湯三昧初夏の山陰一人旅
旅の三日目は朝六時四十五分のサンダーバードに乗り、一路山陰へ。実は、ゴルフ会が金沢と決まった時、ついでに念願の鳥取県・投入堂に行こうと決めていました。というのも、金沢からは日本海に沿って電車で行けばそんなに時間はかからないだろうと思ったからです。ところが、JRみどりの窓口に行って驚き。鳥取に行くには一旦大阪まで下りて瀬戸内に沿い、岡山から上がって日本海に向かうとのこと。Everyday is Sunday の身なので、これもまたよし、とそんなには落胆しませんでした。で、ルートは;
金沢06:45発 JR特急サンダーバード6号 09:22着 大阪 09:25発 JR特急スーパーはくと3号 12:30着 倉吉
特急はのどか新緑山陰へ
ですが、特急の揺れは意外に激しく、乗り心地は新幹線の方がいいかな、と思いました。
倉吉駅には、木屋旅館のご主人が車で迎えに来てくれました。ここで、お一人で三徳山三佛寺投入堂に参拝登山されようと考えておられる方にアドバイス;
どうせ泊るならお寺の宿坊が良かろうと思い、三佛寺の宿坊に電話して部屋の予約を取ろうとしましたら、「一人での投入堂参拝登山は禁止されています。木屋旅館さんには一人でも参加できる参拝登山ツアーがありますよ」と案内してくれました。それで木屋旅館に二泊した次第。もう一つのアドバイス、このツアー参加には年齢制限がありまして、原則75歳以上は不可。なんとなれば、医学的に75歳が山登りのための体力の限界というのが世界的に認められているとのことでした。私は七十路、危うくセーフ。翌日、実際に参拝登山しましたら、この二つの条件、十分に納得しました。
宿でリュックとギター(silent guitarで持ち運びに便利です)をあずけて早速、町を散策。
ヴィオロンの館三朝に竹の秋
ヴァイオリン専門の美術館があることを、ここで初めて知りました。清楚な美術館で、ヴァイオリン制作の各工程が実物で展示されています。二階にはかわゆいコンサートホールがあります。いい響きなんだろうな、と思いを巡らしました。館の左側には工房があり、若い方々が静かに、はつらつと制作されています。まわりには建物もなく、静かで豊かな自然の中で、文化の薫りにしばしひたることができました。
人気なき三朝湯の町初夏の昼
ひなびてものどか湯の町八百年
小さい時に見たようなレトロな光景で、心が和みます。
風薫る古き湯宿の落ち着きぬ
木屋旅館は創業明治元年。木造三階建で、全館が国指定登録有形文化財認定、古き良き雰囲気が守られています。湯治宿であったようで、湯屋も時代を感じさせてくれます。誰もが入れる湯屋の内、二つは、一人でも先に入れば、鍵をかけて何時間でも使えるとのこと。三時間でも湯屋に居られる長湯の私は大喜び。が、ラドン湯の温まりようは半端でなく、小一時間も居れませんでした。湯を出た後も汗は止まらず。でも、この宿は、何回でも新しい浴衣を出してくれます。
地下牢か老舗ラドン湯ひとり占め
鍵をかけて一人で降りていきます。初めは正直、ビビりました。木の湯舟も相当年代物で、床は自然石で湯が湧いてきます。しかしながら、良質の湯で、しばらくすると、なんとも言えない居心地となりました。
湯治宿汗のとまらぬラドン泉
この湯屋も独りでゆっくりと入りました。写真右奥のラドン湯の飲み場があります。
肝に良し信じラドン湯飲みにけり
源泉のランド湯で、柄杓で掬ってうっかり手にかけてしまいました。説明はされましたが失念、70度。水道水を流し続けて危うく難を逃れました。「鰯の頭も信心から」で、コップに入れ、肝と胃の腑のあたりを撫でつつ、飲みました。お蔭さまで、旅行中、正露丸、キャベジンのお世話にはなりませんでした、いつものことではありますが・・・。
食は簡ビールは美味し湯治宿
男一人旅にはこのお料理で十分。先ずはビールで乾杯。そのあと、一日を振り返り、句作りに苦しみつつ冷やに進む。ほろ酔い加減でギターをつま弾き、夜風に触れたく、宿をでる。
河鹿なく三朝橋より星月夜
夜に鳥なくかや河鹿美しく
河鹿の鳴き声は初めて聴きました。美しい・・・。
一夜明け、人の通りもないであろう早朝に、生まれて初めての河原風呂に行きました。
長生きの町新緑に河原風呂
手前が足湯、衝立の向こう側に混浴ラドン湯があります。二回入りましたが、女性との遭遇はゼロ。地元の方々が湯道具持参で入られていました。家のお風呂と同じようで、大自然の中での日々の入浴。羨ましく思いました。
薫風を顔に河原の露天風呂
せせらぎにまじり河鹿や河原の湯
三徳山ながめ新緑河原風呂
写真中央奥にある山が、三佛寺・投入堂のある三徳山(みとくさん)です。
その2(三朝温泉) おわり
次は、いよいよ三徳山・三佛寺・投入堂への参拝登山です