前日10時半といういまどきの小学生ですらもっと後に寝ていると思われる時間帯に就寝したにもかかわらず
早朝4時半ぐらいに携帯のアラームをかけて起きた物の眠さは半端ではなかった。
しかも雨がざ~っと降り、俺の起きる気力を減退させた。
5時過ぎると音から察するに雨が弱くなったので体を起こして、出している生乾きで少々匂いがする服をリュックに詰めて出発した。
朝食という事でコンビニに寄る。
レジに自分よりも先に客がいて作業がトロイオッサンに少々イラッとしながらも、大した事はないと思って、
心を落ち着かせているとそのオッサンが声をかけてきた。
オッサン「自転車で山越えですか?」
髭人「はい」
オッサン「大変でしょうが頑張ってください」
なんて言われたので少し気分をよくしていた。(さっきはイラついたのに…調子がいいヤツ)
朝食を済ませてから山越えの開始だ。ちょっと登っていると
頭上高くに標高400mの標識を見つけた。
髭人「海は標高0mだろうから、既に1日の間に400m登ってきたのか…
しかしこれから600mは登らないとあかん…」
体のだるさを感じたが文句を言っても入られないのだから山越えの為に歩き出した。
坂が緩い所は自転車に乗るがそれでも7割ぐらいは歩きだったような気がする。時折雨が止んだり降ったりを繰り返していた。
髭人「この状態はこの旅ではずっと続くんだなぁ…」
諦めて、歩いていた。
カッパは特殊加工で雨を良く弾き通気性もいいという話であるが、どんなに通気性が良くても服を1枚着込む訳だから蒸れる。
暑い。だからと言って脱いでびしょ濡れになっては風邪を引く事だって考えられる。
暑くて体調不良になる事も考えられるがそこは難しい所だ。行きの時、新潟側で登りがあったのだから当然、帰りでは下りもある。
ここまで登ってきたのに何で途中に下りがあるんだよ…
電池式の発光灯があったのでそれをケツの所に付けてトンネル内を走る。
まだ朝と言う事もあり車の量は少なく、
工事も始まってないので片側一車線という事ではない。
工事の人が着いてきた方が安全なのかもしれないが…
幾つ物トンネルを越えたのだが一つ気になる事があった。
髭人「やべぇ…水がねぇ…」
登り始めたときは2本の500mlのペットボトルに合計して700mlの水があったのだが今は100~200mlに減少している。
飲もうと思えば一気飲みなど簡単に出来る量だ。どうしようと迷う。
行きは丁度いいところに水場があって補充する事が出来たが今回は水場などないし、自販機など近くに見当たらない。
髭人「行きはエネルギー不足で帰りは水不足か?」
最悪雨の水とか沢の水を飲むことも不可能ではなかったが出来れば避けたい所であった。
幾ら綺麗のように見えても中には病原菌があるかもしれない。
本では山での湧き水は飲まないほうが良いと書かれているがうちの父親は登山の時、
山の上に山小屋などのように人がいられる建物がなければ大丈夫と言って普通に湧き水を飲んでいた。
俺も飲んだけど異常なしだった。まぁ、湧き水は上に人が住んでいなければ良いって訳じゃないけどね。
上には道があって他人がそこで、誰もいないから野糞や立小便をするのは不思議ではない。
だから、正露丸を持っていった方がいいです。そんな正露丸を持っていない俺は
『ギリギリまで水は飲まずに行こう』
と思って、そのまま歩きつづけた。そしてどうにか苗場にやってきたときはホッとした。
これでようやく水を飲めるという所で…時間として10時半ぐらいだったかな?下から4時間ぐらいはかかったんじゃないだろうか?
昨日、無理して3時に出発していたら7時に着いていた所だ。
疲れていたからもっと後かもしれない。
それを考えると昨日は山越え判断をしなくて正解だったと言える。
バスで来ていたと思われる学生を少し恨めしく思い、ジュースを買って飲み、苗場を後にした。
三国峠側にはなかった1000mの標識である。良くここまで登ったよ髭人!
