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The Sword 第十二話 (5)

2010-12-05 19:09:58 | The Sword(長編小説)
話をより明確にする為に、話を戻そう。一道達を逃がし、自分達を攻撃し続ける正体不明の敵に対して元気は一人挑もうとしていた時の事である。本来ならば自分も逃げたいところであったが自分以外にまともに動けるものはいなかったのだから仕方なかった。勇気を奮い立たせ、前に歩き出していた。奥に入っていくと山とはかけ離れたものを見た。
「コード?何のコードだ?」
そのコードを辿っていけば何かしら見つかるかもしれないと思って、歩いていった。すると
「・・・!!ぐぅお!」
始めのうちは何が起こったのかはわからなかった。しかし、何か足に流れるものを感じ、次に左足を付いたと同時に焼けるような痛みが走った。幸いな事にかすり傷程度であった。何か異変はないかと周辺を見た瞬間、右方向から何かキラッと光るものが見えた。
「あ、あれか!?」
その光るものがかなりの高速でこちらに向かってきたので咄嗟に避けた。
『魂を飛ばしているのか?そんな事があり得るのかよ!!』
魂は、その人の魂そのものだ。それを飛ばすという事は死ぬ事と等しい。そんな事をしてまでこちらを殺そうとする者達がいるのか?そんな物はないと思っていたが、現実はこのように進行している。否定したところで攻撃は続くのだ。元気はまず考えるのをやめ反射的にそのまま右方向から隠れるように木陰に隠れた。
「コソコソ隠れてんじゃねぇ!正々堂々と前に出て来て勝負しやがれ!」
元気は叫ぶ。魂が飛んで来た方向にだ。挑発する事で姿を現せようとした元気の考えであた。
ブオッ!ビシィィ!
今度は手の甲に激しい熱さを感じた。かすったようだ。しかも飛んできた方向は木の中からである。
「くっ!この攻撃は木を貫通するのか!」
その事実は衝撃を覚えた。それでは物陰に隠れたとしても攻撃を受けてしまう。だが、そのような性質を持つからこそ、小屋の中の元気達を攻撃できたのだろう。
「だからって何で小屋の中にいた俺達を攻撃出来たんだ?」
狭い小屋の中で何人も人がいたから、下手な鉄砲数打てば当たるという事も考えられるかもしれないが、それなら無駄弾を誰か目撃していたはずだ。だが、誰もそのようなものは見ておらず、その狙いは異常なほど正確で有りすぎた。
「まさか!俺がいる位置が分かっているのか?そんな事は・・・いや、そうとしか思えねぇ!」
恐ろしい仮定であったがそうとしか思えなかった。こちらは相手の事がわからないというのに、相手からは丸見えというのは圧倒的にこちらが不利である。
「こ、殺される?逃げなきゃ・・・やられる」
元気の額からゆっくりと冷たい汗が頬を伝い、顎から落ちた。逃げようというタイミングを計ろうと後ろを見ると小屋が目に入った。
『亮・・・』
今、亮や大はあの中で横たわっているだろう。このまま引いてしまえば、亮や昌成を殺した人物も分からないまま、逃げる事になる。
『全く、アホいちどーが・・・やばくなったら逃げろだと!そんな事言われたら逃げられねぇじゃねぇか!それを見越して俺に言ったのか?』
それは元気の意地、プライドであった。元気の体は小刻みに震えていた。それでもその場に踏みとどまっていた。
「せめて顔だけでも見られればいい・・・恐らく、相手はこちらの事が分かっているからって余裕ぶっこいているはずだ。付け入るならそこにある!」
