LIFESPAN デビット・A・シンクレア(著)
戦国時代には60歳程度だった平均寿命は伸び続け、日本では女性87歳、男性81歳程度まで到達してきています。ただ病気や運動能力の低下に悩まず本当に健康でいられるのはどこらへんかというと個人差ありそうですが概ね75歳くらいが現時点での境ぐらいなのかもしれません。元気でなかなかいられなくなるのが老化現象のせいなのですがこれがもしガンと同じように病気の一種だとして予防医学の観点から治せるのであればこれまでのような対処療法中心の病気対策からも脱却でき、はるかに健康寿命そして本当の寿命自体も延びてくるはず。この本はそんな老化に立ち向かう研究について直近の研究成果がわかりやすくまとめられた本です。
老化というのはそもそもどういいう要素で起こるのか、筆者は老化の「情報理論」というのを提示しており、クロマチンという構造に格納されているエピゲノム情報の喪失というのが原因となっているということ。このエピゲノム情報はDNAとは異なるアナログ情報でいわばDNAがコンピュータだとすればエピゲノムはソフトのようなもの。細胞にどのような役割をさせるのかの指示を出すものだと思えば良くこのアナログ情報が磁場や重力、宇宙線などのようなもので劣化、読みだせなくなってしてしまうのが細胞の再形成にエラーを起こしてしまう=老化につながるという考え方です。
では老化を遅らせる可能性遺伝子と言えばかの有名な「長寿遺伝子」(サーチュイン:酵母の「Sir2酵素」から命名) で体内を監視して生殖とDNA修復をコントロールしている遺伝子。この期限は生命が生まれて厳しい環境だった時に厳しい環境の際は生殖活動をStopさせてDNA修復を行うように作用するサバイバル回路としてできたのが始まりだとされており、このサーチュインの働きを活性化してやることが老化の対策になるわけです。(さらにサーチュインが働くためにはNADと言われるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが効くことがわかってます)
具体的な活性化法としては
・糖質(食事)制限 …量や回数を減らす、月に数日といった間欠断食もあり
・肉食の制限 …動物性蛋白質に含まれるメチオニンの抑制
・運動 …NADの濃度が高くなりテロメアが長くなる
どんな運動でも効果があるが高強度のインターバルが最も効果あり
などが最も確度が高いところです…がこれはダイエットと同じようにそれなりの意思も必要。また糖尿病の治療薬であるメトホルミンなどの効果があること、NANの濃度を増やすという効果としてNR(ニコチンアミドリボシド)及び前駆体のNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)などが知られており実際にサプリメントとしても高価ですが売られてます。今後、老化が病気だと認められれば保険も使えるのかもしれませんがいつ来るのやら…
ただ老化というのはどっちかというと自然現象としてとらえられているところはあるので倫理的な観点から反対、という人は少なくはないようです。誰もが長くいきたいと思うのは共通だと思いますがそれによって社会がどう変わるかということに関しては準備できていない部分も多々あるのでしょう。ただ今後、先進国を中心に人口は減少方向に向かうので健康寿命さえ延びるのであれば働き手も増えるわけでうまく対応できないことはないのだと思います。自分はむしろ人類に有益な効果がもたらされることに期待したいと思います。
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