後少しでトンネルである。10時ぐらいだったので工事も始まっており、片側一車線で交互通行になっていた。
「やべぇな…」
と、思っていると工事の人は反射板の服を貸してくれたりする事も無く、そのまま進めと言う事であった。
しかし、4日前とは違って、道路はあまりガタガタしてなかったし、
工事も限定的に行われていたので急いでトンネルを出る必要もなかった。
だからこそ、トンネル内に県境の表示があった。そこをのんびりと越える。
にしてもそのトンネルに入る直前に、高校生らしい人が逆側から三国越えをしたようだった。
思わず会釈したね。やはり同じような事をやっている人を見かけると年齢とか関係無しに同志って気がして他人のようには思えなくなる。
そして、そのままトンネルを出ると、そこは真っ白。
「トンネルを抜けると…川端康成の『雪国』ならぬ『霧国』か?」
景色なんか全然見えませ~ん。
と言う所だった。真っ白で遠くが見えない。電池式の発光機をつけていたので轢かれる事はないだろうと思っていた。
そして、下りばかりである。
鼻歌交じりで走る。ただ、雨の後だったから、泥はねして気分良くと言う訳にはいかなかったが…
そんな時である。何とリヤカーを引いている人を見たのだ。
髭人「嘘ぉぉぉん!」
リヤカーで三国越え。とんでもない事をする人もいるんだなぁ…と、すぐに駆け寄った。
話を聞くとなんだかボランティアの活動で全国に10人ほどいてリヤカーで日本縦断するという企画をやっているらしい。
その人は北海道から3ヶ月もかけて実家があると言う新潟に来たのだと言う。
リヤカーと自転車と言う全く違う乗り物であるが、苦労して何かやっているという連帯意識からすぐに意気投合って感じだったなぁ…
写真まで撮ったし、だけどお互い行かなければならない所があるのでずっと話している訳にもいかず
髭人「お互い頑張りましょう!」
と、声をかけてその人と別れた。そうそう。その人から1枚の紙を貰ったのだが
なんだかアルミ缶やプルタブを集める事によって車椅子をミャンマーに届けると言う活動をしているらしく、
リヤカーを引きながら缶集めをしているようだ。
リヤカーの人と別れたら、後は一気に駆け下りて沼田と言う町で昼食を取ろうと考えたのだが次の国道沿いの店で食べようと思った時には
既に越えてしまったらしくて周辺には何もなくなっていた。
髭人『ああ~失敗した~』
仕方ないのでそのまま進んでいると、棚田を見つけて写真を撮っていた。
田んぼの写真は何枚も撮ってきたけど棚田は棚田でまた美しい。
それから走りつづけて、丁度見つけた国道沿いの定食屋でミックスフライ定食を食べた。
チキンカツとアジフライだったかなぁ?お味噌汁が旨い。旨い…
塩分大事!!
で、出る時に三毛猫がいた。うちの方が可愛いいなと思いながら(親バカか?)
その猫はその猫でちょっとふっくらとしている分、おっとりとしていて、
客が来ても逃げたりせず丸まっている姿が何となく可愛げであった。
店を出て再び出発。この頃になるとケツの痛みもピークとなっていた。
自転車は歩道がないから気を付けて通行しろとの事…
歩道がないから気をつけて通行しろだと!?
その道にはガードレールがあったけど、ガードレールの向こう側は崖なんだよ!
じゃぁ、反対車線に行けって事なのか?だけど反対車線はガードレール無し歩道無しの道の上に壁になっているから避けようがないんだよ。
にもかかわらず歩道が無いから気をつけろってどう気をつけたらいいんだよ!
一番気をつけるべきなのは走る凶器にもなる車の方じゃないのかこの野郎!
6日間毎日自転車に乗っていたわけだ。合計で40~50時間は越えるんじゃなかろうか?