元気は、自分の思考が冴えていると感じた。亮や昌成がやられた事によって二人の意思がそうさせているのか、軽く攻撃を受けて恐怖を感じた事がそうさせるのか、それとも、そのように思いたいだけなのか・・・本人には分からないが、元気は逃げるのではなく逆に向かっていく事にした。飛ばしているのであるのなら動いていれば、その命中率も下がるという事も考えてだ。
『止まるな・・・止まればそこをやられる!』
と、前方の方でズルズルとすべる音が聞こえた。
「チチッ!」
前方から2連続で舌打ちするのが聞こえた。恐らく、敵はそこにいるのだろう。元気が起伏の激しい道を行くと、掃除機のようなホースが長いものを持ち、大きく目が飛び出したような形の奇妙なゴーグルのようなものをした者が後方に下がっていった。
「何だあれは!あれで魂を飛ばすのか?」
こんな所に普通の掃除機など持ってくるわけはないから、それで魂を飛ばしているに違いないだろう。
「それにアイツが目につけている奴!テレビかなんかで見た事がある。赤外線って言ったか?」
赤外線ゴーグル。温度が高い物を赤等で表示できるものである。そんな物があれば薄い壁であれば透過してこちらの体温を通じて所在を発見する事は容易い。だから、小屋の元気達を攻撃できたのだろう。
「だからこっちの位置を把握できたのか・・・」
これで隠れても無駄だと言う事は分かった。そうなるとここから逃げ切れるものだろうか?必死に逃げても背後から撃たれるのが関の山だろう。
「くそぉ!顔もわかんねぇ!このままでは逃げてもやられる」
敵からの攻撃がピタリとやんだ。ひょっとしたら飛び道具の弾を使いきったという事が考えられる。叩くなら今がチャンスのように思えた。
元気はゆっくりと近付く。物陰に隠れながらだ。いくら体温が分かるからと言って、完全に体温を透過出来るとは思わなかったからだ。もし正確な位置を完全に把握しているのなら元気は既にやられている事だろう。
「今から俺はお前を叩く!覚悟しやがれ!」
元気が叫んだ。相手も木の後ろに立っているが逃げようとはしていない。飽くまでこちらを倒すつもりなのだろう。そう考えると、まだ攻撃が出来ないわけではないのかもしれない。
『もう分からん!後はアイツに近付いてやるだけだ!』
一対一。これは喧嘩などではない。本当の殺し合いである。普段ならビビッていたかもしれないが、元気としても仲間を倒され、その上、自分も軽く負傷している。そのような要素からハイになっているのかもしれない。正常な判断などつく訳がなかった。

相手は焦っていた。圧倒的に有利なはずの自分が押されているような気持ちになっていた。
「問題ない。勝てる」
そのように自分に言い聞かせ、冷静さを取り戻し、元気の位置を確認する。オレンジ色の塊がそこにあった。人間の体温の表示である。どうやら10m前の木の後ろにいるようだ。確実に仕留める必要があるからもう少し接近させる必要があった。しかし、その直後、信じられない事態が起きた。なんとオレンジ色の塊の後ろからより高温である赤や白い塊が大きく広がっていったのだ。
「何だと!?」
パチパチパチ!!
ゴーグルを取って確認すると、煙を上げて後ろの草が燃えてきている。なんと、元気は火を起こす事で体温をこちらに察知出来ないようにしたようだ。
『アイツ、狂っているのか!!山火事を起こして隠れるだと!?』
元気を見失った。元気は木や、山の起伏を利用してこちらに近付いてくるだろう。位置が分からなくなってしまったので赤外線ゴーグルは無用の長物である。サッとゴーグルを取った。元気の姿は見られなかった。しかも元気が草に火をつけたため煙が立ち込めてきている。さっきまで手に取るぐらいまで分かった敵の位置が分からない。これでは安易にトリガーを引けない。そのような状態が彼を動揺させ、不安になった。急に目隠しされたような状況だろうか?
