寺荒れてるも よき仏鐘 風薫る
新緑に 荒寺の鐘 染み入りぬ
大悲閣千光寺の建物自体は荒寺のようで、かつ仏像なども狭い本堂に雑居させられていますが、一つ一つをじっくりと見ますととてもよい仏さまです。本堂手前の急な坂にあります鐘も年代を感じさせる風格があります。
崖の上にあります本堂から、新緑に埋ずまる嵐山のはるか向こうに見える米粒のような京の家並みと、その更にはるか遠くにある比叡山を眺めている時、ゴーンという鐘の音が響いてきました。下を見ますと、先ほど一緒に本堂で景色を眺めていたうら若き女性が鐘をついた後で、鐘をじっと見上げていました。鐘も鐘の音も新緑に染み入るかのようです・・・。
千光寺の歴史は古く、元は清涼寺の西方中院にある後嵯峨天皇(13世紀)の祈願所でした。江戸時代に角倉了以(すみのくらりょうい)が、大堰川(おおいがわ )を開削する工事で亡くなった人々をとむらうために現在地に移転したものです。本尊は恵心僧都作と伝えられる千手観音・・・
写真の坐像は角倉了以さんです。