ちょっと長い、言友会中部大会に参加した報告です。紀行文かなと思えるくらい色々なことを書いてしまいました。
北海道から福井へ出発すべく新千歳空港へ。11月27日から30日にかけての旅行。最初の躓きは荷物を預ける時。予約をしていなかった…のか。手続きを済ませてさあ、夕食をと空港内のレストランに向かうと聞きなれた🎶ピントンシャンパーン♩「~より関西空港へご出発のお客様にお知らせします。機材到着が遅れるため、ご出発が遅れます」という案内。ああ今回の旅はどういう波乱がまちうけているのやら。30分遅れで出発した飛行機はは少し寂しくなった空港に到着。近くの宿に向かう無料の送迎バスは出た後。JRで日根野に向かいようやく到着。温泉は間に合わない時間。コンビニで遅い夜食を買う。
翌日は何回も泊まっているこの宿で初の朝食。広い窓の外に窓の幅と同じ大きさのプールとそこに岩を伝いながら落ちる水のカーテン。どこから見てもさわやかな眺め。いい雰囲気だなあと思って朝食ブッフェの料理を見たら「ん?このスクランブルエッグは液卵がちゃんと熱せられていない?卵焼きは?かっちんこのゆで卵?」と、実はがっかりしながらもちゃっかり食べてしまうとどです。
日根野から「特急はるか」で新大阪へ。そこから「特急サンダーバード」で敦賀へ向かう。京都駅までは慣れた風景。そこから先は未知の世界になる。初めて琵琶湖を観ることに不思議な感動を覚える。なるほど「うみ」だ。山が間近に迫る湖西線。杉が作り出す山肌の模様は美しい。北海道ならカラマツの風景になるのだが。田んぼの中を走る街道、鉄路、わずかな耕作地と住宅。廃屋もある。そして湖へと私の視線は流れていく。大津を過ぎるころに虹が二度見えた。山の向こうは雨だな。
敦賀に着く頃には車窓から見える景色がすっかり変わっていた。雲が低く垂れこめている。普通列車に乗り換え出発を待っていると、やはり冷たい雨が降り始めた。北陸に冬が近づいてきているのだろう。敦賀からわずか二駅の今庄。宿場町として栄えた町らしい。駅に降り立つと福井言友会の方々の出迎えを受けた。道案内を受けて歩いていけることを確認。まず、明日の帰りの列車を予約。少し不愛想な駅事事務嬢に声をかけると連絡を取りながらの予約になるので2~30分待たなければならないとのこと。それではと、先に会場に向かう。雨粒はそんなに大きくない。降り方も優しい。傘代わりのハンチングに頼って歩き出した。途中の家並はうだつを上げた立派な商家、古民家の窓格子、古瓦の屋根が並んでいる。道は決して真っ直ぐではない。うねってもいる。古い地形に沿った街道だということが分かる。
会場はレトロな昭和館。斜面に立っている建物なので2階が入り口になっている。木造の階段を上がって3階へ。広い会場には既に何人かの見知った顔がある。受付男子から以前にお願いしていた全言連が吃音のある人の就労支援に特化した場合の収益事業についてのリスクマネジメントを含資料を頂く。その緻密さに感謝。挨拶を済ませ、さっそくカフェの準備。吃音のある仲間と話しながらテーブルを出している時に「痛っ!」古いテーブルの木部のヘリがささくれだっていた。棘が親指に刺さるが「ああ。何個か目のアクシデント。どうってことではない。この棘は心に刺さったわけではない。後で抜けばいい。」
街を散策しながら美味しい蕎麦屋を探す。すれ違った吃音仲間が不満をもらす。「蕎麦が少ない。めっちゃ少ないで!」。駅に戻り、まず帰りの切符を確保。特急はるかの指定席、京都から日根野は取れた。しかし敦賀から京都への「サンダーバードは満席です。新快速があります。特急とそう時間は変わりません。」先ほどとはちょっと変わって笑顔で話しかけてくれる。旅先で出会う顔はこうありたい。助言に従ってしゅっぱつ時間を1時間遅らせる。
出迎えの仲間に教えられた蕎麦屋を探して行くが、はっきりしない案内に実は戸惑いながら歩き出す。良い街並みだ。今は寂しいが、江戸時代の繁栄が読み取れる。大きな窓、大きな壁、裏庭にある蔵。途中教えてもらった小道に入り、駅の方向にぐるっと戻る形になる。そこでまた吃音中に出会う。今度はこちらが道案内。お目当ての蕎麦屋は裏通りの目立たないところにあった。おろしそば行脚が始まる。獅子肉の入った暖かい蕎麦。おろしそばを注文10割蕎麦だからと勧められたもの。ここまではお店の方の言う通りに。獅子肉も、キノコも美味しい。おろし蕎麦も美味しい。しかし10割蕎麦の風味が感じられない。若い娘さんに10割蕎麦だけを出してもらえないかと交渉。蕎麦だけは出していないんですと言うが、粘り腰でおろしそばと同じ価格でいいので蕎麦だけをと求める。蕎麦打ちをしている女将さんが私の我儘を受け容れてくれたようだ。蕎麦だけが盛られた皿が運ばれてくる。江戸時代に始まった蕎麦切りのスタイルだろうか。美味しい蕎麦の持つ豊かな香りと穏やかな甘さを堪能。都合3杯の蕎麦というと多そうだが、行きつけの蕎麦屋の2枚分はない。ちょっと待てよ、食後のこの違和感は何だろう。そうか。この汁と10割蕎麦とは合わなかったのか。