(山で降りていた時間も含むけど)風呂に入っているときに自分の尻を見てみたが、
サドルに当たっていた部分が擦れて真っ赤になっていて、ブツブツみたいのが出来ている。
髭人「こりゃいてぇ筈だよ」
と、言っていた。それでもどうにか痛くないように尻をずらしてサドルに座って自転車を漕いでいた。
汚い尻だったので写真には撮ろうとも思わなかった。自分の尻に携帯を向けている姿を想像すると惨めだし(笑)
痛くなったら尻をずらし、信号待ちになったら自転車を降りて待ち、痛さに耐え切れなくなったら休憩を取る。
こんな調子だから、あまり進まないのは当然である。
しかし、1日目に辿り着いた渋川も越えたので自分の中でOKである。
髭人「ここを越えれば取り敢えず明日一日で帰れるだろう」
と言う所だ。後はできるだけ距離を稼ぐだけ…それで、今日の宿泊地をどこにするか迷った。
折角だから結構大きめの都市、埼玉の熊谷にしようかなんて思っていたのだが、標識を見る限りまだ30km以上もある。
信号などに捕まらずスムーズに行けば時速20kmは出せるのだが、
ケツの痛さで休憩がちになっており、時速は10km程度かもしれない。
その状況で3時間、走りつづけるのは大変である。
それよりも、行きに来た方向を走るかどうかで迷った。
しかし行きに来た方向に入ってしまうと宿を見つけるのが一苦労かもしれない。
色々と迷う要素があったのだが、体の状態を考えれば無理はしない方がいいという結論に至り、
群馬県と埼玉県の県境に位置する藤岡市で泊まる事に決めた。
「市」なら宿を探すのも何とかなるだろうと…
「町」や「村」だと、観光スポットなどがないと難しいだろうと思った。
そして藤岡市街に向かうのだが、突如、眠気に襲われた。
「ヤバイ…休むか?」
ケツは痛いのもあるが更に来ている睡魔には勝てなかった。
頭と尻とでは離れすぎているからか?
雨もぱらつき、丁度いいところに一階部分がない建物があってそこで休む事にした。
一階部分には犬が一匹寂しそうにしていたので
髭人「休ませてくれ~」
なんて言いつつ、そこで座っていた。睡魔が押し寄せてきて数分間だが眠ってしまった。
俺が近くにいても吠えたりせず心優しい良い犬でしたぜ。
国道から丸見えの位置にあるから、目を瞑って座っている男に国道を走っている人は驚いたかもしれない。
それから藤岡駅前に行くが、交番がない。駅員らしき人に交番の位置を聞くと
警官「どうしたんだい?」
髭人「ビジネスホテルを探しているんですが・・・」
警官「ビジネスホテル?そこに行った所にあるんだけど、料金はちと高いなぁ~」
ビジネスホテルの事を聞きつつ、交番に言った方がいいということで交番の場所を聞いて行ってみたのだが、残念ながら不在。
髭人「どうすっか?別の交番でも探すか?」
なんて飛び出すと、地図があって近くに警察署がある事を知りそこに行ってみた。
警官「どうしたんだい?」
髭人「ビジネスホテルを探していまして・・・この辺にありますか?」
警官「あんたどこに行くつもりなんだ?」
髭人「東京なんですが・・・」
警官「東京?東京行くのにこっちに来るとは珍しいね」
髭人「こっちからの方が家に近いんですよ」
警官「へぇ・・・」
都心部に行くという事を考えているのだろうな、
そう言いつつ、タウンページで探してくれる警官のおっちゃん。しかし・・・
警官「この辺には数軒しかないなぁ…高崎に行けばあるんだが…」
高崎というのは新幹線も止まる群馬県の大きな都市である。
しかし既に通過した都市であったから出来れば戻る事になるのは勘弁して欲しい所である。
宿を教えてもらい電話をかけてみた。客室はあるという話だから次は金だ。
髭人「「1泊の料金は?」
お店の人「4500円です」
5000円を切っていれば取り敢えずOKなので、そこに決めた。
高崎に行けばもっと安い所もあったのだが、10kmも戻ってまで安い宿にする気力は無かった。
3日目は数百円の差で戻ったのになぁ…
まぁ、3日目は、次の日、進まなければならないと言う予定がなかったからこそ安い所にしたんだが…
で、宿に行くとそこからうなぎのいい香りして、めちゃくちゃ誘惑されていたが体を奮い立たせた。
その店はうなぎ蒲焼の販売を行っているらしい。宿帳に書いたりして、部屋に案内された。
そこで食えばよかったかなぁ?
