いられます。セーマンは「悪霊から身を守る」ドーマンは「大切なものを守る」際に使われます。
九字の省略として用いられた井桁の印 ちなみに東姥神遺跡は自宅から3キロほど行った場所です。  
文字が書かれた土器は墨書土器・刻書土器と分類されていていて、書かれている文字には地名や地形、特定の集団名、使われていた場所などや、意味不明の文字や記号なども多くあるそうです。
当時文字の読み書きが出来る人物は特権階級層で、なにか特別の意図があって用いていたものと思われます。
展示物はその中でも呪術的要素が高いものを厳選されたそうです。
土器には「朱」色に塗られたりするものがあります。朱色は、防腐効果の他に魔除け、神聖なもの、生命力などの意味合いから古墳時代には死者の葬送時に好んで使われていて壁画や石棺などで多く使われています。

 考古資料は縄文、土器や土偶だけではなくこのような禁忌的な遺構も数多く出土されているわけで、博物館側もこう言った企画展でもない限り保管庫に眠ったままの資料も多々あったはずで、本展は今までになかったなかなかの好企画展だと思います。
会期の終了が9/1と、迫っています。興味があれば是非会場へとお急ぎください。
公式リンク:山梨県立博物館


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