「チチッ」
思わず舌打ちをした。だが、一つ思いついた。
『いや、待て・・・アイツだって俺の場所を正確には把握していないはずだ』
条件は同じはずである。それでも、飛び道具を持っているこっちの方がやはり有利である。再び自分の心に言い聞かせ、落ち着こうとした。
ザッザッ・・・
草がこすれる音がする。耳を済ませていれば分かる。火や煙ぐらいで騙されるかというところであった。
「そこだ!」
と、男が飛び出した所に元気が現れたのだが予想外の出来事があった。

「しまった!?読まれてたぁぁ!?だがっ!」
元気は作戦が上手く行ったと思っていたがこちらに狙いをつけている姿を見て思わず声に出した。そこで元気はバッと男に土をぶちまけた。
「!?」
ぶちまけた瞬間に元気は気付いた。男は、サバイバルゲームでつかうかのような大きなゴーグルをしていたのだ。
これでは目潰しは効かない。完全な失敗であった。そのまま元気に向けて掃除機のヘッドを向けていた。トリガーを引いた。ソウルドと同じ輝きが元気に迫った。
ビシィ!!
「うぅっぐ!!」
元気は腰に魂を受けて、その場に転倒し、坂を転がり落ちていく。それで男と距離を取った。
『ちっくしょ・・・どうして、読まれたんだぁ・・・』
その疑問が頭を駆け巡ったが、今は反省しているような状況ではない。傷は思ったより浅かったが周辺はかなり急で木の根が沢山張っていて走って逃げるには非常に困難な状況であった。
『絶体絶命・・・くそぉ!どうしてだ!どうして上手くいかねぇんだ!!』
カシャ・・・カチッ・・・
男は掃除機のような武器からソフトボール大ぐらいある弾を取り出し、同じものを入れた。
『土をぶっかけられて少し手元が狂ったが次は外さん・・・今のであまり動けないだろうからな・・・』
元気は男をはめようと石をいくつか投げて、草の上に落とし、音を出させたのであった。それを元気の動きだと勘違いさせて攻撃しようとしたのだが、その音はあまりにも足音には軽すぎた。それが読まれた原因である。目潰し作戦は、元気が保険としてやっておいたものであったが効かなかった。これは彼がサバイバルゲームを趣味としているのでゴーグルをつけていないと落ち着かない癖であった。それに男にとっては、煙が目に入り、視界不良になるのを防ぐ為であった。男は周囲に気を配り、元気の出方を伺う。火の方は、生の草が多い所のようで、煙が多く、燻っているだけで燃え広がりはしないようだ。
『出て来い。次は・・・殺す』
静かに、自分が空気になるように努める。サバイバルゲームの時と同じである。周囲に警戒しつつ、自分自身の存在を消す。そして元気が現れた瞬間に打ち抜く・・・それだけである。
「おい!お前!男だったら正々堂々と勝負しようじゃないか!」
何と隠れていた元気がその姿を現し、ソウルドを出していた。
『よく言うよ・・・』
さっき、土をかけてくるような小細工を見せた相手が言葉通り正々堂々と勝負してくるようには思えなかった。
「出てこないのかよ!そんな飛び道具まで持って、怪我をした俺に対してビビッて手を出せないってのか?随分と女々しい奴だなぁ!!」
『下らん挑発になど乗るものか・・・どうせ、また小賢しい手でも考えているんだろうしな・・・』
「ば~か!ば~か!お前のか~ちゃんで~べそ!お前のパンツはまっちゃっちゃ~」