部屋の中はいたって普通だった。
お店の人「今、お風呂にお湯を入れてますので入ってください」
髭人「夕方と言うお忙しい中、急に来てしまってすみません」
と、言っておいた。確かにその店はうなぎ料理の為かドタバタしているように思えたから一応言っておいた訳だ。
すぐには入れないだろうから、宿についてから少しくつろいで風呂に入る事にした。
すると、風呂からはお湯が溢れていた。
髭人「うおおお!止めないのかよ!
まぁ、お湯を止めないからすぐに入ってくれって頼まれた訳じゃないし、お店の人が忘れたんだろう」
そう思って、浴槽のお湯を使って、体を洗い出来るだけ無駄にならないように徹した。
でも、そのまま俺が風呂に入ったお湯を残す訳には行かないから浴槽の栓を抜く事になったんだけど・・・
1人で入る風呂だったから、お湯を残しておく訳にはいかない。
風呂に入ったら今度は夕食である。近くに初日の昼食で食べたもつ煮の店があるから行って見ることにした。
髭人『お店のオバちゃんがいたら驚くかなぁ?』
なんて心を膨らませていた。(多分、覚えてないだろう)
その時、上からゴロゴロという音と共に、雨が降ってきた。
髭人「ああ~また雨か・・・」
自転車には乗っていたが、風呂上りでカッパは着てこなかったので少し濡れた。
そして、そのお店を見かけたのだが、真っ暗・・・
どうやら営業時間は過ぎているのかその日は休日だったのか良く分からないがやっていないようだ。
髭人「まだ8時だぞ」
雨にぬれながら、他に定食屋を探すのだが見つからなかった。雨も強くなる一方で、
髭人「飯どうすんだよ…」
と、思って目に入ったのが弁当屋。
髭人「最後の夜の飯が弁当かよ…」
少しがっかりしながらも、雨の状況や周囲の様子を見て、これ以上探すのは無謀だと思って、弁当屋で済ますことにした。
しかし量的に少し不満がある。近くにコンビニがあったのでそこで追加で色々と買うことに決めて、
買って、多少、週刊誌を立ち読みし、宿に戻ろうとしたのだが、週刊誌など読まなければ良かった。
ザァァァ!ピカァァァ!ゴロゴロゴロ…
髭人「やべぇ・・・出れねぇ・・・」
雨の地面への跳ね具合を見るととても濡れながら帰るような状態ではなかった。
髭人「飯も食えないどうしよう・・・」
コンビニの外で飯を食う事は何度もやってきたのだが、コンビニの屋根が小さい。
その状況で飯を食べ始めたらびしょびしょになるどころか弁当まで濡れる。
髭人「ああ・・・どうすっかなぁ?」
コンビニ内で本を読んで立ち読みする物の、このまま待っている訳にもいかないから、
コンビニの外を見回したら丁度いい駐車場があった。
下は土であったが、屋根もあり食事をするには丁度いいところであった。
「よし!そこに移動だ!」
髭人
と言って、コンビニのビニール袋を頭に翳して、そのまま駐車場下へ・・・
何故か、コンビニやスーパーの籠が捨ててあり、それを裏返して椅子として使って食事をしていた。
髭人「雨やまねぇ…」
食事を終えたものの、帰れない。友人にメールなんかして待つがなかなか止まない。
結局コンビニで立ち読みしていた時間や食事の時間含めて1時間半ぐらい食ってしまった。9時も過ぎた。
そろそろ寝たい所だ。雨は土砂降りから本降りになっていた。
髭人「ああ!帰る!宿は近い!」
さすがにこれ以上滞在しているのも問題があるだろうと言う事で、雨に濡れてでも帰る事にした。
近い事もあって、びしょ濡れになる事はなかったが濡れた。部屋に戻ったら歯を磨いて寝るだけである。
見たいテレビも無かったし、あっても見る気力などなかっただろう。
そして最終日の7日目になっていくわけです…
NEXT >>>> 新潟編 7日目
自転車旅行リスト
早朝4時半ぐらいに携帯のアラームをかけて起きた物の眠さは半端ではなかった。
