Takekida's log

千里の道も一歩から

歌う重力波

2018-01-06 00:37:09 | Books
重力波は歌う――アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち (ハヤカワ文庫 NF)
クリエーター情報なし
早川書房


 去年のノーベル賞の栄冠を勝ち取った重力波観測の成功。アインシュタイン最後の宿題と言われたその存在を観測によって明らかにしたことに対する成果ですがこの本はそのいきさつを一通りまとめたものです。重力波は一般相対性理論上あるはずと予測されたもので質量をもった物体が存在すると、それだけで時空にゆがみができ、その物体が(軸対称ではない)運動をすると、この時空のゆがみが光速で伝わって行くと目されたものです。特にブラックホールなど非常に質量の大きくひずみが生じているところや超新星爆発など宇宙の生成にかかわるところでは必ず生じていると考えられているのでこれを観測することが出来れば今までの電磁気学を活用した観測に対してさらに一歩手段を増やし、根源に対して近づける可能性があるというわけです。観測の原理は理工学部の学生実験なら必ずやるであろうマイケルソン干渉計で、光は重力波によってゆがんだ空間に沿って走る性質があり、それと直交方向で伸縮するという性質を利用するということになります。同じ光を直交するニ方向に向けて発射し、遠くに置いた鏡で反射させ、また戻ってきた光の到達時間を両方で比較するというわけですが光をなるべく長く移動させて精度高く検出させるためにスプリッターで分離された光を何度も往復させ検出器に入るようにしているようです。(地球が丸いため単純には4㎞程度しかまっすぐ進めないそう…)地球上にやってくる重力波は非常に微弱なため(ほかの銀河で発生したことだと地球で観測できるのは水素原子一個が振動するかどうかぐらいの程度とか)これをようやく検出できるようになったというわけです。始めは1.5mの干渉計だったのですが今は4㎞の腕の干渉計に…
今後も精度を上げていくことで宇宙中で発生している場のゆがみを検出できるようになることが期待されます。
 そんな壮大なロマンの物語なのですがそれにまつわるドラマはやっぱ壮大です。この干渉計を作って絶対観測できるとは保証できないことを考えるとまさに人生をかけた戦いだったわけですがただ自分を信じて突き進むという姿勢に勇気づけられます。1000億程度のお金かかっているのですがそれに紆余曲折あれどチャレンジしようと決めた人間の探究心というのはすごいものだとは思います。やはり「人類初の」という響きには何とも言えない魅力があると思わせてくれた本でした。

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