それからすぐに、先ほどとは打って変わって聞くに堪えないレベルの低い挑発へと変わった。それが10秒ぐらい続いた。生死という緊張状態にある中で10秒とは死ぬほど長く感じるものだ。そんな時に低レベルな挑発は苛立ちを倍増させた。
「うるせぇぞガキが!!」
思わず声を出してしまった。声によってこちらの方向を発見されてしまった為、男は木から体を出した。元気の前に姿を現した。ゴーグルをしたままの痩せ気味の長身の男であった。
「お前の精神年齢は何歳だ?幼稚園児並みか?」
「そうだよ。文句あるのか?そんな子供に対して、飛び道具を使うのか?卑怯者~」
「それがどうした?俺は、そっちが攻撃できないところから狙撃するような卑怯者だぞ!」
これ以上、挑発は通用しないようであった。
『アイツの目、まだ何か企んでいるな・・・誰か、近くに潜んでいるとか?』
負傷し、ソウルド以外に武器を持たない元気が態々、正面を切ってくるという行為。あまりにも怪しすぎた。だから周囲を警戒する為に、男は敢えて見通しのいいところにゆっくりと歩いて移動し、周りを確認していく。他に人はいないようで間違いなく元気一人である。
「それはそうと、これで正々堂々と戦えるわけだ・・・ありがたい事だな」
「・・・」
もう元気の言葉など聞いていなかった。あらゆる状況を想定して、それに対処するだけである。
『周辺は事前にこちらが調べた。罠を仕掛けてある心配もない。冷静にコイツの腹にコイツをぶち込んでやればそれで終わりだな・・・』
『やるしかない。もうこの方法しか!一か八かだ!!』
元気も覚悟を決め、突撃を敢行する事にした。

「勝負だぁぁぁぁ!」
元気はソウルドを出している手の中から元気は石を放り投げた。普通なら反射的に避けてしまいがちであるが、それほどのスピードでもないので、体で受けた。少々痛いが手元を全く狂わさない。
「それで・・・終わりだなッ!!」
引き金を引いた。真っ直ぐ元気の胸に向かって魂が飛ぶ。その弾道は直撃するものであった。誰が見ても当たるものをみて目を細める男。
「うおおおおおおおぉぉぉぉ!!」
ギャキィィ!!
「何とッ!!」
元気はソウルドで男が撃った魂を跳ね返したのだ。跳ね返された弾は男のすぐ近くを抜けていった。そのまま元気が迫ってくる。必殺の一撃のつもりだったから、男に対応する余裕はなかった。
「お前の負けだぁぁぁぁ!」
ザブゥッ!!
「ぬぅおおおおお!!」
肩に一太刀入れたが残念ながら致命傷ではなかった。跳ね返したときの衝撃によってソウルドが歪んだ為であった。男はひっくり返り、転がり坂を下った。
「チチッ!畜生・・・あんな事が可能だとはぁぁぁ・・・聞いてねぇぞぉ!」
後ろを振り返ると、元気はこちらを追おうとしているのかゆっくり歩いていたが、男はそのまま坂を駆け下りていた。
「待てぇぇ・・・待ちやがれ・・・」
元気は弾を跳ね返した半端ではない衝撃を受けていた。頭がガンガンし、体が震え、吐き気さえする。とても追えるような状態ではなかった。元気はそのまま倒れ込んで、暫く動く事が出来なかった。そして、動けるようになってから元気は山を下山して家に帰ったのだ。

「2回連続の舌打ちをする癖の持ち主はソイツしか思えないんだ」
「ですけど、そんな事可能出来るんですか?魂を別人の体に封じ込めるなんて?」
「こんなのマンガの話じゃないですか」