しかも雨がざ~っと降り、俺の起きる気力を減退させた。
5時過ぎると音から察するに雨が弱くなったので体を起こして、出している生乾きで少々匂いがする服をリュックに詰めて出発した。
朝食という事でコンビニに寄る。
レジに自分よりも先に客がいて作業がトロイオッサンに少々イラッとしながらも、大した事はないと思って、
心を落ち着かせているとそのオッサンが声をかけてきた。
オッサン「自転車で山越えですか?」
髭人「はい」
オッサン「大変でしょうが頑張ってください」
なんて言われたので少し気分をよくしていた。(さっきはイラついたのに…調子がいいヤツ)
朝食を済ませてから山越えの開始だ。ちょっと登っていると
頭上高くに標高400mの標識を見つけた。
髭人「海は標高0mだろうから、既に1日の間に400m登ってきたのか…
しかしこれから600mは登らないとあかん…」
体のだるさを感じたが文句を言っても入られないのだから山越えの為に歩き出した。
坂が緩い所は自転車に乗るがそれでも7割ぐらいは歩きだったような気がする。時折雨が止んだり降ったりを繰り返していた。
髭人「この状態はこの旅ではずっと続くんだなぁ…」
諦めて、歩いていた。
カッパは特殊加工で雨を良く弾き通気性もいいという話であるが、どんなに通気性が良くても服を1枚着込む訳だから蒸れる。
暑い。だからと言って脱いでびしょ濡れになっては風邪を引く事だって考えられる。
暑くて体調不良になる事も考えられるがそこは難しい所だ。行きの時、新潟側で登りがあったのだから当然、帰りでは下りもある。
ここまで登ってきたのに何で途中に下りがあるんだよ…
電池式の発光灯があったのでそれをケツの所に付けてトンネル内を走る。
まだ朝と言う事もあり車の量は少なく、
工事も始まってないので片側一車線という事ではない。
工事の人が着いてきた方が安全なのかもしれないが…
幾つ物トンネルを越えたのだが一つ気になる事があった。
髭人「やべぇ…水がねぇ…」
登り始めたときは2本の500mlのペットボトルに合計して700mlの水があったのだが今は100~200mlに減少している。
飲もうと思えば一気飲みなど簡単に出来る量だ。どうしようと迷う。
行きは丁度いいところに水場があって補充する事が出来たが今回は水場などないし、自販機など近くに見当たらない。
髭人「行きはエネルギー不足で帰りは水不足か?」
最悪雨の水とか沢の水を飲むことも不可能ではなかったが出来れば避けたい所であった。
幾ら綺麗のように見えても中には病原菌があるかもしれない。
本では山での湧き水は飲まないほうが良いと書かれているがうちの父親は登山の時、
山の上に山小屋などのように人がいられる建物がなければ大丈夫と言って普通に湧き水を飲んでいた。
俺も飲んだけど異常なしだった。まぁ、湧き水は上に人が住んでいなければ良いって訳じゃないけどね。
上には道があって他人がそこで、誰もいないから野糞や立小便をするのは不思議ではない。
だから、正露丸を持っていった方がいいです。そんな正露丸を持っていない俺は
『ギリギリまで水は飲まずに行こう』
と思って、そのまま歩きつづけた。そしてどうにか苗場にやってきたときはホッとした。
これでようやく水を飲めるという所で…時間として10時半ぐらいだったかな?下から4時間ぐらいはかかったんじゃないだろうか?
昨日、無理して3時に出発していたら7時に着いていた所だ。
疲れていたからもっと後かもしれない。
それを考えると昨日は山越え判断をしなくて正解だったと言える。
バスで来ていたと思われる学生を少し恨めしく思い、ジュースを買って飲み、苗場を後にした。
三国峠側にはなかった1000mの標識である。良くここまで登ったよ髭人!
