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生物学者 本川達雄③ (心で感じる生物多様性)

2009-05-19 20:33:22 | WWFマガジンより
 2010年に日本で「生物多様性条約国際会議」が開催されることになり、
にわかに生物多様性という言葉を聞く機会が増えてきました。

----そうですね。でも今の世の中は、多様性ではなく、逆に共通性、
一様性が一番、大切にされています。例えばニュートンは、物を落とせば
落ちるという法則を唱えました。ゾウを落としたって、ネズミを落としたって、
落ちるということでは一緒。違いは質量だけ。だから、同じ一つの式で、
ゾウの落ちる速度も、ネズミの落ちる速度も計算できちゃう。
本当は一つ一つ違うモノなのに、質的にはみんな一緒で、違いは量だけ、
っていう見方をする。そうすると、全部、値札がつけられちゃうですよ。
交換もきく。全部、数式にあてはめられて、定量的になって、
あいまいさもなくなる。人間の能力なら偏差値でカタがつく。
信用のランクは従業員数とか、売り上げで決まっちゃう。
数字に変換できるというのは、見方が一様だってことです。
そういう発想が、今の世の中を取り仕切ってるんですね。

 環境についても、その価値を示すために、
価格に換算したりすることがありますね。

----一様な発想法で見ると、環境はこんなサービスを与えてくれるとか、
生物の多様性や環境を理解するのにも、全部、ドルに換算して考える
ことになる。多様性、多様性といいつつ、全部を一つのモノサシに乗っけて、
これは量が多いですよ、って言わないと、価値あるものと見なすことができない。
そうすると、我々が気持ちいい環境はいいけれど、そうでない環境は
要らないっていう話になっていくわけでしょ。
役に立たない、かわいくない動物は気にかけない。そういう考え方に、
ぼくらはドップリ浸かっているんです。同じモノサシには乗らない、
違った価値観でなければ評価できないものがたくさんある。
それを突きつけてきてくれるのが、生きものの世界だと思うのね。
違った世界を大事にして、それを理解しようとする姿勢を教えてくれるもの。
それが「生物多様性」だと私は言いたいですね。