2人は信じられないようだ。元気本人でさえ未だに信じられないのだから当然の事だろう。
「それを確かめる上でこいつから聞きださなければならないんだ」
「俺は何も知らないぞ。何故なら石井 亮なんだからな」
今更、見え見えの嘘をついたところで誰も信じてくれるわけがなかった。
「お前からは聞きたい事は山ほどある。全て話してもらうからな・・・」
「だから俺は石井 亮であって、そんな襲った奴なんかじゃ・・・」
この男の話などもう聞いていなかった。
「でも、いいんですか?こんな重要な話を私達だけで聞いてしまって?悠希さん達を呼んだ方が・・・」
「俺達を襲った張本人かもしれないんだ。悠希がそれを知ったら問答無用で斬ってしまうかもしれない。貴重な情報源だ。何も分からないまま殺させるわけにはいかない。だからまず俺達だけで聞き出す必要がある。そうだろ?」
元気の話は非常に冷静で正しい。2人もそれに賛同した。
「まず、聞く。お前は俺達を襲った本人か?」
「元気さん。この人は白を切ろうとするだけです。だったら手っ取り早く魂の剣で斬っちゃうのが一番じゃないんですか?魂の剣で斬るとその人の人生が見えるんでしょ?」
元気も和子も剣の事を使えない港が能天気な事を言っているので睨み付けた。
「え?俺、何か悪い事言いました?」
「それが確実に誰だか分かる方法だが、簡単だからといってそれで済ませてしまうのは良くない。それは最後の手段としてとっておく」
「何故です?」
「お前もあの時、魂で撃たれたのなら分かるだろ?」
港は黙った。先日、攻撃を受けた際、記憶が見えたと同時に這い上がってくる悪寒を感じ、嘔吐したのだ。お互い気分が良くないもので記憶を探るのは良くなかった。
「それに、自らの意思で話させることに意義がある」
「でもどうやって?」
3人はヒソヒソ話を始めた。
「決まったぞ。お前を喋らせる方法をな・・・」
ニヤリと笑う元気。亮は相変わらず黙り込んだままこちらを睨みつけてきた。すると亮の体をグルグル巻きにして、後ろ手に縛り上げていたガムテープとビニール紐を切った。だが、元気はその男の体を押さえ込んで暴れさせないようにした。それからベッドの足に手足を縛りつけ、強制的に大の字の形にした。まるで昔の特撮ヒーロー番組の改造シーンのようである。
「早めに吐いた方が良いぞ。ここから始まるのは拷問なんだからな」
「・・・」
亮の態度を崩さなかった。元気は手を出した。ゆっくりと両手の五指を動かす。その動き波のようで妙に卑猥であった。そして、その指は亮の脇の下に置かれた。
「くすぐりの刑って奴だ」
「!!!」
亮の体は激しく動いた。ベッドの足の下に新聞や布等を置き、暴れても下の部屋に騒音が伝わらないようにする。亮の口に布がされていた為、声を出せない。亮の体が一気に歪む。ちょっと触っただけで身をよじらせ、苦しむ姿は予想以上の効果である事を示させた。
「話す気になったらいつだって良い。頷け。でなければこの刑はずっと続くぞ」
再び、元気のくすぐりの刑が始まる。亮は笑いすぎて涙さえ溢れさせていた。
「みんなも手伝え」
元気に言われて皆、くすぐりに参加する。上半身の元気。わき腹の和子、下半身の港。元気などはこういった事にかなり手馴れているようで、ただくすぐりだけではなく耳元に息を吹きかける事などもやっていた。
「どうだ?話す気になったか?」
コクッ!コクッ!