後少しでトンネルである。10時ぐらいだったので工事も始まっており、片側一車線で交互通行になっていた。
「やべぇな…」
と、思っていると工事の人は反射板の服を貸してくれたりする事も無く、そのまま進めと言う事であった。
しかし、4日前とは違って、道路はあまりガタガタしてなかったし、
工事も限定的に行われていたので急いでトンネルを出る必要もなかった。
だからこそ、トンネル内に県境の表示があった。そこをのんびりと越える。
にしてもそのトンネルに入る直前に、高校生らしい人が逆側から三国越えをしたようだった。
思わず会釈したね。やはり同じような事をやっている人を見かけると年齢とか関係無しに同志って気がして他人のようには思えなくなる。
そして、そのままトンネルを出ると、そこは真っ白。
「トンネルを抜けると…川端康成の『雪国』ならぬ『霧国』か?」
景色なんか全然見えませ~ん。
と言う所だった。真っ白で遠くが見えない。電池式の発光機をつけていたので轢かれる事はないだろうと思っていた。
そして、下りばかりである。
鼻歌交じりで走る。ただ、雨の後だったから、泥はねして気分良くと言う訳にはいかなかったが…
そんな時である。何とリヤカーを引いている人を見たのだ。
髭人「嘘ぉぉぉん!」
リヤカーで三国越え。とんでもない事をする人もいるんだなぁ…と、すぐに駆け寄った。
話を聞くとなんだかボランティアの活動で全国に10人ほどいてリヤカーで日本縦断するという企画をやっているらしい。
その人は北海道から3ヶ月もかけて実家があると言う新潟に来たのだと言う。
リヤカーと自転車と言う全く違う乗り物であるが、苦労して何かやっているという連帯意識からすぐに意気投合って感じだったなぁ…
写真まで撮ったし、だけどお互い行かなければならない所があるのでずっと話している訳にもいかず
髭人「お互い頑張りましょう!」
と、声をかけてその人と別れた。そうそう。その人から1枚の紙を貰ったのだが
なんだかアルミ缶やプルタブを集める事によって車椅子をミャンマーに届けると言う活動をしているらしく、
リヤカーを引きながら缶集めをしているようだ。
リヤカーの人と別れたら、後は一気に駆け下りて沼田と言う町で昼食を取ろうと考えたのだが次の国道沿いの店で食べようと思った時には
既に越えてしまったらしくて周辺には何もなくなっていた。
髭人『ああ~失敗した~』
仕方ないのでそのまま進んでいると、棚田を見つけて写真を撮っていた。
田んぼの写真は何枚も撮ってきたけど棚田は棚田でまた美しい。
それから走りつづけて、丁度見つけた国道沿いの定食屋でミックスフライ定食を食べた。
チキンカツとアジフライだったかなぁ?お味噌汁が旨い。旨い…
塩分大事!!
で、出る時に三毛猫がいた。うちの方が可愛いいなと思いながら(親バカか?)
その猫はその猫でちょっとふっくらとしている分、おっとりとしていて、
客が来ても逃げたりせず丸まっている姿が何となく可愛げであった。
店を出て再び出発。この頃になるとケツの痛みもピークとなっていた。
自転車は歩道がないから気を付けて通行しろとの事…
歩道がないから気をつけて通行しろだと!?
その道にはガードレールがあったけど、ガードレールの向こう側は崖なんだよ!
じゃぁ、反対車線に行けって事なのか?だけど反対車線はガードレール無し歩道無しの道の上に壁になっているから避けようがないんだよ。
にもかかわらず歩道が無いから気をつけろってどう気をつけたらいいんだよ!
一番気をつけるべきなのは走る凶器にもなる車の方じゃないのかこの野郎!
6日間毎日自転車に乗っていたわけだ。合計で40~50時間は越えるんじゃなかろうか?