昭和館に戻るとさっそくコーヒーを淹れる。忙しく走り回っている実行委員長さんに1杯。お世話になります。
最初のセッションは講演「自信と魅力をupさせるVoiceトレーニング」。え!床に寝るの?ストーブを何台もたいているこの会場は寒い。少し遅れて参加。腹式呼吸。顎を上げない。丹田を動かしての腹式呼吸。合図に合わせた呼吸。声出しのヒント。
二つ目のセッション、マイ・プレゼンまでの間にコーヒーの注文。寒いからだろう。でも追いつかない。しばらく淹れ続けることになる。マイプレゼンは吃音と自分との関係をそのまま語る仲間たちが立つ。真剣に話している顔が美しい。赤いルージュの女性がコーヒーを注文。出来上がると100円ではなく、1,000円を置いて行こうとする。お釣りを探そうとすると「あとは寄付ね」と言って下さる。実行委員長のお母様だと分かる。感謝。
会場移動。今日の宿泊所は「ふるさと交流センター きらめき」。雨足が少し強くなってきていた。遠くから来た吃音仲間の車に乗せていただき無事移動。途中お互いの仕事に関わることで辛い話になる。自分の欠けを認めること、我が子の欠けをみとめること、これは学校現場だけではなく、職場でも、家庭でも全く同じ。社会全体がそういう認識を持ってくれればいいのだが。
着くなりすぐに影の準備。フリータイムも懇親会も、明け方近くまで続いた語らいに付き合ってカフェを続けた。美味しい夕食メニュー。地元の食材、メニューが並ぶ。あれえ?と思うような固い煮豆は「がんご豆」。郷土料理だ。ソースカツ丼はソースにカツをどっぷり浸してご飯にのっけるものらしい。近年出てきて女性に人気の醤油カツ丼用のカツは薄くて軽い味わい。皮のついたままの子芋の煮っ転がしは、初めてなのにすごく懐かしさがするのはどうしてだろう。オードブルも地元のお店の品物。途中から出てきた新鮮なハマチや南蛮エビ、イカ、マアジの刺身も全て地元のご馳走。豊かな海とそれを支えている山林を守る努力が生み出した人の営みの集大成を味わえた。板さんに感謝のコーヒーとチョコレートを差し上げる。「ああ、助かる!」と一言。
カフェの間、何人もの方々がお話に来て下さった。札幌のマンデーナイト吃音カフェのことを聞いてくださる方もいらっしゃるが、ご自分のお話をなさる方も。ご自分の人生のこと、吃音で苦労してきたこと、今地元の言友会でしたいこと、全言連に対する希望、それらは全て生きることにつながる大切なお話。一所懸命に耳を傾ける。何もしゃべらない方も実は雄弁な話し手。音声言語としてはきこえないが、自分で挽いたコーヒーの香りをかぐときの表情、コーヒーを飲むときの表情がホッとしたものに変わる瞬間がある。今まで背負ってきたものをちょっとの間だが下してもいい時間だと直感して下さる。5分か10分程のその時間を共有できる私は幸せです。
二日目の朝食は手作り。昨夜のうちに仕込んである以下と子芋の煮含め、即席の味噌汁、納豆や豆腐、梅肉の生姜合えも地元の食材。炊事をしてくださった三人の方々にお礼のモーングコーヒーを。あ、もう豆が無くなる。100㌘ずつ3種類の豆を持ってきたが全て売り切れました。ありがとうございます。次回はその時にしかない豆の種類と、十分な量を考えていかなくては。
宿泊所は統廃合で使われなくなった小学校を改装して作った施設。そこは山間の田園地帯。狭い土地を一生懸命に耕した田畑が続く。家々には柿の木があり、熟した実がまだまだ残っている。
会場を移動するが、着いたところが宿泊所と川を挟んだところにある「リトリートたくら」素敵な名前だ。ここは心を整える場だと言う。建物に入る前に見た光景は涙がこぼれそうになるほど美しい眺め。人が命を懸けて作ったふるさと。そこに朝日が差し込み、朝もやが消えかかっている。庭を散歩すると動物の糞がある。柿の種を含んだその糞は?管内事務室の女性に尋ねると「ここは猿や猪が庭を歩き回るし、玄関のたたきのところまで来ることもあるんです。狸も来るかもしれませんね」との答え。