くすぐりを止めて聞いてみると、すぐに頷く亮。さっきの殺意さえ感じさせた睨みはどこへやら、くすぐり攻撃の前にはそんなプライドなどなかった。口の布をとってやる。涎が沢山出ているようで布は結構濡れているようであった。
「聞きたい事はいくつもあるがまず、お前は俺達を襲った張本人か?」
「・・・」
それを聞いた瞬間、表情が曇ったので、元気は指を脇に乗せた。
「そうだ。俺は、お前達を撃った。名前は市山 満生(いちやま みつお)だ」
身分証明書は亮のものしか所持していなかったのでその名前を信じるしかなかった。
「何故、亮の体をしている?人格を入れ替えるなんてそんな事出来る訳がない!」
「俺だって知るかよ!」
元気は再び満生と言う男の脇に手を添えた。
「本当だ!俺は気付いた時にはこの体になっていたんだ!」
それから尋問が始まっていくのであった。その次々出て来る話に彼らは衝撃を覚えるのであった。

「犯人を捕まえたってどう言う事?」
悠希が元気のうちに駆けつけてきた。数時間後、元気達は一道と剛、そして悠希の3人を呼び寄せたのであった。
「言ったとおりだ。こいつが犯人だ」
満生はまだ縛られたままであった。それを目にした悠希は困惑した。
「この人は攻撃を受けたじゃない。何を言っているの?」
「俺達もまだ心の底から信じられないが、俺達を撃った奴だ。全部終わってから亮の体を運び、その体に魂を入れられたという話だ」
「ええっ!?冗談でしょ?」
それから、尋問の時の内容を元気達3人が代わる代わる分かりやすく説明していった。

「俺はお前に斬られてボロボロの状態で戻った。疲れ果てた俺はそのまま気を失った。起きたらこの体になっていたって訳だ」
「!?」
「元の体を返して欲しいのならばその体でお前らをおびき出せと言われた」
「誰に?」
「和良 吾朗(わら ごろう)という男にだ」
全員知らない名前であった。それから他に関係者などを話して行く。
「俺は2週間前ぐらいにミリタリーショップで間 要という男に出会った」
「間 要!?」
「ああ・・・知っているのか?俺は、間に声をかけられた。『君は銃について詳しいのか?知人がサバイバルゲームに参加してくれと頼まれたが私は無知だから教えてくれないか』ってな。最初はそいつの事を初対面の癖に馴れ馴れしい気持ちの悪い奴だと思った。だが、少し教えてやると子供みたいに嬉しそうな顔をしていた。『私も興味が湧いてきた』なんて事を言って来た。俺も悪い気はしなかった。どんどん親しくなっていくと間に和良達を紹介された。和良は今までにない銃を撃って見ないかと言って来た。それがソウルフルだった。人間に撃っても法に触れない。まだテストだがやってみないかと・・・俺は受けることにした。ただの興味本位だった。それにただの新しいゲームの延長線上のものだと思い込んでいた。人の魂を奪えるなんて思わなかった!和良も教えてくれなかった!本当だよ!信じてくれ!俺はただ単に利用されたんだ!」
全員、ガタガタと震える。死ぬかもしれないという恐怖、どこから攻撃を受けるか分からない恐怖と戦いながら逃げていたというのに追う者としてはゲーム感覚で攻撃をかけてきたという事実。沸々と湧き上がる怒り。
「俺は、お前の反撃を受け、負傷して和良の家に戻った。意識を保つのがやっとの状態で歩いてきたから、和良の家に着くと同時に俺は気絶した。目覚めると・・・こうなっていた訳だ」
あまりの常軌を逸した状況に全員、絶句していた。満生は話を続ける。
「そして、和良はこういった。自分の体が返して欲しければ、この体の石井 亮としてお前らに近付き、罠をかけろと・・・だからこうしてやってきたんだ」
人質。それが自分の体であるなどと、人類史上初だろう。この縛られ横たわる男がそれを経験したのだ。しかもその人は自分が倒した魂を持っていた体である。
「お前、さっきゲームの延長線上とか言っていたがその割に俺と戦った時、マジだったろ?」
「始めだけそう思っただけなんだ。だから俺と戦おうと向かって来たお前を見たとき、お前を殺さなければ俺が殺されると思ったんだ!だから抵抗せざるを得なかったんだよ」
それが本心なのか、それともただ言いつくろっているのか石井 亮の体で言われてもピンと来なかった。
「何故、俺達をそこまでして付け狙う?」
「俺が知るかよ。俺はそうなけりゃ体を返さんといわれていたからそうしただけだ」
自分の肉体を人質にとられた人間などというのは人類が始まって以来の事なのかもしれない。
「和良 吾朗って人の家ってどこにあるんです?」
「石見の交差点の傍にある」
多摩市の主要の国道が交差している場所である。車どおりも多い。それから、他に細かい事を聞いてみたが満生はただ、前の一件の実行役でしかなく、機械の事、慶の事など知らなかった。だが和良の自宅が分かったと言う事が唯一で重要な情報であった。


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