(山で降りていた時間も含むけど)風呂に入っているときに自分の尻を見てみたが、
サドルに当たっていた部分が擦れて真っ赤になっていて、ブツブツみたいのが出来ている。
髭人「こりゃいてぇ筈だよ」
と、言っていた。それでもどうにか痛くないように尻をずらしてサドルに座って自転車を漕いでいた。
汚い尻だったので写真には撮ろうとも思わなかった。自分の尻に携帯を向けている姿を想像すると惨めだし(笑)
痛くなったら尻をずらし、信号待ちになったら自転車を降りて待ち、痛さに耐え切れなくなったら休憩を取る。
こんな調子だから、あまり進まないのは当然である。
しかし、1日目に辿り着いた渋川も越えたので自分の中でOKである。
髭人「ここを越えれば取り敢えず明日一日で帰れるだろう」
と言う所だ。後はできるだけ距離を稼ぐだけ…それで、今日の宿泊地をどこにするか迷った。
折角だから結構大きめの都市、埼玉の熊谷にしようかなんて思っていたのだが、標識を見る限りまだ30km以上もある。
信号などに捕まらずスムーズに行けば時速20kmは出せるのだが、
ケツの痛さで休憩がちになっており、時速は10km程度かもしれない。
その状況で3時間、走りつづけるのは大変である。
それよりも、行きに来た方向を走るかどうかで迷った。
しかし行きに来た方向に入ってしまうと宿を見つけるのが一苦労かもしれない。
色々と迷う要素があったのだが、体の状態を考えれば無理はしない方がいいという結論に至り、
群馬県と埼玉県の県境に位置する藤岡市で泊まる事に決めた。
「市」なら宿を探すのも何とかなるだろうと…
「町」や「村」だと、観光スポットなどがないと難しいだろうと思った。
そして藤岡市街に向かうのだが、突如、眠気に襲われた。
「ヤバイ…休むか?」
ケツは痛いのもあるが更に来ている睡魔には勝てなかった。
頭と尻とでは離れすぎているからか?
雨もぱらつき、丁度いいところに一階部分がない建物があってそこで休む事にした。
一階部分には犬が一匹寂しそうにしていたので
髭人「休ませてくれ~」
なんて言いつつ、そこで座っていた。睡魔が押し寄せてきて数分間だが眠ってしまった。
俺が近くにいても吠えたりせず心優しい良い犬でしたぜ。
国道から丸見えの位置にあるから、目を瞑って座っている男に国道を走っている人は驚いたかもしれない。
それから藤岡駅前に行くが、交番がない。駅員らしき人に交番の位置を聞くと
警官「どうしたんだい?」
髭人「ビジネスホテルを探しているんですが・・・」
警官「ビジネスホテル?そこに行った所にあるんだけど、料金はちと高いなぁ~」
ビジネスホテルの事を聞きつつ、交番に言った方がいいということで交番の場所を聞いて行ってみたのだが、残念ながら不在。
髭人「どうすっか?別の交番でも探すか?」
なんて飛び出すと、地図があって近くに警察署がある事を知りそこに行ってみた。
警官「どうしたんだい?」
髭人「ビジネスホテルを探していまして・・・この辺にありますか?」
警官「あんたどこに行くつもりなんだ?」
髭人「東京なんですが・・・」
警官「東京?東京行くのにこっちに来るとは珍しいね」
髭人「こっちからの方が家に近いんですよ」
警官「へぇ・・・」
都心部に行くという事を考えているのだろうな、
そう言いつつ、タウンページで探してくれる警官のおっちゃん。しかし・・・
警官「この辺には数軒しかないなぁ…高崎に行けばあるんだが…」
高崎というのは新幹線も止まる群馬県の大きな都市である。
しかし既に通過した都市であったから出来れば戻る事になるのは勘弁して欲しい所である。
宿を教えてもらい電話をかけてみた。客室はあるという話だから次は金だ。
髭人「「1泊の料金は?」
お店の人「4500円です」
5000円を切っていれば取り敢えずOKなので、そこに決めた。
高崎に行けばもっと安い所もあったのだが、10kmも戻ってまで安い宿にする気力は無かった。
3日目は数百円の差で戻ったのになぁ…
まぁ、3日目は、次の日、進まなければならないと言う予定がなかったからこそ安い所にしたんだが…
で、宿に行くとそこからうなぎのいい香りして、めちゃくちゃ誘惑されていたが体を奮い立たせた。
その店はうなぎ蒲焼の販売を行っているらしい。宿帳に書いたりして、部屋に案内された。
そこで食えばよかったかなぁ?