今日のセッションは「自分の宝物を分かち合うワークショップ~聴く・聴かれるの体験~」コミュニケーションの語源が「分かち合う」というものだそうだ。うなづける。「今日の自分の体が思いたいなあ、軽いなあと感じる方は、ここを中心に分かれましょう」、「気分が楽だという方と重いと感じる方はここを中心に分かれましょう」とのリード。4象限に私達は別れた。さらに7~8名くらいずつということで6つのグループに分かれた。そこで「持ってきた宝物の紹介とその由来。理由を話す。隣の人がそれに対して感じたことを話す。ぐるっと一回りして、人休み。
再開されたセッションはその宝をみんなの前で語る人が2人手を挙げた。「断」の銀色のバッジの由来、声のトレーニングペーパーの由来。必死に生きてきたお二人のお話を、5人のアクターズがそれぞれの思いに従ってお話を再現する。「トーク&リッスン」がなされた出来上がるプレイバックシアターというのだそうだ。トークに触発された即興劇である。語り手と聞き手謙アクターとの目に見えないやり取りを目に見える形にする作業だった。面白い。最後まで演じ続けるのをプレイバック・ストーリーと言うのだそうだ。
エンディングは感謝の時間。この二日間のために何か月もかけて準備をしてこられた地元の皆様への感謝。地元の皆様が経験したことは、トライしてみて初めて分かる成長のチャンス。力をつけるチャンスだ。沢山の感謝の言葉が舞い降りる一時。全言連の地域推薦理事を紹介する。協力し合いましょうとお約束をする。仲間が一人二人とそれぞれの地元に帰って行く。きっと先週とは違う例会が各言友会で始まるのだと思う。
さあ、お待ちかねの蕎麦打ち体験。3人一組で打ち始める。ああ、少しずつ思い出す。でもここは福井県今庄。山芋入りの二八蕎麦に大根おろしを添えて頂くスタイル。わくわくする。蕎麦には失敗がない。間違ってもOK。打ち立て、茹でたての蕎麦を皆で頂く。二皿分の旨さを頂く。満足。外に出ると朝よりは少し雲が広がっている。「これが冬の北陸の天気です。ここは2メートルも雪が積もるんです」という解説を聞きながら今庄の街並みを散策することに。梅肉生姜合えのお店で試食とお買い物。酒屋で試飲をしてお買い物。残念ながら古民家カフェは早仕舞いで入れなかった。あちこちから来ていらっしゃった仲間が帰って行く。おっと、小腹がすいたところでまだ時間が余っている。じゃあ、もう1度蕎麦を手繰るかという話になる。駅から少し離れた蕎麦店に行く。私は「今庄おろしセット」を頂く。冷たいおろし蕎麦と厚揚げが盆に載って運ばれてくる。絶妙の組み合わせ。仲間の一人は酒と蕎麦がきを注文。一箸ご相伴に預かる。和らかく豊かな香りの蕎麦の風味が生きている。
いよいよ列車の時間が迫る。薄暗くなってきた蕎麦屋の駐車場で残った食材と飲み物の引き取りが始まった。私は夜食用に青豆豆腐を頂く。同じ方向に帰る仲間と一緒に車中の人になる。ずっと話し続けたことはこれからの言友会の事、全言連の事、それぞれの人生の事。今度は北陸本線なので、琵琶湖の東側を通るが既に闇の中に何も見えない。琵琶湖は遠くて明るくても見えないそうだ。と、ライティングされた彦根城が暗い中にぽっかりと浮かんでいる。思わぬご褒美だった。京都で分かれて私は特急はるかに乗り換え。今夜ばかりは贅沢に近江牛の弁当を買う。1,300円。旨い!牛脂の甘さはこうだったかと再認識。
話はまだ続く。宿に着いて確認をすると「お客様は9月の電話予約と、インターネットの予約と二つあるのですが同じ方でしょうか?」と聞かれた。あダブルブッキングならぬダブルリザベーション?!一つをキャンセルしてもらい、ようやく温泉に漬かることが出来た。しかし波乱はまだ終わらない。朝、けたたましい電話の呼び出し音にハッと目が覚める。しまった、5時30分の無料送迎バスに乗り遅れた‼寝ぼけ眼で支度をしてフロントに。列車の時間を教えてもらって関空に。荷物を預ける予約を駅で列車を待つ数分間で済ませる。空港のLCC専用ターミナルはごった返している。何とか乗り込んでホッと一息。さあ、機内食の弁当を注文しよう。ん?「申し訳ありません。確認いたしましたところ、お弁当はありませんでした。申し訳ありませんでした」とほほ笑むキャビンアテンダントさん。ではミネラルウォーターをと気を取り戻して注文。千歳空港には定時到着。この文は、機内、輪厚サービスエリア、高速を降りたところのカフェで書き終えた。今日はまだ終わらない。たぶんハプニングも。さあ、仕事とマンデーナイト吃音カフェが待っている。