部屋の中はいたって普通だった。
お店の人「今、お風呂にお湯を入れてますので入ってください」
髭人「夕方と言うお忙しい中、急に来てしまってすみません」
と、言っておいた。確かにその店はうなぎ料理の為かドタバタしているように思えたから一応言っておいた訳だ。
すぐには入れないだろうから、宿についてから少しくつろいで風呂に入る事にした。
すると、風呂からはお湯が溢れていた。
髭人「うおおお!止めないのかよ!
まぁ、お湯を止めないからすぐに入ってくれって頼まれた訳じゃないし、お店の人が忘れたんだろう」
そう思って、浴槽のお湯を使って、体を洗い出来るだけ無駄にならないように徹した。
でも、そのまま俺が風呂に入ったお湯を残す訳には行かないから浴槽の栓を抜く事になったんだけど・・・
1人で入る風呂だったから、お湯を残しておく訳にはいかない。
風呂に入ったら今度は夕食である。近くに初日の昼食で食べたもつ煮の店があるから行って見ることにした。
髭人『お店のオバちゃんがいたら驚くかなぁ?』
なんて心を膨らませていた。(多分、覚えてないだろう)
その時、上からゴロゴロという音と共に、雨が降ってきた。
髭人「ああ~また雨か・・・」
自転車には乗っていたが、風呂上りでカッパは着てこなかったので少し濡れた。
そして、そのお店を見かけたのだが、真っ暗・・・
どうやら営業時間は過ぎているのかその日は休日だったのか良く分からないがやっていないようだ。
髭人「まだ8時だぞ」
雨にぬれながら、他に定食屋を探すのだが見つからなかった。雨も強くなる一方で、
髭人「飯どうすんだよ…」
と、思って目に入ったのが弁当屋。
髭人「最後の夜の飯が弁当かよ…」
少しがっかりしながらも、雨の状況や周囲の様子を見て、これ以上探すのは無謀だと思って、弁当屋で済ますことにした。
しかし量的に少し不満がある。近くにコンビニがあったのでそこで追加で色々と買うことに決めて、
買って、多少、週刊誌を立ち読みし、宿に戻ろうとしたのだが、週刊誌など読まなければ良かった。
ザァァァ!ピカァァァ!ゴロゴロゴロ…
髭人「やべぇ・・・出れねぇ・・・」
雨の地面への跳ね具合を見るととても濡れながら帰るような状態ではなかった。
髭人「飯も食えないどうしよう・・・」
コンビニの外で飯を食う事は何度もやってきたのだが、コンビニの屋根が小さい。
その状況で飯を食べ始めたらびしょびしょになるどころか弁当まで濡れる。
髭人「ああ・・・どうすっかなぁ?」
コンビニ内で本を読んで立ち読みする物の、このまま待っている訳にもいかないから、
コンビニの外を見回したら丁度いい駐車場があった。
下は土であったが、屋根もあり食事をするには丁度いいところであった。
「よし!そこに移動だ!」
髭人
と言って、コンビニのビニール袋を頭に翳して、そのまま駐車場下へ・・・
何故か、コンビニやスーパーの籠が捨ててあり、それを裏返して椅子として使って食事をしていた。
髭人「雨やまねぇ…」
食事を終えたものの、帰れない。友人にメールなんかして待つがなかなか止まない。
結局コンビニで立ち読みしていた時間や食事の時間含めて1時間半ぐらい食ってしまった。9時も過ぎた。
そろそろ寝たい所だ。雨は土砂降りから本降りになっていた。
髭人「ああ!帰る!宿は近い!」
さすがにこれ以上滞在しているのも問題があるだろうと言う事で、雨に濡れてでも帰る事にした。
近い事もあって、びしょ濡れになる事はなかったが濡れた。部屋に戻ったら歯を磨いて寝るだけである。
見たいテレビも無かったし、あっても見る気力などなかっただろう。
そして最終日の7日目になっていくわけです…
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自転車旅行リスト
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